社会新報

【主張】「中傷動画」疑惑 ~ 首相の秘書を国会に参考人招致すべき

 高市早苗首相の陣営が自民党総裁選や衆院選で相手候補を中傷するショート動画を大量に作成依頼し、SNSで拡散していた疑惑が重大な問題となっている。昨年の自民党総裁選をめぐり、高市首相の木下剛志・公設第1秘書が、IT会社代表の松井健氏に対して、ライバル候補の小泉進次郎防衛相と林芳正総務相を中傷する動画を大量に作成しSNSで拡散するよう依頼し、松井氏が依頼どおり実行したとされる。『週刊文春』が4月から数回にわたり詳報したほか、共同通信も松井氏本人へのインタビュー記事を掲載。松井氏は実名で独自開発したAIソフトで動画を作成・投稿したことを認めている。

 総裁選の期間中、オンライン会議で木下秘書が松井氏に「優勢な小泉氏を逆転するにはどうすればいいか」と相談し、松井氏は「ネガティブな発信」作戦を提案した。「小泉氏へのアンチを7割、林氏アンチを1割、高市氏のポジティブな動画を2割作る」ことで一致したとされる。中傷動画は1千数百本に及んだ。動画のセリフは、小泉氏については「実務経験ゼロ 耳障りの良い言葉しか言えない『客寄せパンダ』」、林氏については「完全アウト! 政界の119さん あなたがぴーぽーぴーぽーなんですけどぉーーw」などと、おとしめる内容が並ぶ。こうした中傷動画が総裁選の結果に影響を及ぼしたことが容易に推察される。一方、高市氏を取り上げる動画は、礼賛の数々。「誰にも忖度(そんたく)しない、圧倒的な実行力」とポジティブなものばかり。

高市首相は5月11日の参院決算委で野党から疑惑を追及されると、「秘書も(松井氏と)面識はない」「秘書を信じます」としらを切った。その後、『週刊文春』(有料電子版)が松井氏と木下秘書のやりとりの音声データも公開。6月4日の衆院予算委で野党議員が「音声は木下秘書本人か確認したか」と追及すると、首相は「『週刊文春』の有料会員になること自体、私は拒否します」。翌5日の参院予算委では、前夜に音声を聞いた首相は「音声に違和感がある」とあいまいな答弁。

さらに、高市陣営の動画作戦は総裁選だけでは終わらず、今年2月の衆院選でも続いた。攻撃の対象は野党の有力政治家たちだ。

 ことは公正な選挙の根幹にかかわる重大問題である。首相は指摘された疑惑に自ら進んで説明責任を果たさなければならない。木下秘書の国会への参考人招致が不可欠だ。社民党は疑惑の徹底解明に全力を挙げる。