(社会新報11月28日号3面より)
社民党の福島みずほ党首が、このほど、ケアマネージャー(介護支援専門員)の第一人者で、NPO渋谷介護サポートセンター理事長の服部万里子さんと対談。崩壊の危機にある介護保険について語り合った。本稿は対談のダイジェスト版。対談全文は近日発売の『月刊社会民主』12月号に掲載される。
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福島党首は「私の父も母も義理の母も、介護保険のお世話になった。義理の母は94歳までひとり暮らしができたが、それはヘルパーさんが家に来てくれたから」と、実体験を語り、「その介護保険が、いま崖っぷち。これをきちっと立て直すことを社民党はしっかりやっていく」と述べた。服部さんは「今、ケアマネ(ケアマネージャー)がどんどん辞めている。新しいケアマネが生まれない、募集しても誰も来ない」と危機感を募らせ、その理由として「他の産業に比べて7万、8万円も賃金が低い」と、労働条件の悪さを指摘した。
服部さんは介護保険が直面する、もう一つの大きな問題として、「国が自己負担率を1割、2割、3割と上げてきている」と利用者の負担増を挙げた。服部さんは「サービスを利用するとお金がかかるので、年金暮らしの人、経済的に苦しい人はサービス利用を減らす人が続出する」と危惧。「こうした流れを止めようとして、福島さんが国会で闘ってくださっていることを、ものすごく心強く感じる」と評価した。
また、政府が要介護1、2も「軽度」だとして介護保険から外そうとしていることについて、服部さんは「介護度1に残れる人は、認知症です。それ以外は要支援2になってしまう」「家族がいない認知症の方だと、やはり制度としての介護保険が使えるようにならなければならない」「去年はとても暑かった。熱中症で随分お亡くなりになっている。そういう危険な状況に置かれている人を、誰かがサポートする、対応する。そういう当たり前のことが、今、危うくなっている」とその問題点を訴えた。
ケアマネ更新の難題
福島党首は「ケアマネは公的資格だけど、有期の資格で更新するためには、6年ごとに研修を受けなければならない。更新のための法定研修は88時間もかかるし、費用もかかる。仕事を休んで研修を受けなければならない。そうすると、もうケアマネをやめてしまう」と制度上の問題を指摘。「もちろん研修は大事だが、免許資格を更新するための絶対要件にするのはやめた方がいいと思う」と提起した。
これに服部さんも「おっしゃるとおり」と同意。「私は看護師免許と社会福祉士の免許も持っていますが、それらは更新はない。ケアマネだけが、6年ごとに研修を受けなければいけない」「ケアマネの仕事はどんどん複雑化しているのに、報酬が上がらないから、やりたいという人が少なくなる」「更新の研修を廃止する、あるいは筆記のみにするなどの改正をしてほしい。研修で時間を取られると、その間、仕事ができず、事業所は大変だし、利用者が救急で運ばれるといった事態が起きても緊急の対応ができない」と現場の実情を語った。
ケア中心の社会をめざす
訪問介護の報酬が今年4月から減額されたことについては、福島党首は「今年3月8日に参院の予算委員会で質問した。訪問介護事業所の約4割弱が赤字という状況のなかで、訪問介護の報酬を減額したら、倒産が増えてしまう。ヘルパーがもう来てくれなくなると訴えた。現に今、多くの介護事業者が倒産し訪問介護の事業所が1ヵ所もない自治体もある」と問題視。服部さんも「介護保険に対して決定的なダメージ」「このままでは在宅死が増えていく危険がある」と憂いた。福島党首は「一方で24年度の軍事費は8兆5000億円。うなぎ上りの青天井。それに対して、訪問介護の報酬減額で節約される税金なんて微々たるものだ」「訪問介護の報酬減額をやめさせることをやっていく」と意気込み、「医療・介護・福祉・保育など、ケアを中心にすることで、本当に生きられる社会になる」と、人々の生活を守る社民党としての政治のビジョンを語った。