社会新報

【主張】旧統一教会の解散命令 ~ 特別抗告は財産隠しの見苦しい抵抗

(社会新報4月24日号より)

 

 被害者救済に向けた第一歩がやっと動き出した。
 3月25日、東京地裁は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に宗教法人としての解散を命じる決定をした。宗教法人に対する解散命令は3例目で、民法の不法行為を根拠とする事例は初である。社民党は、解散命令を高く評価する。
 教団は、遅くとも1980年代より信者をマインドコントロールし、霊感商法などにより本人や近親者の生活を困難にするほどの多額の献金を繰り返させた。全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計によると、1987年から2021年までに、被害件数は3万4537件、被害総額は1237億円を超える。
 地裁は、一連の勧誘行為は宗教法人法が解散の要件とする「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当すると認定した。そして、司法機関が教団に対して勧誘行為が法令上許されないとの判断を繰り返し受けたにもかかわらず、対応が不十分であり、教団に改善を期待することが困難なため、教団の解散はやむを得ないとした。
 解散命令によって教団は宗教法人格を失い、税制上の優遇措置を受けられなくなる。すなわち、献金に対して所得税が課せられるなど、課税と税務署の監視が強化される。
 教団は、解散命令に不服として、4月7日、高裁に特別抗告した。高裁が地裁決定を支持すれば実質的に解散命令が確定し効力が生じる。だが、高裁の審理は半年から1年もかかる。さらに、宗教法人が解散となれば教団が保有する財産を処分する清算手続きが開始されるが、高裁で審理されている間は、清算手続きは行なわれない。教団の特別抗告は財産隠しの時間稼ぎとなり、見苦しい抵抗だ。
 また、仮に教団が法人格を失っても宗教団体として存続できる。オウム真理教の後継団体が今もなお活動できるように、教団も宗教活動や政治家への支援などが続けられる。信教の自由は保障されるべきだが、懸念が尽きない。
 国会は、被害者救済に向けてするべきことが山積みだ。教団の財産の散逸を防ぐための包括的な財産保全や清算人の権限強化など法整備を急がなければならない。何よりも、教団と深く癒着してきた自民党は、猛省し、関係性を説明すべきだ。社民党は、被害者救済の実現と、教団と自民党との癒着関係の全容解明に向けて、全力を尽くす。