えん罪被害者の救済に逆行する政府法案を成立させるわけにはいかない。政府は5月15日、刑事事件の再審制度を見直す刑事訴訟法改正案を閣議決定し、国会に提出したが、問題が多すぎる。
政府法案の第一の問題点は、裁判所の再審開始決定に対する検察の不服申し立て(抗告)が再審手続きを無用に長引かせ、深刻な問題となってきたことについて、自民党との事前審査で、法案の本則に「原則禁止」と明記した点は一歩前進したかに見えるが、「十分な根拠」があれば抗告を認める例外規定も本則に記し、抗告の余地を残したことだ。その「十分な根拠」が妥当かどうかを判断するのは検察であり、「原則禁止」は空文化するだろう。
2024年に再審無罪となった袴田巌さんの場合など、再審手続きの長期化で相当な高齢となり、重大な事態となっている。それにもかかわらず、法務省の当初案は検察の抗告を認める現行法をそのままにして、抗告の全面禁止を求める議員らが激しく抵抗した。法務省は抗告の制限を付則で定める修正案など3度の修正の上、抗告の「原則禁止」を本則に明記することで決着した。
第2の問題点は、証拠開示の範囲を「再審請求理由に関連」するものに限定し狭めていることだ。さらに再審の手続きやその準備以外の目的で証拠を公開する「目的外使用」を一律に禁止し、違反した場合、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金を科す。これでは知る権利を侵害する。再審無罪となった袴田事件の場合、死刑判決の決め手とされた「血染めの衣類」のカラー写真が弁護側に開示され、支援者や報道機関に共有されたことで、その不自然さがあらわとなった。開示された証拠を支援者や報道機関と共有することが禁じられてしまえば、今後、証拠の矛盾を発見することができなくなってしまう。
一方、議員立法が先行して国会に提出されてきた。2024年に超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が発足し、福島みずほ社民党党首が同議連の顧問を務め、法整備の取り組みを進めてきた。昨年6月には社民党など野党6党が改正案を共同で衆院に提出したが、今年の衆院解散により廃案となった。野党案の内容は、検察の抗告を全面的に禁じ、証拠開示を幅広く可能にするほか、えん罪被害の回復を支援する内容だ。今月15日、中道改革連合や共産党など3党が検察の抗告を全面禁止する改正案を衆院に提出した。
社民党はえん罪被害者を早期に救済する再審制度への抜本的な法改正を目指して、全力を挙げる。