【社会新報・特別レポート】
「自民党の裏金事件は終わっていません。東京地検特捜部が動いており、12月24日に国会が閉じた後、第2の裏金事件に発展していくかもしれません。告発しておいてよかったと思います」
自民党東京都連が開いた政治資金パーティー券収入の一部を政治資金収支報告書に記載していなかった問題について、神戸学院大学の上脇博之教授はそう語った。
上脇さんは2024年1月、都議会自民党の政治団体である「都議会自民党」と「自民党東京都支部連合会」の都連関係2団体を、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで東京地検に告発。同年11月には、22年当時の都連会長の萩生田光一衆院議員ら3人を同容疑で告発した。
上脇さんは、自民党の安倍派などの派閥の裏金問題を告発したことで知られる。上脇さんの告発を受け、東京地検特捜部が旧安倍派と旧二階派事務所を家宅捜索したのは23年12月19日。これをきっかけに、自民党派閥の裏金事件は日本を揺るがし、総選挙で自民党は大敗を喫して少数与党に転落した。
「検察の捜査がどう展開するか分かりませんが、1年前に似てきたと思います。私が告発した19年分の収支報告書の虚偽記載は25年の年明けに時効を迎えるので、24年末から年明けにかけて動きがある可能性も考えられます」
新聞・テレビは上脇さんが告発した事実を報道。その後、『週刊新潮』(24年10月17日号)が、「新たに特捜部が追う『自民党東京都連の闇』」という特集記事を報じた。同誌の取材に対し、自民党の元国会議員は、「ノルマを超えて売ったパーティー券の売り上げ分は都連に収めず、秘書給与や後援会活動費などの政治活動に使った」と証言した。
「中抜き」の同じ手口
自民党都連関係者はこう語る。
「上脇さんの告発後、東京地検は自民党東京都連の事務局幹部らを任意で取り調べてきた。派閥の裏金事件では、国会議員がノルマを超えて集めたパーティー券の売上金を派閥からキックバックしてもらったり、派閥に収めず中抜きしたりした。都連のパーティー券についても同じような手口が使われてきた」
12月に入り、マスコミが「パー券購入を一部不記載」などと報じたことを受け、都議会自民党の小松大佑幹事長は「(弁護士などの)専門家の意見を踏まえながら調査を進めている」と釈明。12月12日付で、政治団体・自民党東京都支部連合会の収支報告書でパー券収入の不記載分が訂正された。
「旧安倍派の山田美樹前衆院議員が購入した150万円や旧茂木派の若宮健嗣前衆院議員が代表を務める2団体が購入した200万円分などが不記載だったとして、政治資金収支報告書を訂正した。100万円の販売ノルマを超えた販売額を納入せずに中抜きしていた都議が相当数おり、こちらも訂正。今後の調査で新たに不記載が見つかれば、別途、訂正していくことになる。いずれにしても、パーティー開催時の都連会長だった萩生田光一元政調会長はあらためて責任を問われることになるだろう」(全国紙政治部デスク)
収支報告訂正の真意
一方、別の政治部デスクはこう語る。
「派閥の裏金事件で検察は4000万円以上の裏金政治家を摘発したが、今回は100万、200万円と一けた少ない。だから検察がどこまでやるか不明だ。来年に都議選と参院選を控えているため、都連は早々と収支報告書の訂正をして、検察に恭順の意を示した。もし、この訂正が検察の“指導”によるものだとすると、選挙への影響を勘案し、摘発見送りもあり得るかもしれない」
上脇さんは、東京都以外の他の自民党県連の政治資金収支報告書でも不記載が見つかったとして、石破茂首相、小泉進次郎前選対委員長、森山裕幹事長らが代表を務める県連を告発。また派閥の裏金議員については「今後も告発を続ける」という。
「自民党は派閥だけではなく、全国で裏金作りの手口を共有して実行している可能性があります。河井夫妻選挙違反事件では、裏金で県議や市議らへの大規模な買収行為が行なわれました。検察は厳正な捜査を行なってほしい」(上脇さん)
都連の裏金問題も氷山の一角にすぎない。