(社会新報2月27日号3面より)
1月31日に開催された「安定的な皇位継承のあり方」をめぐる衆参両院正副議長と各党代表者らによる協議を傍聴する機会に恵まれた。
この協議は昨年5月に始まったが、議論方向が2021年の「皇位継承に関する有識者会議報告」に沿っていて、女性天皇導入の可否を最初から論議の外に置くものであり、社民党として到底承服できないものであった。案の定、会議の締めで正副議長が今後の進め方を示し、女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、その配偶者と子どもに皇族の身分を付与するか否かと、皇統に属する男系男子を養子に迎えることの2点について議論を進めることを提案した。
これに対し、社民党、共産党、れいわの代表者は「有識者会議の報告書に沿った論点での論議に賛成できない」と表明した。05年の「皇室典範に関する有識者会議」が認め、かつ同年の『毎日』世論調査で87%もの賛意が示された女性天皇容認を最初から議論の俎上にも載せない両院正副議長のやり方は非民主的だ。
根は同じだが、石破政権の幼稚な対応が批判を浴びている。男系男子に限った皇位継承は女性差別に当たるとして、国連女性差別撤廃委員会が日本政府に皇室典範改正を昨年10月に勧告した。これに対して政府は女性差別には当たらないとして、日本の拠出金を委員会の活動に充てないよう求めるとともに、今年度予定していた委員の日本訪問を取りやめることを、国連人権高等弁務官事務所に1月27日に伝達した。
しかも2月10日の衆院予算委で自民党の鈴木隼人議員は、女性差別撤廃委員会の判断について、「条約に加わることと国体を守ることの、どちらが大事なのか。条約の破棄も含めて、踏み込んだ対応が必要だ」と、岩屋外相に詰め寄った。
一体この時代錯誤は何なのか? 「国体」=天皇制絶対主義を守るために、ポツダム宣言受諾が遅れ、日本各地への大空襲、広島、長崎への原爆投下で多くの人命が失われた。
今の天皇は国民統合の象徴で、この地位は主権の存する国民の総意に基づくものだ。総意が女性天皇を求めているときに、それを無視することは憲法に基づいていないことになる。ジェンダー平等は国際基準であり、それに反する皇室典範改正を女性差別撤廃委員会が勧告したのは当然。政府の報復的対応はあまりに稚拙で、恥ずかしい限りだ。