特別国会が最終盤を迎える中で、高市政権の悪法攻撃が止まらない。
自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党の4党が日の丸を傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」の創設法案を衆院に提出し、6月24日には内閣委員会で審議入りした。「国旗を損壊・除去・汚損する行為」に「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」を科すというものだ。
刑法は犯罪を防ぎ、個人や社会、国家の利益を守るのが役割である。いま国旗が損壊される事件が相次いでいるわけではなく、「立法事実」(具体的な被害・問題)がない中で、突如として新たな刑罰を創設するのはまったく理解に苦しむ。
外国国章損壊罪と混同した議論も目立つ。外国国章損壊罪は「諸外国との円滑な外交関係の維持」が目的で、「国旗に対する国民の尊厳感情や忠誠心の保護」を目的とする今回の法案とは、保護しようとする利益の性質や次元が根本的に異なるのである。そもそも外国政府の請求がなければ起訴できない親告罪だ。外国国章に損壊罪があるから、日本国旗にも必要との理屈は成り立たない。
1987年には沖縄国体会場に掲揚された日の丸を燃やした男性が器物損壊破罪等に問われた例があるが、日本の侵略戦争や沖縄戦を背景とする主張があった。刑罰で「尊厳感情や忠誠心」を強制できるはずがない。通常の器物損壊罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金で、創設される国旗損壊罪よりも重い。それで十分だろう。
日本に限らず、政府への抗議の意思を示すために国旗を燃やしたり破ったりする行為は、世界中で行なわれている。米国でも84年にレーガン政権の政策に抗議して星条旗を燃やしたことが事件とされたが、米連邦最高裁は「国旗を焼く行為は憲法で保障される表現行為に当たる」として禁止や処罰を違憲と判じ、確定している。今回の法案についても、思想良心の自由を保障する憲法19条、表現の自由を保障する21条、罪刑法定主義を定める31条に違反すると指摘されている。
市民の叫びを押さえ込み、刑罰で国家への尊厳感情と忠誠心を持たせようとする国旗損壊罪は「図に乗った」高市自維政権の地金を体現する悪法だ。日の丸をモチーフにした芸術作品や広告が監視され、要件に当てはまる行為を告発し合う窮屈な社会が待っているように思えてならない。