(5月29日号より)
5月13日の衆院本会議で「日本学術会議法人化法案」が自民党、公明党などの賛成多数で通過した。
同法案は、日本学術会議を特殊法人化し、政府介入を強め、学問の自由を侵害し、大学の軍事研究を加速する悪法案である。
同法案は、現行の首相による学術会議の会員任命を廃止するが、新たに学術会議内に設置される学術会議の業務を監査する「監事」と、内閣府に新たに設置される「日本学術会議評価委員会」の委員は首相が会員以外から任命することとなる。これにより、政府による学術会議への介入を強化してしまう。政府は「監事や評価委員会は学術的内容を判断しない」としているが、全く信用できない。
さらに、現行法には存在しない、会員を解任できる規定が設けられている。この規定について坂井学内閣府特命担当相は「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員を解任できる」と答弁した。特定の思想を排除できる同法案がいかに危険であるかが分かる。
そもそも学術会議法人化の発端は、2020年に菅義偉内閣で起きた会員6人の任命拒否問題である。この問題以降、自民党などが学術会議のあり方を見直すこととなり、法人化によって独立性が明確化すると政府は強調する。
しかしながら、学術会議の独立性に問題を生じさせたのは任命を拒否した政府である。しかも政府は任命拒否の理由を今なお説明しようとしない。この問題が解明されないままに、一方的に学術会議の法人化を強行することは許されない。
法案では、現行の日本学術会議法の前文である「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」という文言が削除された。日本学術会議は、戦前の科学者が戦争協力したことへの反省に基づいて成り立ったものであり、学術会議は1950年と67年には戦争と軍事目的のために科学研究をしないとの声明を発出している。17年には先の声明を継承する声明を発出し、大学に対して強まる軍事研究の圧力に抵抗している。
だからこそ政府と自民党は、日本学術会議を骨抜きにして、大学における軍事研究を強化するために法人化を強行しようとしているのだ。
学問の自由を守り、軍事研究に抵抗する学者や市民らを中心に、廃案に向けて必死の反対運動が展開されている。社民党も参院での廃案に向け全力を尽くす。