【主張】第7次エネルギー基本計画 ~ 福島原発事故の教訓を忘却する愚行
(社会新報3月6日号より)
2011年の東京電力福島第1原発事故からまもなく14年が経つ。過酷で悲しい事故の教訓からいったい何を学んできたのか。
政府は2月18日の閣議で国のエネルギー政策の指針である第7次エネルギー基本計画(以下、7次エネ基)を決定した。再生可能エネルギーと共に原発を「最大限活用」するとし「原発回帰」へ大転換した。
福島原発事故以降、第4次から6次まで、事故の教訓を踏まえ、「可能な限り原発依存度を低減する」との記載が維持されてきたが、7次エネ基はこの記述を削除してしまった。
7次エネ基が打ち出したエネルギー構成では、2040年度の再生可能エネルギー比率を、23年度実績の2倍の「4~5割」を目指す。原発を「脱炭素電源」の一つと位置付け、8・5%から「2割」に増やした。火力を現状の約7割から「3~4割」に縮小する。
NPO法人「原子力資料情報室」は2月19日に抗議声明を発表し、7次エネ基が原発を2割としたことについて、「当室の推計によれば、建設中の原発含めすべて稼働して60年超運転した場合で、ようやく2040年度に20%前後となる。この推計は昨年、再稼働に向けた審査で不合格となった敦賀原発2号機や能登半島地震で被災した志賀原発1・2号機、柏崎刈羽原発の全基再稼働、建設中の大間原発・東電東通原発1号機も運転できることを前提としている。つまりこの目標の達成は非現実的だ」と厳しく批判している。
また、7次エネ基は原発の新増設を前提とし、原発1基新設7203億円と記す。これは建設コストの過小評価だ。国際NGO「FoE Japan」は2月18日の声明で、政府の原発コスト試算について「原発の建設費、安全対策費、廃炉費用、事故発生頻度など多くの箇所にコストの過小評価がみられ、科学的ではない。海外では1基新設に数兆円ともいわれる」と喝破する。
経産省が求めた7次エネ基の素案へのパブリックコメントには4万件以上の過去最多の意見が寄せられ、異を唱える意見が多数を占めた。ところが、「懸念の声があることを真摯(しんし)に受け止める必要がある」との記述にとどめた。これでは無視したに等しい。
社民党は2月19日の談話で「福島第1原発事故の反省と教訓を忘却する愚行である」と怒りを込めて厳しく抗議し、7次エネ基の根本的な見直しを訴えた。