
■かわさき・あきら 1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、NPOピースデポ事務局長などを経てピースボート共同代表。2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営委員。

連携を誓い握手する川崎さんと福島党首。
(社会新報4月10日号より)
社民党の福島みずほ党首は、このほど、ピースボート共同代表で核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんと対談した。核兵器禁止条約締約国会議など世界の核廃絶の動きと日本の役割について語り合った。(対談の詳報は『月刊社会民主』5月号に掲載予定)
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今年3月に開催された核兵器禁止条約の第3回締約国会議に参加した福島党首は、「核兵器禁止に向けて世界中が『自分ごと』として動いていることに勇気づけられた」「核保有国でも核廃絶への動きがある。フランスでも、せめてオブザーバーとして締約国会議に参加すべきだと、国会議員52人が署名を集めた」と振り返った。
また「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の濱住治郎事務局長代行が『核兵器は、不拡散でも減少でもダメなんだ』と訴え、日本被団協が会議を牽引(けんいん)した」と指摘した。
これに対して、川崎さんも「福島さんをはじめ6人の国会議員が与野党から参加したことは大きい」と高く評価した上で、「会議の最初から最後まで日本被団協の話がずっと出ていた。日本政府は参加しなかったけれども被爆国日本が重要な役割を果たしたことは明らかだった」と強調した。
核の脅し政策はダメ
そして、川崎さんは「今回の最大の成果」として、「やはり核抑止という考え方自体が間違っているということ、核の脅し政策はダメだということを、かなりの熱量を持って、さまざまな国々も、参加した160を超えるNGO、そして被爆者、世界の核被害者も、一緒になって強く打ち出したことが、一番重要なポイント」と語った。
さらに、「被爆80年となる今年の夏に向けて、日本政府に対し、核抑止論がいかに危険かを論理的にも詰めていって、核への依存をやめさせるかが課題だ」と述べた。
福島党首も「ニュージーランドは米国と軍事同盟を結んでいるが、前回と今回の会議にオブザーバー参加している」として、対米追従一辺倒の日本政府の姿勢に疑問を呈した。また、トランプ政権が日本の防衛費をGDP比3%に増額を求める構えを示したことに触れ、「日本が核廃絶のため何ができるのか。そしてもう一つ重要なテーマは、日本の軍拡や軍事要塞化をいかに止めるかだ」と問題提起した。
これに川崎さんも同意し、「不安だからといって抑止力に頼ると、結局、軍拡の競争になる。悪循環になる。核兵器やその強大な軍事力に頼るのではない形での協調的な安全保障という形に持ってかなければいけない。アジアの非核兵器地帯の議論を今こそやってかないといけない」と語った。
川崎さんは、「ラテンアメリカ、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジアに非核地帯がある。一国ではモンゴル」と指摘。世界で非核地帯が広がっていることを示した。
福島党首も、「今回の会議で、モンゴルの外交官が30年かけてモンゴルを非核地帯にしたと語ったのがとても印象に残っている」と振り返った。
韓国核保有論を懸念
また、北朝鮮の動向に刺激されて韓国で核保有論が高まっていることを懸念。福島党首が「韓国野党の幹部とは、労働問題や人権、平和・軍縮などいろいろなテーマで話している。だから核廃絶についても、もう少し突っ込んで話をしたい。来年の核不拡散条約再検討会議に、国会議員で参加してみようと提案するのもいいのかもしれない」と提案すると、川崎さんも「ぜひやっていただきたい」と賛同した。
川崎さんは、近年、核廃絶の議論のリーダーシップをとる国々として、インドネシアやマレーシア、フィリピンなどを挙げ、「こういう国々と日本、韓国、中国にも参加してもらい、その枠組みで核とか軍縮の議論をやることが大事」と国際連帯の重要性を説いた。
福島党首は「『核兵器はレベルが違う』と言われるかもしれないけれど、日本は地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約を批准している。日本の自衛隊はクラスター爆弾を持っていたけど、廃棄した。こういうことを政治が主導してやっていかなくてはいけない」と述べた。
NGOと社民党が連携
川崎さんは「大きな夢に向かっていく途中の目標設定がすごく重要」と強調し、「日中関係をどう改善していくのか。台湾有事をどう回避するのか。全体的に軍縮をどう進めていくのか」といったテーマで「NGOと社民党の皆さんで協力していくことがあってもいい」と意欲を見せた。これに対して、福島党首も「社民党も市民社会と一緒におおいに頑張りたい」と応じた。