社会新報

【さようなら原発全国集会】 福島原発事故から14年 ~ 「原発回帰」政策を許さない

パレードの先頭では、西みゆかさん(参院東京選挙区予定候補=手前)も「3・11フクシマを忘れない」のプラカードを掲げていた。

(社会新報3月27日号より)

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発の大事故から約14年となる3月8日、「3・11福島原発事故を忘れない」集会が東京・代々木公園で行なわれ、約3000人(主催者発表)が参加した。主催は「さようなら原発」一千万人署名市民の会。

ご都合主義の数合わせ

 政府は2月18日、おおむね3年ごとに見直す「エネルギー基本計画(エネ基)」とそれに基づく国家戦略「GX(グリーン・トランスフォーメーション)2040ビジョン」を閣議決定した。

 新しい「エネ基」は、今後の電力需要の伸びやエネルギー安全保障などを理由に、福島原発事故後に定めた「原発への依存度を可能な限り低減する」旨の記述を削除し、原発の建て替えを含む原子力の推進姿勢を明確にした。

 「GX2040ビジョン」は、原子力を脱炭素電源と位置付け、最大限の活用を目指している。

 今通常国会で、これら閣議決定に基づく諸法案が提出される。

原発は地域を破壊する

 福島県平和フォーラムの瓶子高裕さんは、こうした政府の原発推進政策に対し、「福島原発事故による被害は深刻で、まだ収束していない。一度の原発事故でこれほど大きな被害をもたらすことを忘れてはならない。地震大国の日本では、原発は危険な施設以外の何物でもない」と批判した。

 原発事故被害者団体連絡会の大河原さきさんは、東京電力の経営陣に事故責任を問う訴訟で最高裁が無罪判決を出したことや、住民らによる賠償請求訴訟で国の責任を認めない判決が続いていることなどを取り上げ、「誰も裁かれなければ、この無責任体制が維持され、第二、第三の大惨事が起こりかねない」と警鐘を鳴らした。

 青森県農業者政治連盟組織協議会の荒木茂信さんは、青森県六ヶ所村で約32年前に着工した再処理工場がまだ竣工(しゅんこう)していないとして、「技術が未確立なのに、国は何の責任も取らずに原子力政策を国策として進めている」と批判した。

原発再稼働を許さない

 新潟県の「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」の池田千賀子さんは、運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発を再稼働させる動きがある中で、県議会に対して、県民投票の実施のための条例制定を求める署名運動を行なっていることを紹介した。

 現在、直接請求に必要な「有権者数の50分の1」の約4倍に当たる15万筆以上の署名が集まっている。署名は4月の臨時県議会に提出され、審査・採決が行なわれる予定だ。

 池田さんは18年の新潟県知事選に立候補して花角英世氏(現知事)に僅差で敗れたが、その際に花角氏に原発再稼働について「県民の信を問う」と約束させたという。

 池田さんは「県議会が採決を行なうまで、全国の皆さんは大きな圧力をかけてほしい」と訴えた。

 この他、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」や、環境問題に取り組む「Fridays For Future Tokyo」などの発言もあった。

 講演の合間には、バンド「TABI Blue」によるライブ演奏もあり、「『滅多なことで事故は起こらない』などとうそを振りまく」と原発推進勢力を批判するボーカルの声が響き渡った。

 閉会あいさつで、ルポライターの鎌田慧さんは、福島原発事故後の訴訟判決の多くで加害者責任が示されないことを取り上げ、「あれだけの事故を起こしながら、誰も責任を取らない。これが現在の原発政策であり、それを支える日本の政治だ」と批判した。

 集会後、渋谷駅方面と原宿駅方面の二手に分かれ、デモ行進が行なわれた。

 参加者は道行く人々に「原発推進政策、反対」「福島原発事故を忘れない」などとコールでアピールした。