
記者会見を行なう「刻む会」。前列右端は発言する大椿副党首。
市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(刻む会)」は4月22日、参院議員会館で、長生炭鉱からの遺骨収容に向けて、厚生労働省、外務省との意見交換会を行なった。
首相「検討したい」
長生炭鉱は山口県宇部市にあった海底炭鉱で、戦時中の1942年に起きた水没事故で朝鮮人労働者136人を含む183人が犠牲となった。「刻む会」は昨年から、遺骨収容に向けた潜水調査を行なっている。4月7日には、社民党の大椿ゆうこ参院議員が決算委員会で遺骨収容について質問。これに対して石破茂首相は、遺骨収容のための調査について「尊いことだと思っている」「国としてどのような支援を行なうべきか検討したい」と述べた。
意見交換会でも、厚労省人道調査室の村田裕香室長が「首相の発言は承知している。専門的知見も含め、今後の対応を検討したい」と答弁したが、一方で、坑道内の調査や障害物撤去作業の財政的支援や現地視察については「安全性に懸念があり、対応の範囲を超えている」「現場を視察する段階にはない」と拒否し、これまでの答弁をくり返した。
外務省は、遺骨が発見された場合の対応について、これまでは「外交上の問題なので何も言えない」と繰り返していたが、今回は「遺族のDNA鑑定は韓国政府に求める方法しかない。それは外務省がやるしかない。責任は外務省にある」との前向きな答弁を引き出した。
国は誠意を示して
終了後、井上洋子共同代表は記者会見で「石破首相の国会答弁で国が何かをやるのではないかと、目標が見えた。『専門的知見を含めて対応を検討していく』という確認が取れたが、『プロジェクトチーム』的なものを政府がつくるのであれば、『刻む会』としては、(この間、調査を重ねてきた)ダイバーの伊左治佳孝さんを推薦したい。これからは国が誠意を示していただきたい」と述べた。
大椿議員は「皆さんの報道の広がりで流れが変わった。石破首相の答弁は『自己責任というわけにはいかない』『政府の責任をもって判断する』と前進した。政府が何をするのかを、今後注視していきたい」と語った。
意見交換会には、社民党から福島みずほ党首、新垣邦男副党首が参加したほか、立憲民主党、共産党などの議員も多数参加した。
今後、「刻む会」では、遺骨収容のための第3次クラウドファンディングを7月21日まで実施する。目標は700万円。6月18、19の両日に潜水調査を予定している。問い合わせは、090(4803)5319〈井上〉まで。