【主張】 能動的サイバー防御法案 ~ 戦争の引き金となる主権侵害の恐れ
(社会新報1月30日号)
1月24日、第217回通常国会が開会した。昨年10月の衆院選の結果、少数与党となった石破政権は苦しい国会運営だ。一方で、急伸した野党にとっては先の臨時国会と同様、「チャンスの国会」だ。「選択的夫婦別姓制度」創設など自民党政権では実現不可能であった法案の成立を目指せるはずだ。
しかし、またも私たちの人権を脅かす法案が通常国会に提出される。
そのひとつが、「能動的サイバー防御」法案である。同法案は、サイバー攻撃を未然に防ぐことを目的とする。その内容は、①民間企業との情報共有など「官民連携」の強化②政府による民間事業者の「通信情報の利用」③警察・自衛隊に攻撃元のサーバーへの「侵入・無害化」の権限付与 である。航空会社や医療機関などへのサイバー攻撃が生じており、私たちの生命やインフラなどを守るためにもサイバー攻撃の対策は急務である。しかしながら、同法案は深刻な人権侵害を生む恐れがある。
まず、サイバー攻撃を未然に防ぐために国が平時からネット空間を監視する。さらに、一定の条件のもと民間の通信情報を国が収集・分析できる。収集できる情報の範囲が限定されておらず、個人間のメールなども収集できる恐れがある。これは憲法21条が保障する「通信の秘密」に反するものであり、著しいプライバシー侵害である。
また、攻撃元のサーバーに警察と自衛隊が侵入し、無害化することは、不正アクセス禁止法によって禁じられている行為である。この行為を、独立機関の承認を受ければ可能としようとしている。しかも、同法案は他国によるサイバー攻撃を前提としており、自衛隊が他国のサーバーへ侵入・無害化する行為が、相手国からすれば主権侵害とみなされる恐れもある。この行為が戦争の引き金となることも否定できない。
以上のように、同法案はプライバシー侵害のみならず、攻撃的な主権侵害となる法案であり、成立を阻止しなければならない。
また、通常国会では政府介入が一層強まる「日本学術会議法人化」法案や、軍拡増税のための防衛特別法人税(仮称)新設、たばこ税引き上げを盛り込んだ税制改正法案なども提出される。
せっかく自公政権が少数与党となっても、軍拡や市民を監視する法案が成立しては何も変わらない。社民党は人権や平和を守るために反対運動の先頭に立つ。