社会新報

日本記者クラブで 三牧聖子さん ~ イラン戦敗北後の米国政治は中間選挙を控えイスラエル批判も

記者会見する三牧聖子教授。(6月22日、日本記者クラブ)

 

同志社大大学院の三牧聖子教授(米国政治外交専攻)が6月22日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見を行なった。「米国とイスラエルのイラン攻撃その影響と背景」をテーマに、イランへの戦争が秋の中間選挙など米国政治にどう影響していくのかについて解説した。

打ち捨てられた公約

三牧さんは、「このイラン戦争を語る前に、2024年の大統領選挙について解説したい」と話し始めた。
「今年は、1776年の米国独立宣言から250年。現在の疲弊した米国経済により、いわゆるアメリカンドリームは存在しないと考える米国市民が7割を超えている」と述べ、その理由について、「24年の大統領選で、共和党のトランプ氏は、物価高や移民問題など、生活問題を焦点にした政策を訴えた。対立候補の民主党のカマラ・ハリス氏について、『カマラが勝てば、3日で1929年型の大恐慌が始まる。私が勝てば、皆が3日で最高の雇用と給与、明るい経済的な未来を得ることになる』と訴えて当選した」と語り、さらに、「トランプは、自分は平和の大統領となるが、カマラが4年間の政権を得たら、中東は再び戦禍に巻き込まれる。第3次世界大戦すら起こり得るので、平和のためにトランプに投票せよと呼びかけた」と話した。
その上で、「しかし現実は、今年1月のベネズエラへの攻撃(断首作戦)を皮切りに、2月にはイランへの攻撃を始めてしまい、ホルムズ海峡の封鎖によって、ガソリン価格の高騰や農業肥料の不足を招いており、トランプ大統領の公約は打ち捨てられた形となった」と指摘した。

変わるイスラエル観

三牧さんは、「そもそも米国はイランと戦う必要があったのか。イラン攻撃前、25年春に行なわれた世論調査(複数回答)では、米国民の79%がイランの核兵器保有に反対する一方で、核保有阻止の手段としては、外交的手段を支持するとした人が83%もおり、空爆を支持する人は、外交や制裁が失敗した場合と前置きをした上で48%だった」と指摘した。
そして「開戦後の3月には、米国の国家テロ対策センターのトップであるジョー・ケント氏が、『イランはわが国に対する差し迫った脅威をもたらしていない。イスラエルとその強力な米国のロビー団体の圧力によって、われわれがこの戦争を始めたのは明らかだ』との抗議の書簡をトランプ大統領に送って辞任している。また、トランプ支持者の間でも、米国ファーストではなく、イスラエルファーストだとの批判が高まっている」と話し、「米国の有権者全体でも、パレスチナを支持する動きが急速に高まっている」と分析した。
その上で、三牧さんは、「秋の中間選挙に向けて、イラン戦争やイスラエルへの軍事支援を公然と批判し、予備選を戦う候補者が登場しており、この流れを受けてトランプ大統領は『米国がいるからイスラエルは存続できる』と発言し、イスラエル支持者として有名なバンス副大統領も、『ネタニヤフ首相の政策判断に対する全ての批判が、反ユダヤ主義につながるわけではない』と言うなど、イスラエル批判を強めている」と強調した。

今後の米国どうなる

三牧さんは、「今後を語るのは難しいが、その鍵となるのは、前回惨敗した民主党が復活できるのかどうかにかかっている」と分析し、「民主党のカマラ・ハリス氏に投票しなかった人が挙げた最大の理由は、ガザ地区への対応。親イスラエル姿勢の強いハリスの選挙戦に対する総括がきちんとなされたのか、大変に疑問だ」と指摘し、「ニューヨークでは、民主社会主義者を自称し、イスラエルの軍事行動を厳しく批判した民主党のゾーラン・マムダニ市長が誕生するなど、新しい動きが強まっており、この流れがどうなるのか注視していくべきだ」と語った。

 

■みまき・せいこ 1981年生まれ。米国政治外交史を専門とする政治学者。東京大学で博士号を取得後、ハーバード大学などの研究員を経て、2025年より同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の教授を務めている。