社会新報

【主張】東京電力柏崎刈羽原発 ~ 民意を無視した再稼働は許さない

(7月3日号より)

 

 「県民の命に関わることは県民投票で決めたい」との至極真っ当な思いが14万3000人もの署名数を生み出した。昨秋から今冬にかけて取り組まれた、柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決めることを求めた直接請求署名運動の結果である。

 これだけの県民の声にもかかわらず、今年4月に開かれた臨時県議会において自民党、公明党の県議会議員は県民投票を実施するための条例案をあっさりと否決した。議員の総数53人の内、自民党32人、公明党2人であり、両党の議員で過半数を超えている以上、多数決ではこういう結果になってしまう。

 しかし彼らは県民の多数意思を完全に無視している。しかもその反対理由は、このような専門的問題を県民が判断するのは困難であるとか、二者択一で県民の意思は量られないなどという、お粗末なものでしかない。さらに、県民代表である花角知事の付帯意見は、自民党・公明党議員と同様に、二者択一では県民の多様な意見を把握できないこと、この問題は広範で複雑な問題であるなどという、極めて消極的、否定的なものであった。

 知事は日ごろ、原発再稼働について、県民の意見を踏まえて自身で判断し、その判断について県民の信を問うと公言している。であるならば、県民投票で県民の意見を聞くのが一番合理的で、民主的ではないか。

 こうした自民党や県知事の議会対応を見ると、両者ともに、柏崎刈羽原発再稼働に承認を与えようとしているのが見え見えである。昨年5月に経産相が6・7号機再稼働要請をした際、柏崎市と刈羽村は同意を表明している。この流れに自民党と県知事が乗らないわけがないのである。

 ただ許せないのは、東電は7号機再稼働を優先させていたのに、対テロ重要施設の建設が間に合わないからという理由で、6号機再稼働に切り替えたことだ。建設が間に合わないことは既知のことである。東電は事業者失格だし、規制委員会も失格だ。

 こういういい加減なやり方が許容されているのが、日本の原発推進システムなのである。もっと許せないのは、東電が再稼働を狙う目的である。自社の赤字脱却のためであり、柏崎刈羽原発で言えば、1基動かすことにより年間1000億円程度の収益改善が見込まれるからである。このような東電に、原発を再稼働させるわけにはいかない。