声明・談話

【談話】「能動的サイバー防御法案」衆議院本会議通過に抗議する

2025年4月8日

社会民主党

幹事長 服部 良一

 

  1.  本日衆議院本会議にて、「能動的サイバー防御法案」が賛成多数で通過した。本法案は、深刻な人権侵害を生む恐れがあるだけでなく、サイバー空間において自衛隊による敵基地攻撃的なサイバー防御を可能とする法案であり、社民党は断固反対である。衆議員本会議では、立憲民主党など野党の要求を反映した修正案を与党・立憲・維新・国民など6党・会派が賛成し、社民党は立憲会派が賛成のため新垣邦男衆院議員が採決時に退席し反対の意思表示をした。
  2.  本法案の内容は、①民間企業との情報共有など「官民連携」の強化 ②政府による民間事業者の「通信情報の利用」 ③警察・自衛隊に攻撃元のサーバーへの「侵入・無害化」の権限付与である。

     まず、サイバー攻撃を未然に防ぐために国が平時からサイバー空間を監視する。さらに、一定の条件のもと民間の通信情報を国が収集・分析できる。収集できる情報の範囲が限定されておらず、個人間のメールなども収集・分析する恐れがある。これは憲法21条が保障する「通信の秘密」に反するものであり、著しいプライバシー侵害である。政府は、分析する対象はIPアドレスや送受信日時といった情報に限定し、メール本文などは含まないと説明しているが、情報は収集しているため決して分析しない保証はない。

     また、サイバー攻撃の兆候をつかんだら、攻撃元のサーバーを警察と自衛隊が侵入し、無害化する措置を取ることができる。これは、不正アクセス禁止法によって禁じられている行為である。この行為を独立機関の承認を経れば令状無しでも可能とする。サイバー空間における先制攻撃である。しかも、本法案は他国によるサイバー攻撃を前提としており、自衛隊が他国のサーバーへ侵入・無害化する行為が、相手国からすれば主権侵害とみなされる恐れもある。この行為が戦争の引き金となることも否定できない。

  3.  与野党6党・会派の修正案の内容は、通信の秘密などを「不当に制限するようなことがあってはならない」とする条文を追加することと、運用を監視する独立機関が国会に対して報告する事項の具体化である。

     しかしながら、法案の内容そのものが「通信の秘密」などの権利を侵害しているため、修正案での対応では不十分だ。また、独立機関による国会への活動報告の内容にて、自衛隊による相手国サーバーへの「アクセス・無害化」行為は、自衛隊の手の内をさらすことになるため、政府は受け入れなかった。本法案の最大の問題点が報告されないのでは意味がない。

  4.  以上のように、本法案は憲法が保障する「通信の秘密」や令状主義へ違反するものであり、さらには自衛隊・警察による「アクセス・無害化」行為によって、サイバー戦争をまねきかねない悪法である。このような憲法違反の法案を認めるわけにはいかない。社民党は、参議院にて廃案に向けて引き続き尽力していく。