社会新報

【共同テーブルシンポジウム】 税金で育つ「死の商人」~「米国の戦争」を日本が肩代わり

望月衣塑子さん

小野塚知二さん

纐纈厚さん

 

(社会新報3月13日号より)

 

 共同テーブルが主催するシンポジウム「税金で育つ『死の商人』 武器で平和は創れない」が2月21日に東京・文京区で行なわれ、約80人が参加した。

日本は武器輸出大国

   第1部では3人が講演した。
 初めに、明治大学国際武器移転史研究所客員研究員の纐纈厚さんが登壇。纐纈さんは、日本が侵略戦争の拡大と同時に武器の生産・輸出を増やし、敗戦後も朝鮮戦争以降、一時的に停止していた武器の生産・輸出が再び拡大した流れを解説した。その上で、「戦後の日本は(平和憲法の下で)一応は武器輸出の歯止めを設定したが、形式的なものにすぎなかった」とまとめた。
 次いで「東京新聞」記者で軍事産業に関する取材を続ける望月衣塑子さんが登壇。2014年にそれまでの武器輸出3原則から防衛装備移転3原則に衣替えしたこと、さらに22年に安保3文書が閣議決定されたことと同時並行で、重工業大手の三菱重工・川崎重工・IHIなどが軍事関連売り上げを急増させた事実を指摘した。
 こうした動きとともに、軍事産業から自民党関連への献金や裏金拠出が多額に上り、官邸や防衛省などからの天下りも常態化していったという。望月さんは、「兵器費用のツケが私たちの子や孫に受け継がれていく」と語った。
 東京大学名誉教授の小野塚知二さん(経済学・歴史学)は、「経済の軍事化」の問題点を指摘した上で、戦後日本の兵器が米軍規格に再編され、また米国製装備に依存する方向に進んでいったとして、「今の日本は米国の言うとおりにやらなければならない状態に陥っている」と指摘した。

米国に隷属する日本

 第2部では、纐纈さん、望月さん、小野塚さんがそろって登壇し、会場からの事前質問に答える形でパネルディスカッションが行なわれた。纐纈さんがコーディネーターを兼ねた。
 「日本がこのまま軍事経済化していけば、戦争するしかなくなるのか」との質問に対し、小野塚さんは次のように語った。
 「日本が戦争をするしかない状況になるのは、米国から『戦争してこい』と言われた時だけだ。日本がますます米国の軍事的従属国になっているからだ。もし日本が本気で戦争を避けようと思うなら、日米安保条約のあり方を見直す必要がある」
 纐纈さんは、陸・海・空の自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部の設置が決まったことを取り上げ、次のように語った。
 「自衛隊は米軍の陸・海・空・海兵に次ぐ第5軍に位置付けられ、米インド太平洋軍の中に(実質的に)組み込まれる。だから、いつでも戦争できる、戦争せざるを得ない状況に置かれる。戦前と違い、今度は米国によって『日本の戦争』が仕立て上げられていく」

米国が頭で日本は手足

 「能動的サイバー防御についてどう思うか」との質問に対し、望月さんは、「実質的に先制攻撃であり、憲法9条に反している」と指摘した。
 纐纈さんは「日本は米国に背中を押され、(安保3文書に見るように)先制攻撃戦略をとるようになった。サイバー部門でも同じだ」とした上で、次のように根源的問題を指摘した。
 「誰がどのような状況で判断し、何をもって『敵』と対象化するのか。日本が(主体的に)判断するんじゃない。米国の情報に基づき、日本が動く。頭はぜんぶ米国で、手足は日本ということだ」

米にNOと言える国へ

  「軍拡・増税から軍縮・減税の流れは、どうしたら具体化できるか」との質問に対し、小野塚さんは「日本の政治を変えるしかない。だが、(09~12年の)民主党政権が経験したように、(現状では)米国を無視しては何もできない。結局、政権を取ったところで『米国に対しNOと言えるか』が最後まで残る問題だ」と指摘した。
 望月さんは、この前に出た「今後の日本の防衛費倍増で何に使われるのか」との質問と合わせて、次のように語った。
 「日本の昨今の防衛費増は、米国製兵器の爆買いによっている。安倍晋三首相(当時)は米国製の戦闘機など兵器を大量に買うことで、(第1次)トランプ政権に猛アピールした」
 「今の石破政権も、この流れを踏襲している。私たちのカネが、軍拡の下で米国製兵器の購入に流れている。本来は、日本の教育や福祉に回すべきものだ」