
被害者救済のために鋭く追及する追及するラサール石井参院議員。(6月16日、参院財政金融委)

6月16日の参院財政金融委員会。
スルガ銀行の不正融資問題の被害者救済は、一部で民事調停が成立し、解決金の支払い等が行なわれているが、多くの未解決案件が残されたままだ。今国会の参院審議で大きな焦点の一つとなっていた。ラサール石井参院議員が被害者救済のために鋭く追及した質疑内容を振り返る。
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スルガ銀行は、投資用アパートマンションの販売に際して、不動産会社と結託して顧客の預金通帳・契約書類・レントロール等を改ざんし、返済不能な融資を不正に行なったことで、顧客に膨大な負債を生じさせた。不正融資被害者は被害者同盟を結成して民事調停を行ない、3月17日に調停が終了したが、約600物件のうち407物件については解決金支払の対象とならず、被害者が銀行と個別に返済計画の交渉を行なっている。
不正行員リスト開示を
大部分が解決金支払の対象とならなかったのは、融資に際して不正を行なった行員のリストが被害者・弁護団に開示されず、銀行の不正を立証できなかったためである。参院財政金融委員会では、金融庁が銀行に不正行員リストの提出を求めないことについて野党が抗議し、1ヵ月近く委員会が開かれない異常事態となった。
金融庁が被害救済のために積極的な関与をしているとは言えない中、被害者同盟と弁護団は、自ら救済スキームを考案した。それは、銀行が残債をサービサー(債権回収会社)に安価で売却し、それを被害者が買い戻すというものだ。幹事長のラサール石井参院議員は、6月16日の財政金融委員会で、このスキームについての質問を行なった。
救済スキームの概要
スキームの詳細は以下のとおりである。
まず、被害者が物件を売却し、それで得たお金を返済に充当する。その後、残債をテールヘビー(毎月の支払を低額に抑え、元金の大部分を最終返済期日に据え置く方式)に変更する。銀行は債権をサービサーに譲渡し、被害者はそのサービサーから債権を買い取り、巨額の債務から解放される。サービサーは、将来回収できると見込まれる元本や利息の額を基礎として債権額を評価するため、債権評価額は残債総額よりも相当低く抑えることができ、サービサーの利益を上乗せしても、被害者はサービサーから債権を買い戻すことが可能になるというのが被害者らの見立てだ。
このスキームにはいくつかの障壁がある。まず、物件が売却できるかどうかが不透明だ。売値が銀行の望む額にならない場合、銀行が抵当権を解除せず、売却が叶わない可能性があるという。また、物件売却が実現しても、銀行が残債の支払条件を変更しなければ、債権評価額を低く抑えることができない。銀行がサービサーに債権を譲渡した後は、被害者はサービサーに返済義務を負うことになるが、サービサーが銀行以上に苛烈な取り立てを行なっては元も子もない。債権がサービサーに移ると、監督官庁が金融庁から法務省に移るため、監督が不十分になるのではないかとの懸念がある。
債務免除益課税やめて
最も深刻な問題は、このスキームで被害者負担の軽減を行った場合、スルガ銀行から債務免除が行なわれたとされ、債務免除益(一時所得)に対して所得税が課される可能性があることだ。弁護団によれば、物件売却後の平均残債は5000万円にも上るとのことだが、数千万円の債務免除益が課税対象とされると、所得税額は数百万円となる。
国税庁の田原芳幸次長は、6月16日の参院財政金融委員会において、債務免除が債務者の保有する資産に加えられた損害の補てんとしてなされる場合には、その債務免除により受ける経済的利益は非課税となると答弁した。調停で銀行の不法行為責任が認められなかったとはいえ、被害者の生活のために、債務免除益課税は避けねばならない。
救済スキームの予見可能性を高めると同時に、同種の事件の再発を防ぐための法整備も急務だ。被害者からは、金融機関の不正行為を類型化した上で、不正が行なわれたという一定の客観的事実がある場合、審査の適正性や不正に関与していないことを金融機関側に立証させることで被害者の立証負担を是正する「金融商品版PL法」を求める声がある。
また、スルガ銀行は、不正に融資をしたにもかかわらず、債務の回収により大きな利益を上げている。不正融資を元手に利益を上げられる構造がなくならない限り、第2・第3のスルガ銀行が出てきかねない。欧米のように、不適切な営業を行なった金融機関に対し課徴金・制裁金を課す仕組みの導入も急がれる。