社会新報

【スパイ防止法反対緊急院内集会】 「治安維持法」の悪夢再来 ~ メディアの権力監視を妨げる危険性

参加者たちは石井暁記者と海渡雄一弁護士が訴えるスパイ防止法の危険性を確認した。

 

「治安維持法の再来」とも言われ、次の国会に提出されることが懸念される「スパイ防止法」に反対する市民らが2日、参院議員会館で集会を開き、80人が参加した。社民党からも福島みずほ党首、ラサール石井副党首が参加し、連帯を呼びかけた。
「スパイ防止法の正体~戦争をさせないために!」と題された集会では、共同通信編集委員の石井暁記者と海渡雄一弁護士が登壇し、同法の危うさについて語った。30年あまり自衛隊や防衛省を取材してきた石井記者は、スパイ防止法について、「日本が台湾有事に参戦できるための切り札になる可能性がある」「ジャーナリズムが権力を監視するのを妨げる危険性が極めて強い」と指摘し、「私の場合、防衛省を取材して同省を監視してきたが、それが非常にやりくくなる」と危惧した。

特定秘密含む記事か

石井記者は自身の経験として、「現在の特定秘密保護法ですら、記者としての仕事を非常にやりにくくしている」と語った。
「私は台湾有事をめぐる自衛隊と米軍の日米共同作戦計画の記事を何本か書いたが、1本目を書いた時はNSC(国家安全保障会議)で問題になって、『この記事には特定秘密が含まれている可能性が強いから調査するようにと指示があった』と関係者から聞いた」
次に記事を書いたときは、防衛省の幹部たちに「この記事を書いた石井という記者を知っているか、知ってるとすれば、会ったことがあるか、会ったとすればどういう話をしたか」という内容の調査表の配布と回収が行なわれたという。3本目の記事を書いたときには、その記事の内容についての情報を知っている幹部たちのパソコン、スマホ(公用のものだけではなく、プライベートの使用のものも)の任意提出が求められた。「つまり、やり取りをしていないか、消したものを復元して調べるためだと思うが、そういうこともやっている。非常に恐ろしい」。

記者の役割果たせぬ

もし、スパイ防止法が成立したら、いよいよ取材は困難になると石井記者は言う。
「スパイ防止法の法案は各党がそれぞれに作っているが、恐らく刑罰は死刑か無期懲役となる。そんな法律が成立してしまったら、情報源に接することができなくなり、市民のための権力監視というジャーナリズムが本来持っている役割が全く果たせなくなってしまう危険性が強い」
続いて海渡弁護士がマイクを握り、各党の動向について解説した。
「参政党の神谷代表は7月22日の記者会見で、秋の臨時国会にスパイ防止法案を議院法制局と相談しながら出すとしている。国民民主党も法案についての会合を開いている。自民党は公約パンプレットには載っていなかったが、政策インデックスにはスパイ防止法が載っていた。これは髙市さんが載せさせたのだと思う」

統一教会関与の歴史

海渡弁護士はさらに、「今も昔も、法律を作らせようとしているのは勝共連合」と指摘する。1984年の中曽根政権時にスパイ防止法が議員提案された際、統一教会が「全国民が国家への忠誠を誓う法律」として強力に推進したのだという。海渡弁護士は、スパイ防止法の本質は、政府にとって好ましくない人々を弾圧することだと批判した。
ラサール副党首も「スパイという言葉とほぼ同義のように使われている言葉が『反日』だ。とにかく、政府に対する批判を言うと、『お前は日本を愛していない』と言われる。参政党は『スパイ防止法に反対する人はスパイ』と無茶苦茶なことを言う」と批判。
福島党首も、「(スパイ防止法が成立したら)監視社会になるし、えん罪が起きるし、表現の自由がなくなる。国会の内外で反対の声を大きくしていきたい」と述べた。
総がかり行動実行委員会の高田健さんは「戦争と一体のスパイ防止法を市民の力を総結集して阻止したい」と訴え、会場の人々に決起を呼びかけた。