社会新報

公益通報者保護の徹底を ~ 大椿副党首が参院本会議で代表質問

 

参院本会議で所属会派を代表して質問する大椿ゆうこ副党首。上は関口昌一議長。(5月14日)

参院本会議の全景。

 

(5月29日号より)

 

 社民党副党首の大椿ゆうこ参院議員が5月14日、参院本会議に登壇し、立憲民主・社民・無所属会派を代表して公益通報者保護法改定案に対する質問を行なった。

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 今回の法改定は、①公益通報を受け付ける体制の整備を罰則付きで義務付け②公益通報者の範囲をフリーランスに拡大③通報妨害や通報者の探索の禁止④通報を理由にして解雇・懲戒を行なった者への刑事罰の導入ーーなどを盛り込む。

 改定の直接の理由ではないが、兵庫県の齋藤元彦知事が、自身のパワハラ等を告発した元西播磨県民局長を懲戒し、プライバシー情報を探り出し、自殺に追い込んだ事件を受け、本法案は大きな注目を集めている。

 質問の冒頭、大椿議員は、亡くなった県民局長への弔意と、二度と同じことを繰り返してはならないとの決意を述べた。

 齋藤知事は、「法が定める体制整備義務の対象は内部通報を行なった者のみ」という独自の法解釈を述べ続け、4月8日には消費者庁参事官室が兵庫県に「消費者庁による公式見解とは異なる」とのメールを送る展開になっている。

伊東担当相が齋藤知事の見解を否定

 大椿議員が外部通報した者も保護対象であるかどうかを問うと、消費者庁の伊東良孝担当相は「一般論として、外部通報を行なった公益通報者も、保護要件を満たせば解雇等の不利益な取り扱いから保護される」と答弁した。

 法案第20条は、国と地方公共団体を体制整備義務違反者に対する勧告、命令、報告徴収、立入検査の権限が及ぶ範囲から除外している。衆院では同条を削除する修正案が提出されたが、削除には至らなかった。

 大椿議員は、地方自治の本旨は理解しているとしながらも、兵庫県の事例は行政機関が法違反を行なうこともあることを示しているとして、あらためて20条を削除するよう求めた。

 また、国会での追及の材料を減らすため、財務省が公文書を破棄したと報じられている森友学園問題に関連し、現状では公文書管理法のような国家の権能に関する法律の違反は公益通報の対象に入らないため、通報対象となる法律の指定のあり方に再考の余地があると指摘した。

 体制整備義務について、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務のままになっている。大椿議員は、プライバシー保護のため特別の配慮が必要となる中小零細企業を支援しつつ、義務対象の事業者を拡大すべきと指摘した。

 フリーランスまで保護範囲が拡大されたのは一歩前進だが、EU公益通報者保護指令には、公益通報者に自営業者、株主、役員、ボランティア、研修生、請負、下請企業等の指揮下にある者、退職者等が含まれると定められており、通報を援助する者も保護される場合があることが書かれている。

 大椿議員は、通報対象事実を知る場面は雇用関係だけとは限らず、弁護士等を代理人にしたり、同僚等と共同で通報を行なったりすることも考えられることから、範囲の一層の拡大を考えるべきと求めた。

通報者の不利益扱いは類型問わず刑事罰に

 改定案には、通報を理由にして解雇・懲戒を行なった者に対する刑事罰を導入し、通報後1年以内に行なわれた解雇・懲戒は通報を理由にしたものだと推定する、立証責任の転換規定が盛り込まれている。

 しかし、事業者がいきなり解雇・懲戒を行なうことは考えにくい。大椿議員は、トナミ運輸の闇カルテルを告発し、草むしりのような閑職に追いやられた串岡弘昭さんの話を聞いたことを紹介し、事業者は嫌がらせ、配置転換、降格、昇格させないなど、ありとあらゆる方法を使って通報者が自ら辞めるよう仕向けるとして、今回の規定で通報者を十分保護できるのかとただした。

 また、労働基準法104条2項は、労働基準法令違反を申告した労働者に対する不利益取り扱い全般を罰則付きで禁止しているとして、公益通報者保護法においても類型を問わず不利益取り扱い全般を刑事罰・立証責任の転換の対象とすべきと訴えた。

 結びに、闘う労働組合があれば、職場の不正に気付いたときに団体交渉で会社に是正を求めることができるとし、たった一人の労働者を矢面に立たせず、公益通報者保護法を真に生かすために、労働三権を行使しようと呼びかけた。