
問題点を指摘する海渡双葉弁護士。

福島党首(右)と海渡双葉弁護士。
(社会新報2月20日号2面より)
社民党の福島みずほ党首はこのほど、『月刊社会民主』3月号の企画で、秘密保護法対策弁護団事務局長の海渡双葉弁護士と対談。能動的サイバー防御(ACD)法案の危険性について語り合った。対談の全文は近日発売の月刊社会民主に掲載される。
ACD法案は、警察や自衛隊等の政府機関が常時メール等の通信を無制限に監視・収集し、サーバーに侵入して「無害化」(=破壊)するというもの。7日に閣議決定され、通常国会に提出された。福島党首と海渡弁護士は、これは憲法21条が保障する「通信の秘密」の侵害につながり、最悪の場合には戦争の引き金にすらなり得ると危惧する。
政府が設置した有識者会議は、ACDについて昨年11月に提言を発表。増加しているサイバー攻撃に対処するためのものとの建前はあるが、2月7日に閣議決定された法案の内容が憲法で保障された「通信の秘密」とプライバシーを侵害することは明白だ。
海渡弁護士は「プライバシー侵害で反対運動が盛り上がった通信傍受法(盗聴法)ですら、犯罪の可能性、容疑があるとして令状を取ってそれで電話を盗聴するというものだった。しかし、今回のACD法案は何か犯罪の予兆があるからではなく、裁判所の令状なし、つまり裁判所の審査をなしに警察や自衛隊が常時、ネット監視するものだ」と批判した。
福島党首は、岐阜県の大垣市での市民運動を警察が徹底的に監視していた事件について語った。
この事件は、岐阜県での大型風力発電施設の建設計画について問題点を考える勉強会を市民が開催したところ、県警が参加者の個人情報を収集した上、事業者側に提供したというもの。市民側は損害賠償や個人情報の抹消を求めて提訴。昨年9月に名古屋高裁で勝訴した。
海渡弁護士はこの判決について「個人情報の収集・保管・外部への提供はいずれも違法と判断した。個人情報の収集が憲法で保障された表現の自由や内心の自由に対する間接的な制約になると判断された」と指摘し、ACD法案と共通する問題点を強調した。
ACD法案のもう一つの問題点は「外国がサイバー攻撃を仕掛けてくる兆候がある」と警察や自衛隊が判断した場合、未然に外国のサーバーを「無害化」すること。福島党首は「これはサイバー版敵基地攻撃能力ではないか」と指摘。海渡弁護士も「外国の主権を侵害してサーバーを『無害化』する場合、英国では、国務大臣の許可状がいる。オーストラリアでは令状を取らなければいけない。カナダでは、国防大臣が許可を発出するのですが、外務大臣の要請または同意があった場合に限って許可できる」と例示。それに対して日本は「独立機関の承認だけで警察と自衛隊が行なう」として、あまりに安易にACDを運用しようとしていることに懸念を表明した。