社会新報

【主張】米国とイスラエルによるイラン核施設への攻撃 ~ トランプ政権とネタニヤフ政権の蛮行を許すな

(6月26日号より)

 

 6月13日、イスラエル軍はイラン各地の軍事基地、核関連施設など100以上の標的をいっせいに攻撃した。イスラエルのネタニヤフ首相はイランの核開発が「自国の生存への脅威」として先制攻撃を正当化している。イスラエルの攻撃対象は、イランの首都テヘランの国防軍需省など政府機関や放送局、空港などのインフラに広がった。

 すでにテヘランの防空態勢は破壊され、政権幹部、革命防衛隊、核科学者などイランの要人が次々暗殺されているとも伝えられている。イランの最高指導者ハメネイ師は徹底抗戦を訴え、ミサイルや無人機による反撃を行っており、双方に多数の死傷者が出ている。

 ネタニヤフ首相がハメネイ師の殺害計画をほのめかし、イラン民衆に蜂起を促すなど「体制転換」を目指す姿勢を示すなか、事態の鎮静化の見通しは立っていない。このまま双方が強硬路線を進めば、周辺国を巻き込んだ全面戦争ともなりかねない。

 イランの核開発が中東の緊張を高めてきた要因の一つであることは間違いない。すでに核弾頭を製造できる高濃縮ウランを製造し、兵器化が近いとも指摘されていた。

 そうだとしても6月15日に米国との核協議を予定し、外交テーブルに着こうとする直前のイランを、武力攻撃する理由にはならない。そもそもNPT(核不拡散条約)に加盟せず100発近くの核弾頭を保有するイスラエルは、事実上の核兵器国であり、その核自身が脅威となっている。他国の核の脅威を口実に先制攻撃をする前に、自らの核について説明するべきではないのか。イスラエルの強硬姿勢はイランの世論を刺激し、核武装論を強めるおそれすらある。

 この間、ガザでのパレスチナ人虐殺やレバノン、シリアでの軍事行動など、安易に武力を振りかざすネタニヤフ政権の姿勢は目に余る。国際社会は一致して双方に攻撃中止を求め、米国に対しても即時停戦を主導するよう強く迫るべきだった。

 ところが、米国は6月21日、イランの核施設3カ所に空爆を強行してしまったことで、極めて重大な局面を迎えた。米国が直接参戦したことで、想定をはるかに超える結果を招く恐れがある。イランによる報復措置として想定されることは、原油の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖、中東地域にある米軍事基地攻撃、世界各地の米国やイスラエルの関連機関に対する親イラン軍事組織による攻撃などである。報復の連鎖の先にあるのは、米国・イスラエルとイランによる核兵器使用という破局である。

 日本の立ち位置が問われている、唯一の戦争被爆国・日本は、ヒロシマ・ナガサキの悲劇から80年目となる今、中東で核兵器が使用されることを絶対に許さないよう、国際世論に訴えなければならない。米国、イスラエル、イランと良好な関係を保つ日本の責任は極めて重い。