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重点政策2022発表について

本日、社民党は「重点政策2022」を発表いたしました。

 

1.戦争反対!憲法を活かす政治を

 

1)ロシアのウクライナ侵攻を許さない!ロシア軍の無条件・即時撤退を求めます。「戦争」ではなく、「外交」こそが唯一の解決策です。

 2021年末頃から緊張が高まっていたロシアとウクライナが、武力衝突という最悪の事態に至りました。ロシア軍は、2022年1月からクリミア沖に黒海艦隊を集結させ、2月中旬にはウクライナ国境近くのベラルーシ南西部で合同軍事演習を実施するなど、軍事圧力を強めた後、同2月24日にウクライナ領への軍事侵攻をはじめました。

 ロシアはこれを「特別軍事作戦」と称し、侵攻直前(2月21日)に国家承認したウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク人民共和国」への「集団的自衛権の行使」と主張していますが、とうてい受け入れることはできません。

 ウクライナ侵攻の背景にはマイダン革命、クリミア併合、NATOの東方拡大、ウクライナ東部の混乱など様々な経緯があり、米国やEUにも重大な責任がありますが、いずれもロシアの軍事侵攻を正当化するものとはなりえません。ロシアはウクライナに対する武力行使を即時に停止し、すべての軍隊を無条件に撤退させるべきです。

 一方、ウクライナ政府は成人男子の出国を制限し、市民に武器を与え、「徹底抗戦」を呼びかけていますが、これにも問題があります。戦闘員と民間人を区別し住民を保護することは、ジュネーブ諸条約等が定める国際人道法の大原則であり、市民を戦場に向かわせることには問題があります。

 戦争で最も傷つくのは、いつも一般の市民です。これ以上の犠牲を生まないため、一日も早い停戦と、ロシア軍の無条件撤退を強く求めます。

 

2)「核シェアリング」断固反対!非核三原則を守ろう!核兵器禁止条約に署名・批准し、被爆国として核なき世界を目指します。

 ウクライナ侵攻に関してプーチン・ロシア大統領は、NATOの介入があれば「(他国にない兵器を)必要に応じて使う」などと述べ、核の使用をほのめかす発言を繰り返しています。これは「核兵器による威嚇または使用は、武力紛争に適用される国際法特に人道法の原則と規則に一般的に反する」と結論した1996年の国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見に反する明確な違法行為です。また、ロシアは参加していないものの、2021年に発効した核兵器禁止条約にも違反します。核による「脅し」を絶対に許してはなりません。

 これに便乗して、日本国内では「核シェアリング」について議論をするべきとの声があがり物議をかもしています。核シェアリングとは、国内に米国の核兵器を配備して運用の一部を担うことで核抑止力を「共有」しようとすることです。岸田文雄首相は、「非核三原則を堅持していく立場からも、原子力基本法をはじめとする国内法を維持する見地からも認めることはできない」と否定していますが、自民党内などでは議論すべきだとの声がくすぶっています。社民党は、ウクライナの事態に悪乗りしたこうした動きを絶対に許すことはできません。核兵器で威嚇するロシアを批判すると同時に、核兵器国に核兵器禁止条約への参加を求め、核兵器の違法化の流れを強めることこそ重要です。

 核兵器廃絶が「国是」であるはずの日本にとって、半核保有になろうとする「核シェアリング」はあり得ません。北東アジア非核兵器地帯創出に全力をあげ、世界中から核兵器を閉め出し、核なき世界を実現するための先頭に立つべきです。 

 

3)武力で平和は作れません!ウクライナ危機に便乗した防衛力大幅増強の動きに反対します。平和憲法の理念を活かし、外交の力で平和を実現します。

 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、国防費を増額する動きが世界に広がっています。ドイツは2022年に連邦軍予算6.5兆円を倍増することを決め、デンマークはGNP比1.4%の国防費を2%に、スウェーデンはGDP比1.3%を2%に増額。ポーランドは現在2%を3%に引き上げ国軍の規模を倍増する方針です。

 こうした動きに便乗する動きが日本でも強まっています。安倍元首相は防衛本予算を現在より11%多い6兆円規模に増やすべきだと主張し、自民党安全保障調査会は5年以内に防衛費を「国内総生産(GDP)比2%以上」に増額するとの「提言」をまとめました。

 憲法に基づく日本の防衛の基本方針は「専守防衛」です。自衛のための「必要最小限度」の防衛力を整え、武力攻撃を受けた時に初めて行使する。その際、自衛隊は「盾」に徹し、「矛」が必要となれば米国の協力を求めるというものです。

 安倍政権は2015年に憲法解釈を強引に変更し、集団的自衛権の一部行使に道を開きましたが、この際も専守防衛に変わりはないとしたはずでした。しかし現実には、護衛艦の空母化や長距離巡航ミサイルの導入など、専守防衛の枠を超える動きが続き、今や「反撃能力」と称する敵基地攻撃能力を保有しようとまでしています。日本を狙うミサイル基地のみならず「指揮統制機能等」の国家中枢まで攻撃できるようにするという自民党「提言」の内容では先制攻撃すら可能となります。

 ウクライナ危機に乗じて、これまでの日本の抑制的な安保政策を一気に転換しようとする試みに強く反対します。

 

4)憲法違反の法律である安保法制(戦争法)、秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法を廃止します。

 

 立憲主義とは憲法を制定(立憲)し、憲法の定めに基づいて統治をする政治のあり方のことで、民主主義の政府のほとんどが採用する当たり前の原則です。第二次安倍政権(2012年〜)頃から、強引な憲法解釈の変更や、露骨な憲法軽視が目立つようになり、「立憲主義」を守れという声が高まっています。

 選挙に勝利して政権を得たとしても、「白紙委任」で何をしてもよいということにはなりません。時々の政府は、憲法の規定に則った法律を作り、憲法が認める範囲で政権の運営を委ねられるのです。権力者が国家権力を私物化することが許されるはずはありません。

 自公政権下で憲法違反を指摘される立法が次々行われました。とくに、長年憲法上許されないとされてきた集団的自衛権の行使を認めた9条違反の「戦争法(安保法制)」(2016年施行)、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理を形骸化させる21条違反の「特定秘密保護法」(2014年施行)、思想・良心の自由(19条)、表現の自由・通信の秘密(21条)を侵害し犯罪着手前の「計画(共謀)」を処罰することで罪刑法定主義(31条)にも反する 「共謀罪」法(2017年施行)、基地周辺などで住民を監視し土地の取引に政府が介入し財産権(29条)、居住・移転の自由(22条)、表現の自由、思想・良心の自由、プライバシー権(13条)などを侵害する「重要土地調査規制法」(22年施行予定)など、悪質な違憲立法が続いています。社民党はとことん反対し、廃止を目指します。

 

5)「オール沖縄」の「建白書」の理念の下、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を強く求めます。沖縄の民意に従い辺野古に新基地はつくらせません。

 

 沖縄県内には現在31カ所(全国には78施設)の米軍専用施設があり、その総面積は1万8,484ヘクタールに及びます。これは沖縄県の総面積の8%にあたります。県民の9割以上が居住する沖縄本島では面積の15%に達し、日常生活にも障害となっています。国土面積の約0.6%しかない沖縄県に全国の米軍専用施設の約70.3%が集中しているというのはどう考えても異様です。

 1995年の少女暴行事件後の県民の怒りに直面して、日米政府は「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)」を設置、96年4月には普天間飛行場の「5年ないし7年以内の全面返還」を表明して事態の収拾をはかりました。しかし、この「返還」は代替施設への移設が前提とされていたため、25年を経たいまも実現していません。「返還」の代償として、辺野古の海を埋立てて新基地を建設して提供するのでは、まったく本末転倒です。そしていまや、「世界一危険な飛行場」普天間に、「世界一危険な航空機」オスプレイが配備され、住民にさらなる不安を与えています。

 普天間飛行場の返還がすすまないなかで、沖縄県では長年の保革の対立を超えて共闘をすすめ「建白書」(13年1月28日)をまとめました。建白書には、沖縄県議会議長、沖縄県市長会会長、沖縄県商工連合会会長、連合沖縄会長、沖縄県婦人団体連合会会長が共同代表として名を連ね、県内の41の自治体の市町村長・議会議長、県議会の各会派の長が署名しており、いわゆる「オール沖縄」勢力の源流ともなっています。

 さらに、沖縄県は復帰50年にあわせ「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書(新建議書)」を決定し、岸田文雄首相に手渡しました。沖縄の基地問題を「構造的、差別的」とし、日本政府に早期解決を求めました。

 日米安保条約を理由に基地の負担を沖縄一県のみに押しつけ続けることは許されません。社民党は「建白書」や(新)「建議書」の理念を支持して、辺野古の新基地建設に反対し、普天間基地の無条件・全面返還を強く求めています。

 

建白書の内容

  1. オスプレイの配備を直ちに撤回すること。及び今年7月までに配備されるとしている12機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること。
  2. 米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。

 

 

6)不平等な日米地位協定を全面改定し、軍事同盟基軸でなく対等・平等な日米平和友好条約へ転換します。「思いやり予算」を見直し、在日米軍基地は整理・縮小し撤去させます。

 日米地位協定とは、在日米軍の施設・区域のあり方や駐留する軍人、軍属の地位、経費の分担などについて定めるものです。米軍の駐留を受け入れている国は米国と地位協定を結んでいますが、日米地位協定は諸外国の協定と比べて、国内法が原則として適用されず、米軍人・軍属の権利も強すぎるなど、日本側に不利な不平等条約となっています。日常的な騒音被害、墜落等の事故など、基地周辺住民のガマンは限界です。また米軍関係者が起こす事件・事故は非常に多く、加害者が罰せられず、被害者が泣き寝入りを強いられることも少なくありません。

 米国と地位協定を結んでるドイツや韓国では、自国民を守る立場からすでに改定を実現しています。日本でも2009年の政権交代の際には、社民党が強く主張し地位協定改定の機運が高まりましたが、実現できませんでした。18年7月と20年11月には、全国知事会が「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で決議するなど、なお地位協定の見直しを求める声が拡がっています。社民党は軍事同盟基軸の日米安保体制ではなく、対等・平等な友好協力関係を定める「平和友好条約」への転換を主張しています。日米地位協定の改定はその大前提です。

 地位協定の範囲を超えて日本側が経費を分担するいわゆる「思いやり予算」や、米国に言われるままに武器を「爆買い」することもやめさせなければなりません。

 

 

7)「台湾有事」を想定した日米の戦争準備に断固反対します。南西諸島、馬毛島の軍事基地化に反対します。

 台湾問題をめぐって中国と米国の対立が続いています 。台湾で軍事紛争が起きて、在日米軍基地から米軍が出撃し、これに自衛隊が軍事的に協力していけば、日本列島が戦場となる可能性が現実のものとなります。なかでも危険なのは、米軍基地が密集している沖縄県です。国境近くの与那国島と台湾は100キロ強しか離れていません。台湾有事となれば沖縄の米軍基地が最前線の出撃拠点となることは明らかです。

 この間、政府は、尖閣問題等で危機感を煽りながら、南西諸島の自衛隊増強をすすめてきました。かつて、ソ連侵攻に備える「北方の守り」が重視されていた自衛隊の配備は、対中国を見据えた「南西諸島防衛」に変わり、鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古島・石垣島の3島にミサイル部隊が配備されました。鹿児島県・馬毛島には米空母艦載機のFCLP(陸上離着陸訓練)移設が強行されようとしています。有事の際には沖縄・南西諸島が戦場になるおそれが現実のものとなっています。

 「対米従属」が極まった日本の政治は、日本を戦争に引きずり込む「日米安保」の危険性に正面から向き合うことはありません。社民党は、いま迫る「戦争」に反対の声を上げ続けます。

 

8)平和はすべての基本です。憲法をくらしに活かす政治を実現します。

 日本国憲法は、第二次世界大戦の悲惨な体験のなかで生まれました。軍国主義と戦争への深い反省から、徹底した平和主義を貫き、「戦争をしない」ことに加え、「戦力を持たない」ことを定めています。平和主義の規定である第9条2項(戦力の不保持と交戦権の否認)が注目されますが、「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」の三原則全体を位置づけている「前文」、多様な人権保障を規定した11条、13条、24条、97条、第3章、権力分立を定めた41条、65条、76条、「法の支配」を貫徹するための98条、81条など、多くの条項が相まって「世界でも先進的」といわれる憲法体系を形成しています。

 憲法は、自らを改正するための規定(96条)を定めていますから、「不磨の大典」というわけではありません。しかし国家権力を担う側、ましてや首相や与党政治家が改憲の旗振りをすることは許されません。憲法は主権者である国民が、為政者に権力を預ける際のルールであり約束、「権力制限規範」です。制約されている側が、もっと自由に権力を行使したいというのが改憲論の本質です。

 いま憲法を変える必要はありません。社会に様々な行き詰まりが目立つのは、憲法が原因ではなく、憲法の理念を活用しようとしない政府の責任です。変えるべきは「憲法」ではなく「政権」。社民党は、憲法理念を暮らしや政治に活かして、国民の生活を再建することに全力をあげます。

 

2.新型コロナ感染症災害からの生活再建
9)新型コロナ感染症災害で疲弊した生活を再建するため、消費税を3年間ゼロにします。大企業がため込んだ内部留保へ3年間課税し、生活危機対策の財源とします。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、多くの人々が苦しい生活に追い込まれています。失業者は179万人に及び、完全失業率(22年3月)は2.6%と高止まりしています。緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が繰り返されるなかで、コロナ禍による解雇・雇い止めは累計13万人を超え(22年3月時点)、事業主都合の離職が止まりません。そのなかでも大きな影響を受けているのはパート・アルバイトなど非正規で働く人、とくに女性たちです。弱者である非正規労働者にしわ寄せされているのです。

 こうした人たちを支える政府の対応は決定的に立ち遅れています。社民党はコロナ禍からの生活再建のため、消費税の3年間ゼロ税率を提案します。消費税の減税は、幅広く消費者に恩恵を行き渡らせることができます。課税の再開にあたっては、本来の役割であった社会保障財源として検証を行い、税制全体の改革をすすめます。

 なお、消費税3年間ゼロ税率の財源として、企業の内部留保(利益剰余金)に臨時に課税します。コロナ禍で厳しい状況にある企業もありますが、いわゆる「巣ごもり需要」、「テレワーク需要」などで莫大な利益を上げている企業もあります。コロナ禍でも増え続ける内部留保に課税することで、困窮する生活と社会の底上げをはかります。

 

10)賃金が上がらないのに物価が上がる!年金額はダウン、保険料はアップ!企業の内部留保を放出させ、すべての労働者の賃上げにつなぎます。保険料の減免制度、手当の拡充で、逼迫する国民の生活を守ります。

 OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で日本だけが実質賃金が下がっています。各国は「コロナ禍だからこそ賃上げで内需拡大を図る」方針です。ところが、日本の実質賃金は1997年からマイナスが続き2021年は最低になりました。いまこそ、実質賃金を大胆に上げなければなりません。企業の内部留保を放出させ、正規労働者のみならず、非正規、フリーランスなど全ての労働者の賃上げにつなげます。

 一方、石油の値上がりなどによる世界的なインフレは、日本経済にも大きな打撃を与えています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻により、原材料、輸送費、光熱費など、生産にかかわるすべての経費が世界的に高騰しています。日本の企業や商店も価格に上乗せせざるを得ず、この状況は今後も続くと予測されています。

 こうしたスタグフレーション(賃金が上がらないのに物価が上がる)の進行は、低所得者層にとって死活問題です。賃金下落に連動して年金支給額は2年連続でダウン、にもかかわらず国民健康保険料も介護保険料もアップ、高齢単身者、ひとり親家庭などから悲鳴をあげています。消費税など不公平税制の是正、保険料の減免制度の強化、福祉や手当額などの拡充で国民生活を守ります。

 

11)不公平税制の是正のため、所得税累進課税を機能させ、法人税や金融課税を見直し、大企業・富裕層には応分の負担を求める税制改革を行います。低所得者層ほど負担の大きい社会保険料負担を見直します。

 規制を緩和し大企業や富裕層を優遇し経済活動を活発化させることを重視するトリクルダウンの経済政策(アベノミクス)は失敗しました。富める者が富めば、その富がしたたり落ち(トリクルダウン)て貧しい者にも行き渡り、国民全体の利益になるという政策でしたが、現実には企業が利益を貯め込み富める者と貧しい者の格差が拡がっただけでした。社民党は賃金アップや社会保障の拡充による「ボトムアップの経済政策」を提案します。

 税金には主に①公的サービスの財源を調達する、②所得や資産を再分配する、③景気変動を小さくして経済を安定化させる、などの機能がありますが、この間の新自由主義注)的な政策のなかでその役割が弱まっています。所得課税の累進(所得が多いほど税率が高くなる)性は弱まり、法人税率は下がり続けています。社会保障財源とされた消費税の増税分の多くは企業減税や富裕層の減税の穴埋めに使われ、本来の役割を果たしておりません。必要な公共サービスや福祉をしっかりと提供し、その財源を負担する力のある大企業や富裕層の税に求めるのが、社民主義の経済政策の基本です。

 2023年10月より適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入が予定されていますが、中小・個人事業者から免税事業者が取引から排除されかねない、コスト負担が過大であるなどの声があがっています。現在、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている中で導入を進めることは問題があります。導入時期の延期と制度の改善を検討します。

 

注)新自由主義(ネオリベラリズム): 国家による福祉・公共サービスの縮小(小さな政府、民営化)と、大幅な規制緩和、市場原理を重視する考え方。自由主義や社民主義と対立する。

 

12)今こそ公的責任を強化する時です。自粛、時短営業、休業の要請は補償とセットで行います。住居喪失者のため空き家活用対策など緊急の公的支援を実施します。生活困窮者に緊急に特別給付金10万円を支給します。

 緊急事態宣言、まん延防止等重点措置によって、飲食店等に休業、時短営業等の自粛を要請する場合には、損失に対する国の補償をセットで行います。正規労働者、非正規、自営業者、フリーランスも等しく損失補償を行います。

 緊急小口資金(休業者向け)、総合支援資金(失業者向け)の特例貸付を拡充するとともに、長引くコロナ災害によって返還が困難な方が多重債務に陥らないよう償還免除の条件を緩和します。現在、返済を必要としない生活困窮者自立支援金がありますが、これは特例貸付の利用が前提です。そもそも返済の目途が立たない等の理由で特例貸付を利用できない世帯が多数です。そうした生活困窮者に緊急に特別給付金10万円を支給します。低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金を速やかに支給します。

 離職等により住居を失いかねない方に対する住居確保給付金の支給期間を撤廃して普遍的な家賃補助制度へ改正します。民間のアパート空き室を借り上げ、現物給付を行うなど、住まいの公的支援を実施します。

 

13)生活保護申請を抑制する「水際作戦」や扶養照会をやめさせ、必要な人が当然の権利として利用しやすい制度に変えます。

 社会の底が抜けたかのように生活困窮者が増えています。最後のセーフティネットである生活保護制度を権利として活用できるよう行政に徹底します。各市町村の福祉事務所窓口で生活保護申請者を追い払ったり、申請書を提出させないよう誘導する“水際作戦”を止めさせます。“水際作戦”をなくすために、生活保護制度のオンライン申請の導入を検討しすすめます。

 また、自治体が申請者の扶養義務者(民法上)に対して扶養できるかどうかを問う照会が、生活保護申請をためらわせる一番大きなハードルです。扶養照会を避け、申請を躊躇し栄養失調や病気、自殺に至るケースも少なくありません。生活保護法上、扶養は生活保護の要件ではないことを行政に徹底し、親族へ連絡されたくないという申請者の意向を尊重します。申請者の同意がなければ扶養照会をしてはならないという通知を各自治体に出すよう厚生労働省へ働きかけます。また、この間引き下げられてきた生活扶助費を引き上げます。

 

 

14)医療崩壊を食い止めるため、医療機関や介護・医療従事者を支援します。病床削減、公立・公的病院の統廃合に反対し、地域医療を守ります。

 政府の長年にわたる医療費抑制政策に加え、新型コロナウイルス感染症のまん延により、医療現場が危機的な状況にあります。受診・入院ができない感染者が自宅や施設で亡くなる件数が増え、医師、看護師などの過密過重労働は限界を超えています。一般診療にも影響は及び、医療崩壊が各地で起きています。

 病床が足りないと悲鳴が上がっているなか、政府は2021年の通常国会で、病床削減を加速化するための国の補助金事業(財源は消費税)を法定化する医療法等の改定を成立させました。その対象とされているのは、2019年に再検証対象医療機関としてリストで名指しされた公立・公的病院(当初424カ所/現在436カ所)です。病床確保が課題の新型コロナ対策と矛盾する補助金事業の改定と対象436医療機関のリストの撤回を求めます。公立・公的病院の統廃合に反対し地域医療を守ります。

 今後も新たな感染症が予想されます。これまで削減してきた保健所、保健師の数を増やし、公衆衛生の強化に取り組みます。医療崩壊をくい止めるために、国の負担を増やして、医療費総枠を拡大します。

 

 

3.格差・貧困の解消
15)非正規雇用に歯止めをかけ、正規雇用への転換をすすめます。派遣労働は一時的、臨時的な業務に制限します。公務サービスの安定、資質の向上をはかります。

 雇用の原則は、期間の定めのない直接雇用であることを基本とします。非正規労働の拡大に歯止めをかけ、正規労働への転換を進め、雇用の安定を実現します。労働者派遣法を抜本改正し、派遣労働は一時的・臨時的な業務に厳しく制限します。労働契約法の無期転換ルールがを徹底し、有期雇用を無期雇用に転換させます。非正規雇用者の待遇格差を改善するために、内部留保への課税等を活用した公的な退職金制度を設けます。

 フリーランスの権利保護、セーフティネットの整備に取り組みます。インターネットを介して仕事の受発信を行うクラウドワークスなど新たな就業形態について、就労実態、保護の必要性などを調査し、就労者を保護する制度をつくります。 

 公務労働の非正規化に歯止めをかけます。行政の相談の窓口を担っているのは、多くが非正規公務員です。自らも雇用の不安を抱え、仕事で得た経験や知識の蓄積して活かすことができないのが実情です。雇用の安定は、公務サービスの担い手の確保、資質の向上にもつながります。単年度雇用を厳格化するなど問題の多い会計年度任用制度は抜本的に見直します。

 

 

16)最低賃金を全国一律1500円/時に引き上げます。同一価値労働同一賃金を実現し、どこに住んでいても、いかなる雇用形態にあっても健康で文化的な最低限度の生活を営める労働を保障します。

 2021年、全国各地の最低賃金を一律で時給を28円引き上げられました。2002年度以降では最大の引き上げ幅で、全都道府県の最低賃金がようやく時給800円を超えました。

 大都市一極集中を見直し、地域経済を活性化するために最低賃金制を現在の地域別から全国一律に転換すべきです。時給1,000円を実現し、さらに安定した生活を確保できるよう時給1,500円をめざします。あわせて中小零細企業に対して社会保険料負担を軽減するなど支援策を検討します。

 ILOが示す同一価値労働・同一賃金原則(ILO第100号条約/1967年に日本批准)に沿った職務評価(知識・技能、責任、負担度、労働環境)の手法で、日本でも同一価値労働・同一賃金の原則の研究開発を行い、その徹底と法制化に取り組みます。 “残業代ゼロ”の裁量労働制の適用拡大を許しません。解雇規制の緩和など労働者保護ルールの改悪を阻止します。

 

17)高等教育までの教育費の無償化を進め、国籍を問わずすべての子どもたちの学ぶ権利を等しく保障します。貸与型奨学金の返済を一部免除し、今後の奨学金は原則給付型にします。

 OECD(経済協力開発機構)の試算によると、日本のGDP(国内総生鮮)に占める教育支出の割合は2.9%に過ぎません。OECD平均の4.1%を下回り、比較可能な38カ国のうち下から2番目という低い水準です。物的資源の少ない日本にとって「人材こそ資源」です。教育にかける予算は無理をしてでも捻出するべきであり、GDP5%水準程度まで拡充をはかる必要があります。

 いまや学生の約半数が奨学金を受給し、多くの人がその返済に苦しんでいます。日本学生支援機構の奨学金は、第二種奨学金(有利子)は例外的な制度として縮小し、第一種(無利子)を中心にすえます。2017年に創設された給付型奨学金は規模を拡大し、新所得連動型奨学金返還制度は対象を拡大したうえで一定期間の返済後は残債を免除する制度を導入します。 「社会人の学び直し」、「リカレント教育」の制度拡充もすすめます。

 また、高校の授業料無償化制度から朝鮮学校のみを外す差別的な取り扱いをやめ、地域での共生をすすめます。

 教育の機会均等は教育を受ける個人だけの問題ではなく、社会全体の利益につながるものです。日本は2012年に遅ればせながら国際人権規約(社会権)13条2項Cを批准し、「高等教育無償化の努力義務」を国際公約としました。高等教育予算を確保し、少なくとも今以上の学費の高騰を防ぎ、段階的にでも無償化をめざす必要があります。

 

 

18)高齢者のいのちを脅かす75歳以上の医療費窓口負担の引き上げを中止させます。後期高齢者医療制度を抜本的に見直します。

 2022年10月から政府は、75歳以上を対象に病院などの窓口で支払う医療費の負担を1割から2割に引き上げる予定です。単身者では年収200万円以上(年金含む)、夫婦世帯では合計年収320万円以上の約370万人(75歳以上の高齢者は1,815万人)が対象者となります。負担が2倍に増えれば受診を控える高齢者が増え、早期発見早期治療が遅れ重症化するおそれがあります。

 政府は「世代間の公平性を図る」「現役世代の負担軽減」が目的だと言いますが、主眼は公費と事業主負担の軽減です。現役世代と高齢者の対立をあおり、高齢者を”お荷物扱い”して、社会保障費全体の縮小を目論む改悪を許してはなりません。医療費負担を1割に止め、高齢者の健康を守ります。また、後期高齢者医療制度を抜本的に見直します。

 

 

4.地球環境と人間の共生
19)脱原発をすすめます。「原発ゼロ基本法案」を成立させ、原発・原子力関連施設の廃止に向けた具体的なロードマップを作成します。老朽原発の再稼働は許しません。

 2011年の3・11福島第一原発事故によって、原発の「安全神話」は完全に崩壊しました。「絶対に安全」とされてきた原発は1度の地震と津波で一気に破壊され、震災から11年を経てなお1市4町2村にわたる337平方キロメートルの「帰還困難区域」が残ります(2022年3月現在)。「フクイチ」事故を受け、ドイツ、イタリア、デンマーク、オーストリア、スイスなどが脱原発を決めましたが、当事国である日本はいぜん原発に固執し続けています。

 2021年6月には運転40年超の老朽原発である関西電力美浜3号が再稼働されました。(ただし同年10月に運転停止)。政府・電力会社は原子炉の寿命とされ法律上の上限でもある40年を超え、老朽化した原子炉を次々稼働させようとしています。日本列島は世界有数の地震多発地帯にあり、逃げ場のない島国です。10万年後まで管理しなくてはならない放射性廃棄物(核のゴミ)の捨て場もありません。危険な老朽原発を稼働させるなどとんでもない! 直ちに脱原発を決断するべきです。

 また、放射性廃棄物を再処理して高速増殖炉で再び燃やす「核燃料サイクル」計画は、事実上破綻しています。高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉に続き、六ヶ所村再処理工場も直ちに廃止すべきです。

 社民党など野党4党は2018年3月に「原発ゼロ基本法案(原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案)」を国会に提出しましたが、審議に至らないまま継続審査となっています。社民党は同法を早期に成立させ、原発・原子力関連施設の廃止に向けた具体的なロードマップを作成します。

 

原発ゼロ基本法案の概要

  1. すべての原発を速やかに停止し、法施行後5年以内に廃炉を決定。
  2. 再稼働、新増設・リプレースは認めない。
  3. 使用済み核燃料再処理・核燃料サイクル事業を中止。
  4. 省エネルギー・再エネルギー利用をすすめる。
  5. 原発周辺の雇用・経済対策を国が支援。

 

20)福島第一原子力発電所の汚染水は陸上で長期保管し、海洋放出には絶対反対です。被災者・避難者への十分な生活保障と被曝管理を行い、住民の健康を守ります。

 政府は2021年4月、福島第一原発事故で発生し敷地内で貯蔵されている放射能汚染処理水を海洋へ放出する方針を決定しました。23年春頃から強行される可能性があります。地域住民の生業(なりわい)に大きな影響を与えるこの決定を、私たちは絶対に認めることは出来ません。

 政府や東京電力の隠蔽体質は相変わらずで、まるで問題の風化を望んでいるかのようです。パブリックコメントの受付や、公聴会の開催も何度となく延期を繰り返すなど、地域住民の気持ちに向き合う姿勢はまったく見られません。専門家からは、汚染水の処理・保管のあり方について様々な代替案も示されていますが、これらを十分に検討することもないまま、結論ありきの強引な決定を行なったのです。

 汚染水に含まれるトリチウムの安全性が強調されますが、トリチウム以外にも炭素14、ヨウ素129、ストロンチウム90など多くの核種が含まれることも明らかになっています。どんなに薄めたとしても放射能の総量は変わらず、海を汚すことに変わりません。トリチウム以外の有害物質の総量も不明で、それらを処理して基準以下に取り除くことができるのかも不明です。除染処理作業に従事する原発労働者に対して、多重下請け構造による過酷な待遇が強いられています。汚染水を意図的に海洋に放出することは、海を接してつながっている国際社会からも批判の声があがっています。

 福島県内の59市町村のうち41市町村議会が、海洋放出に反対・慎重の意見書を決議し、反対の署名には45万筆を超える賛同が集まっています(いずれも21年4月時点)。子どもたちの未来に取り返しのつかない被害と影響を与えかねない、放射能汚染水の海洋への放出に、社民党は断固反対です。

 

21)「グラスゴー気候合意」の実現に向け、2050年までに自然エネルギーへの完全転換や温室効果ガス排出ゼロを達成します。そのために、「グリーンリカバリー」で地球環境と両立する産業の育成や雇用の創出を推進します。

 「パリ協定」(2016年11月発効)は、2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みです。世界の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えることを目標として、今世紀後半に世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「脱炭素化」を目指しています。

 2021年11月には英・グラスゴーで約130ヵ国の首脳や政府代表が参加して第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開催され、紆余曲折を経ながらも平均気温上昇1.5度未満に抑えるための削減強化を各国に求める「グラスゴー気候合意」が採択されています。パリ協定のルールブック(実施指針)も合意されました。

 2021年4月に菅義偉首相(当時)は日本の温室効果ガス排出削減目標を「2030年までに26%削減(2013年比)」から46%へと引き上げることを表明しましたが、グラスゴー合意の実現には、なお十分とはいえません。今後、世界の炭素排出の規制は強化されることはあっても、緩められることはありません。日本も覚悟を固めて脱炭素化をすすめる必要があります。

 日本の温暖化対策議論を複雑にしてきたのは、政府が温暖化対策と原子力推進を絡めてきたためです。確かに原子力は発電時の二酸化炭素排出は少ないのですが、「原料採掘から廃棄物処分」までのプロセス全体を考えると「温暖化対策の切り札」とはなりません。事故を起こせば地球規模の環境破壊をもたらし、事故を逃れても10万年後の未来まで放射能の危険を残します。仮に、炭素の排出を減らせたとして放射能が環境を破壊してしまえば本末転倒です。温暖化と脱炭素はセットですすめなくてはなりません。

 温暖化対策は何より、省エネルギーと再生可能エネルギーの促進で実現するべきです。新型コロナウイルスの流行で冷え切った世界経済を、脱炭素社会や生態系を守る投資を通じて立て直そうという「グリーンリカバリー(緑の復興)」の考え方を取り入れます。

 

社民党の数値目標

温室効果ガス削減(2013年比)
 2030年 60%減 2050年 100%減

最終エネルギー消費削減(2013年比)
 2030年 40%減 2050年 70%減

電源構成
原子力
 2030年 ゼロ(原発ゼロ基本法施行5年以内に廃炉)
石炭火力
 2030年 ゼロ
LNG火力
 2030年 50%→2050年 ゼロ
再生エネルギー
 2030年 50%→2050年 100%

 

22)新自由主義的な農政から転換し、食料自給率50%を達成します。農家の戸別所得補償制度を復活させ、小規模農林漁業を守ります。種子法の復活や種子条例の制定を推進します。

 過疎化・高齢化の進行や担い手不足、耕作放棄地の拡大など農林水産業を取り巻く現状は厳しさを増しています。これに対して政府は、TPP(環太平洋連携協定)など際限のない自由貿易体制への参加、利潤・効率最優先の「農業競争力強化プログラム」など新自由主義的な「攻めの農政」で対応しようとしています。水産業も林業も企業化し大手に参入させ、大規模化、生産性向上を追求しようとするだけで、持続可能な形で農業や農村を維持しようという発想がないのです。規模拡大と効率向上を求め、小規模な農家をどんどん淘汰していった先に、日本農業の未来はありません。

 米や麦、大豆など主要農産物について優良な種子の生産・普及を各都道府県に義務づけた「主要農産物種子法」の廃止で、遺伝子組み換え(GM)品種の流入や海外の種苗大手による種の支配、種子の価格つり上げが懸念されています。「種子法」の復活を目指します。また都道府県段階における種子の生産計画策定と予算措置、原種・原原種の備蓄体制などを定めた「主要農産物種子条例」の制定を推進します。

 国連が2019年から28年までを「家族農業の10年」に定めるなど、小規模・家族農業の価値を再評価する動きは国際的な潮流ともなっています。社民党は戸別所得補償制度を復活・拡充して規模の大小を問わず農業経営をしっかり下支えして早期の「食糧自給率50%以上」を目指すとともに、農林水産業の再生と担い手の育成、農山漁村の発展に全力をあげます。

 

 

23)想定を超える自然災害が毎年のように発生し、気候危機事態です。温暖化対策と並行して、防災・減災に向けたインフラの整備を進めます。

 異常気象が続き、大規模な災害も相次いでいます。巨大地震や、津波、風水害などに備え、住民の命と財産を守ることは政治の重要な役割です。風水害の激甚化は、地球規模での気候変動が影響している可能性もあります。防災・減災対策の抜本的な強化が必要です。大規模開発、新規事業優先ですすめられてきた、公共事業のあり方も根本から見直し、老朽化したインフラの確実な更新や、安心・安全の防災・減災対策を基本にすえた取り組みに予算を重点的に配分するべきです。

 国際競争力強化などを名目にした産業インフラ投資、大都市道路、リニア新幹線建設や整備新幹線延伸などの大規模開発事業には莫大な財政が投入される一方で、防災・減災対策の公共事業は立ち遅れています。「国土強靭化」を掲げ、「国際競争力強化」、「国家機能の代替性」などが強調されますが、国民一人一人の生命と財産を守ることは、もっぱら「地域住民の力を向上させる」ことに委ねられています。

 道路、橋、トンネルや、学校、公営住宅などの公共施設など日本のインフラ基盤は老朽化が進行しています。防災対策という面からも優先的な資源配分が必要です。国は、自治体の防災・減災・老朽化対策への国の支援を強化するべきです。

 また、警戒体制や住民への情報の提供体制、消防や自治体など地域の防災力を強化し、住民の命を守る医療や福祉の体制を日常から整えることも必要です。「国土」だけではなく、災害に強い国、災害から命と財産を守る社会にしていく必要があります。社民党は、自衛隊の一部を災害出動を「主たる任務」に位置づけた、「災害救助隊」に改編することを提案しています。

 

5.ジェンダー平等・多様性社会の実現
24)コロナ危機であわらになった問題を、女性の政治参画とジェンダー平等の視点で解決します。社会保障制度、税制を世帯単位から個人単位に改めます。

 女性の自殺者数が高水準で推移しています。背景には、不安定な労働、経済的な困窮、子育て・介護の孤立化、性暴力被害などの問題あります。コロナ危機の対策にジェンダー平等の視点が不可欠です。「特別定額給付金」(2020年に全国民一律10万円支給)が世帯単位で給付されたことにより、DV被害者の女性や子どもが直接受け取れないという問題が生じました。また、男性(夫)が主たる稼ぎ手、女性(妻)は補助的な労働力という位置付けにコロナ危機があいまって、シングルマザーなど女性世帯の生活を脅かしています。税制、社会保障制度を、女性に不利な世帯単位から、個人単位に改め、性に中立な制度にします。

 クォータ(割り当て)制度の導入などアフォーマティブ・アクション(積極的な差別是正措置)を推進し、あらゆる意思決定の機関における女性の比率を50%を目標に引き上げます。特に女性の政治参画は急務です。積極的に女性議員を増やし、男性主導の政治をジェンダー平等の政治に変え持続可能な社会をつくります。

 

 

25)男女の経済格差の是正、雇用における男女平等に取り組みます。仕事と家族的責任が両立できるよう雇用制度を見直します。

 コロナ危機によって、「女性不況」ともいうべき状況が深刻化しています。労働時間の短縮、休業、解雇、雇い止めなどの雇用調整は、女性が7割を占める非正規労働者を直撃しています。特に、子育て中の女性の雇用状況の悪化は顕著です。失業後の再就職率は男性に比べ女性は低い水準で、先の見えない状況です。

 テレワークなど在宅勤務が「ワークライフバランス」の切り札とされていますが、家庭内の家事・育児と仕事の二重の負担に悩むのは圧倒的に女性です。

 男女の賃金格差の是正に尽力し、雇用の場の男女平等を推進します。企業に男女別平均賃金の公表や格差是正計画の策定、公表を義務付け、国が指導・監督を行うようにします。

 女性労働者の割合の高い介護・福祉・保育などケア労働の賃金を引き上げるとともに職員の配置基準を上げ、安定して働き続けられる環境を整えます。

 家族的責任のある労働者は、男女を問わず、単身赴任や長時間通勤をともなう転勤を原則禁止します。育児介護休業制度や看護休暇を拡充します。

 職場でのセクシュアルハラスメント(性的いやがらせ)を禁止規定にする法整備を行います。女性に対して、お茶くみや職場での靴や制服を課す慣行を止めさせます。

 

 

 

 

26)女性への暴力を根絶します。性暴力被害者を救援するワンストップの相談窓口を拡充します。

 コロナ禍による閉塞感、外出制限などで、DV(家庭内暴力)や性暴力被害が増加しています。行政、民間の性暴力被害者への相談や支援を強化します。特に医療機関をベースに24時間体制のワンストップ支援センターの設置(各都道府県に1か所以上)や、被害者を保護する「民間シェルター」を拡充します。

 「性暴力被害者支援法」(超党派の議員で提出)の成立と「性暴力禁止法」の早期制定をめざします。

 刑法の性犯罪規定について、被害対象を狭める「暴行脅迫要件」の撤廃、不同意性交等罪の新設、性行同意年齢16歳への引き上げ等を実現します。

 性的な写真の拡散など、オンライン上の性暴力被害をなくすために、通報、削除の仕組みを強化します。若い女性を狙い巧妙な手口でアダルトビデオ(AV)の出演契約を強制することを人権保護の観点から制限します。

 貧困、性暴力被害など、困難な問題を抱える女性を支援する法律案が、本国会に出されています。財源を確保し、行政と民間の支援団体の連携を深め実効性を高めます。売春防止法の抜本的な見直しに取り組み、買売春をなくします。

 

 

27)出産、避妊、妊娠中絶を保険適用します。生理の貧困問題に取り組みます。包括的性教育を推進します。

 リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖における健康と権利)は、子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを本人が決定する基本的な人権です。

 不妊治療のみならず、出産、避妊、妊娠中絶の保険適用、無償化に取り組みます。処方箋がなくても緊急避妊薬を薬局販売できるようにします。WHOが安全性を確認し推奨する妊娠中絶薬の早期に薬事承認し、国際的な標準による使用法と価格設定を求めます。

 刑法の堕胎罪、母体保護法の配偶者同意を撤廃し、女性の人権の観点から性とからだに関する法律をつくります。

 旧優生保護法下で強制された不妊手術や妊娠中絶について、国に対して調査・検証、被害者への謝罪・補償を求めます。

 学校や公共施設等における生理用品の無償配布、生理用品の消費税免除など「生理の貧困」に取り組みます。

 平等・人権の視点を入れた包括的な性教育の推進が不可欠です。幼児、子ども、若者をエンパワーメント(力づける)性教育を実施します。若者が性やからだについて気軽に相談や支援を受けられるユースクリニックの創設に取り組みます。

 

28)「障害者差別解消法」「部落差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」の差別解消三法をベースに、実効性のある包括的差別禁止法をつくり、共生の社会づくりをすすめます。

 異なる立場にある人を軽んじ貶めるハラスメントやヘイトスピーチ(憎悪表現)が横行しています。人間関係が希薄し人と人のつながりやコミュニティの重要性が叫ばれるなか、性別や国籍、民族など、あらゆる差異を問わず誰もが等しく権利を保障され、人間らしく暮らせる社会づくりが求められています。

 2016年には「障害者差別解消法」(16年4月)や「ヘイトスピーチ解消法」(16年6月施行)、「部落差別解消法」(16年12月施行)の三法が施行され、障害を理由にした差別、ヘイトスピーチ、部落差別が禁止されるなど、大きな前進がありました。2019年には「アイヌ施策推進法」も施行されました。しかし、いずれも啓発や教育を中心とする理念法にとどまっており、限界があると指摘されています。他にも性的マイノリティや移住者など様々な差別についての立法活動も続いていますが、差別を廃絶するための実効性をどのように確保するかが課題です。

 社民党は、政府から独立した実効性のある人権救済機関を設ける包括的な差別禁止法の制定を提案してきました。いかなる差別も許さない共生の社会づくりのため、社民党は全力で取り組む決意です。

 

 

29)選択的夫婦別姓を実現します。LGBT差別解消法を成立させます。同性婚を法制化し、日本国内にいるすべての人々に結婚の自由を等しく保障します。

 長年、生活や仕事で使ってきた姓を結婚により、どちらか一方が変更を強制されることは人格権の侵害です。今年3月、内閣府・法務省は「家族の法制に関する世論調査」の結果を公表しました。従来の質問を変更したため、選択的夫婦別姓への賛成が減少し、関係大臣からも批判が出ています。政府の恣意的な世論の誘導に抗議します。民法を改正し選択的夫婦別姓制度を早期に実現します。

 EU加盟国や米国の多くの州、カナダなどでは、すでに性的少数者への差別禁止法が制定されています。日本は差別を禁止するよう国連から勧告を受けています。早期に「LGBT差別解消法案」を成立させます。

 同性カップルを自治体が証明したり、宣誓を受け付ける「パートナーシップ制度」が広がっています。さらに進め、同性婚を法制化し、婚姻の自由を等しく保障します。また、フランスの民事連帯契約(PACS/パックス)を参考に、同性・異性を問わず、共同生活を営むカップルを対象とする非婚カップルの保護制度をつくります。多様な家族が共存する社会をめざします。

 

 

30)「子どもの権利条約」にもとづく基本法をつくり、子どもの最善の利益を優先して動くようにします。子どもコミッショナー制度をつくります。

 「子どもの権利条約」の基本原則(差別の禁止/生きる、育つ、発達する権利/子どもの最善の利益の確保/子どもの意見の尊重)をめざす基本法を制定します。条約の理念をあらゆる政策に反映させます。

 日本の子どもの7人に1人が「貧困」状態です。子どもの貧困率を下げるために数値目標を設定し、各省庁を横断する取り組みを行います。欧州諸国に比べて格段と低い子ども・家庭に関する予算を引き上げます。

 保育所・学童保育所の最低基準(人員配置、面積など)を引き上げ、保育の質を改善します。営利を優先する民営保育所の数が増えるなかで、子どもの事故や死亡、性的被害などが多発しています。公立保育所の役割を重視し、保育の民営化に歯止めをかけます。

 いじめ、虐待、自殺など重大な子どもの権利侵害について、政府から独立した立場で監視し、調査、原因究明を行い、防止、根絶のための勧告を行うことができる子どもコミッショナー制度を創設します。全国の自治体においても、子どものための相談・救済機関を拡充し子どものSOSに迅速に取り組みます。

 

 

31)移民・難民の排除ではなく、共生社会の日本を創ります。定住外国人に地方参政権を実現させます。

 日本で暮らす技能実習生に対する人権侵害が横行しています。技能実習制度は技能を通した国際貢献が建前ですが、現実には劣悪な環境で安い労働力を確保する手段となっており、賃金不払いや雇用主による暴行などが絶えません。2019年度から人手不足が深刻な産業分野で外国人労働者として受け入れる在留資格「特定技能」が設けられました。しかし矛盾は解決するどころか、さらにコロナ危機と相まって混乱が増しています。抜本的な解決を図るために外国人受け入れの土台となる「在留外国人基本法」の制定に取り組みます。日本で暮らす外国人の権利や義務、日本語教育、生活支援を行うことなどを明記します。

 入管収容施設の人権侵害を防止します。非常に低い難民認定率の問題などに取り組み、移民・難民の排除ではなく、共生社会の日本をつくります。

 長年日本に住み納税などの義務を果たしながら地域の課題について定住外国人が関与できないのは不合理です。定住外国人の地方参政権を実現します。

 

 

32)過疎化や合理化によって無人駅や廃線が増加しています。子どもや障がい者、高齢者など多様な人々の移動の権利が保障されるよう、バリアフリー設備の設置など公共交通を強化します。

 地方の過疎化、各鉄道事業者の経営合理化によって無人駅が増えています。総駅数に占める無人駅の割合は2019年度には48.2%(9,465駅中4,564駅)です。また利用者の少ない路線の廃止が地域住民の生活を脅かしています。

 国鉄から公共交通としての鉄道を引き継いだJRについて、移動の権利保障、安全性や利便性の向上、公共の福祉の観点からチェックし、社会的責任を果たさせます。

 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)の実効性を高め、地方地域のバリアフリー化の推進、バリアフリー車両開発の財政支援、現場での人員配置の強化、可動式ホーム柵やホームドアの設置促進、駅内と駅をつなぐ道路の階段や段差の解消を推進します。交通政策基本法に移動の権利を明記させます。地域住民、そして高齢者、障がい者、子どもなど、「交通弱者」となりやすい人びとの意見を交通政策に反映させます。

 

 

 

資料編

 

 

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