
犠牲者に祈りをささげる韓国の遺族ら。(2月1日、宇部市床波の慰霊碑前)
(社会新報2月13日号より)
太平洋戦争中の1942年2月3日、山口県宇部市の海底炭鉱「長生炭鉱」で水没事故が発生し、労働者183人が犠牲となった。そのうち136人は朝鮮人、47人が日本人だ。遺骨は今も冷たい海の中にある。
2月1日、冷たい雨の中、長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(共同代表・井上洋子、佐々木明美)は、宇部市床波(とこなみ)の慰霊碑前で「長生炭鉱水没事故83周年犠牲者追悼集会」を開き、日韓の遺族や関係者450人が犠牲者の冥福を祈った。
同会は昨年9月、クラウドファンディングで集めた資金によって遺骨収容に向けた作業を開始。今年も1月31日から3日間の潜水調査を行なっている。
井上共同代表は冒頭あいさつで、洞窟探検家の伊左治佳孝さんによる潜水調査の進展について「昨日、昨年10月の潜水調査の250㍍よりさらに15㍍進んだが、たくさんの材木が行く手をふさいでいる」と報告した。
日韓国交正常化60年 遺骨収容こそ未来志向
さらに「4月に予定されている潜水調査には、韓国から2人のダイバーが訪日し、共同で潜水調査を行なう」と発表。参加者からは歓声が沸き上がった。井上さんはまた、「現時点では遺骨の収集は考えていない」とする政府を批判。「今年は日韓国交正常化60周年。遺骨を放置したままで日韓の未来志向はあり得ない。韓国と政府の皆さまの力を貸してほしい」と訴えた。
事故で叔父を亡くした韓国遺族会の揚玄会長は「日本政府は過去の歴史的事実を認め、未来志向で、犠牲者の遺骨を故郷に送り返してほしい」と訴えた。
韓国政府関係者が出席 日本政府も取り組みを
今回、韓国から参加した遺族や関係者は100人を超えた。韓国での世論の高まりもあり、初めて韓国政府関係者が訪れた。
同国行政安全部の金敏在次官補は「青春を奪われ、異国の日本に強制的に連れ去られて被害に遭った方々に、哀悼の意をささげる。遺骨が一日も早く故郷の家族のもとに帰れるように。このことを後世に伝えていきたい」と述べ、井上代表をはじめ関係者に謝意を表した。
日本政府の動きも注目される。社民党の大椿ゆうこ参院議員のほか、立憲民主党と共産党が、国会で「市民団体が自費でここまでやっている。国として遺骨調査を」と政府を追及。マスコミも報道し始めた。
集会には社民、立憲、共産の国会議員5人が参加。社民党の福島みずほ党首は「皆さんの長年の活動や伊左治さんの潜水調査で、政府も動き始めた。国が予算を付けて安全に遺骨の発掘や遺族への返還ができるよう、政府を動かしていきたい」と決意を述べた。