2024年12月24日
社会民主党
幹事長 服部 良一
-
11月28日から27日間にわたる第216回臨時国会が本日閉会した。本国会は、能登半島の復旧・復興や物価高による生活苦から脱却するための経済対策の裏付けとなる補正予算案や、自民党による金権腐敗政治を終わらせるための政治改革法案が争点となった。
また、先の衆院選の結果、自民党と公明党が少数与党となったため、野党側にとっては「チャンスの国会」であった。与党側が強行採決できなくなり、野党側へ歩み寄らざるを得ない国会運営となった。
-
12月17日に成立した補正予算はおよそ14兆円という巨額な規模にもかかわらず、物価高に追い詰められた私たちの悲痛な叫びに寄り添わない予算である。緊要とはいえない基金への積み増しは既得権確保の便乗予算と言ってもいい。緊要な予算である能登半島復興予算は、能登半島復興に本気で取り組む姿勢かどうか疑わしいものであった。
さらには、軍事費を8268億円も盛り込んだ。この予算には、辺野古新基地建設や馬毛島の軍事基地化を強行する建設費や佐賀空港へのオスプレイ配備に向けた整備費などが含まれている。能登半島の復興や私たちの生活困窮を改善するための補正予算に、指定席の如く戦争準備のための軍事費が毎年盛り込まれるのは言語道断である。
一方で、立憲民主党は基金の積み増しをおよそ1兆3600億円削減し、能登半島復興予算をおよそ1000億円増額する修正案を提出した。与党は基金削減には反対したが、復興予算増額は受け入れた。28年ぶりの政府予算案の修正は不十分ながら「熟議の国会」への一歩であった。
-
もう一つの争点である裏金の真相解明についてはまたも進まなかった。政治資金収支報告書に不記載があった計19人が衆参の政治倫理審査会に出席したが新たな証言はなく、裏金づくりを誰がいつ、どういう理由で始め、使途は何かなど肝心なことが明らかにならなかった。政倫審にでれば「みそぎ」が済んだにはならない。加えて都議会でも自民の裏金問題が浮上した。
一方「政治とカネ」をめぐる一連の政治改革については、与党側が一定譲歩せざるを得ない結果となった。「政策活動費」の廃止について、自民党側は一部使途を非公開にできる「公開方法工夫支出」という抜け穴の新設にこだわっていた。しかしながら、野党が一丸となって政策活動費全廃で与党に対して抵抗したため、最終的に政策活動費を例外なく廃止することに自民党も合意し、立憲民主党や社民党ら7党が提出した「政策活動費廃止法」が成立した。
また、「調査研究広報滞在費(旧文通費)」をめぐり、1年ごとの使途公開と残額の国庫返還を義務付ける「改正歳費法」が成立した。なお、返還方法など詳細については施行される来年8月までに結論を出すこととなった。政治資金を監視する第三者機関の設置については独立性の高い「3条委員会」として成立した。
しかしながら、企業団体献金の禁止は自民党は往生際悪く抵抗している。石破首相は12月10日の衆院予算委員会にて「企業団体献金禁止は表現の自由を保障した憲法21条に抵触する」という答弁をし、答弁は後日「違反するかどうか一概に申し上げることはできない」と修正した。多額の献金で政治をゆがめることは個人の参政権の侵害にもなる。社民党を含む野党5党は「企業団体献金禁止法案」を提出して与党側へ迫り、来年3月末までに結論を出すこととなった。
-
国民民主党は与党側に所得税の課税最低額を現行の103万円から178万円へ引き上げるよう迫り、3党幹事長会議で「178万円への引き上げを目指して協議を進めていく」ことを合意した。一方で与党の税制大綱には来年度より所得税の課税最低額を123万円へ引き上げることが明記され、国民民主党は反発し協議を一旦打ち切ったがまた再開するとしている。
所得税の課税最低額は、憲法25条に規定される「生存権」を保障する手段であり、1995年以降一度も引き上げていないことは政治の不作為であり、社民党は引き上げに賛成である。しかしながら、引き上げによる所得税収の減少や、高所得者ほど減税額が大きいという問題もある。特に、地方交付税は所得税収の33.1%が財源となっているため、地方財政にとって大打撃とならない対策が必要になる。財源論についても丁寧な議論が必要だ。
また、税制大綱では特定扶養控除の子(主に学生)の年収要件を150万円へ引き上げるが、学生の本分は学業であり、学費の値上げや奨学金に依存、働かなければ学べない経済状況への支援拡充が先である。
さらには、税制大綱では26年度より軍拡増税を導入することも明記された。来年の通常国会で法改正が審議される。軍拡増税などもっての外である。
- 本国会は「熟議の国会」が少し進展したものの、所詮自民党政権下での補正予算は私たちの暮らしへ寄り添うものではない。また、選択的夫婦別姓制度や同性婚の実現など喫緊の課題も山積している。私たちがするべきことは何よりも自民党政治の終焉に向けて、立憲野党が一丸となって軍拡予算や軍拡増税、原発推進などには毅然とした態度をとり、市民目線の平和で格差のない社会の実現に向けて確実に成果を積み上げ前進していくことだ。
以上