声明・談話

【談話】いわゆる副首都法案の成立を受けて

【談話】いわゆる副首都法案の成立を受けて


2026年7月27日

社会民主党全国連合幹事長 ラサール石井

政策審議会長 西尾けいご

 

7月24日、いわゆる副首都法案(正式名称は、「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律案」)が参議院で強行採決され、成立した。

社民党は、東京一極集中の是正や、災害に強い国づくりについては極めて重要だと考えている。しかしながら、与党の議員立法により提出された副首都法案には、以下のような問題点があり、社民党は反対である。

 


第1 副首都設置の目的が不明確
 

副首都設置の目的が大規模災害への備えか、経済政策なのかが明確でない。大規模災害への備えであれば、副首都指定にあたり、首都直下地震や富士山噴火よりもリスクが大きいと言われる南海トラフ大地震を想定していないことは不合理である。経済政策である場合、この法案の内実は特定地域への利益誘導との批判を免れないばかりか、新たな極を作ることにより、周辺自治体から副首都の中心をなす大都市部への人口・資本の流出が進み、かえって地方経済に悪影響が出るのではないかと危惧される。大阪では、万博跡地の夢洲にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の建設が進められているが、副首都とかこつけ、夢洲開発に国費が投じられることは、ゆめゆめあってはならない。


第2 基本方針・政令への丸投げばかりで法案の中身がない

本法案は、副首都が担うべき機能も含め、詳細を全て政府が後に作成する基本方針に丸投げしており、副首都指定の要件(国の行政機構の立地の状況、人口及び経済の集積の状況、地方行政体制)も全て政令に委任している結果、法案として備えるべき中身がなく、国の在り方の根幹に関わる副首都指定の在り方について立法府が実質的な関与を行えない建付けとなっている。

政令指定都市は「人口50万人以上」(地方自治法第252条の19)、大都市地域における特別区の設置は「人口200万人以上の政令指定都市」等(大都市地域特別区設置法(以下「大都市法」という。)第2条)と、その人口要件は法律で定められている。人口要件すら政令委任することは、副首都指定について、行政に過大な裁量を与えるものと断じざるを得ない。


第3 副首都の指定に際し、行政裁量が大きすぎる

本法案は、議会の議決を経て、副首都になろうとする旨を申し出た道府県のうち、要件を満たすものを内閣総理大臣が指定するという、いわゆる手挙げ方式を採っており、指定に際して国会の承認は要しないこととしている。国会の承認を不要とした理由について、発議者は「内閣総理大臣の判断は、客観的な要件への該当性判断を行うものであって、裁量の余地のないものである」と説明したが、法案に政令委任が多すぎるため、総理の判断が客観的になるかどうかの保証がない。


第4 副首都の数、必要なコストが全く明らかでない

副首都は複数指定することが可能とされているが、いくつ指定される見込みなのか、そのために必要な経費の規模はどれほどか、審議で全く明らかにされなかった。複数指定された場合、それぞれの副首都でどのような役割分担をするのか、首都中枢機能の代替に係る優先順位はどうするかといった問題も、全て基本方針の中で検討されるという。

コストについても、「基本方針がない段階では答えられない」「政府において検討されるもの」との答弁が続いた。だが、ハード面も含め、首都中枢機能を代替するための整備を行おうとすれば、巨額の費用が必要とされることは明らかである。1992年に制定された「国会等の移転に関する法律」に基づき、1997年に国会等移転審議会が行った試算によると、国会等の移転に必要な費用は最大14兆円とされている。立法府以外も含めた首都中枢機能を移転する場合、今般の物価高騰を考えれば、数十兆円に及ぶ費用が必要とされるのではないかと思われる。そもそも、政権与党である自民・維新が提出した法案であるにもかかわらず、コストの試算が全く行われていないことは、与党の怠慢と言わざるを得ない。


第5 基本方針を待たずに副首都指定が可能

 副首都に係る詳細の殆どを基本方針で定めるとしておきながら、発議者は「基本方針を待たずに速やかに指定することが可能である」と答弁した。なぜ基本方針がない段階で指定の是非を判断できるのか、なぜこれほど拙速に副首都を指定しようとするのか、全く明らかでない。政府がどのようなものを副首都に指定する方針なのか明らかでない段階で、果たして道府県の手挙げが可能なのかも大きな疑問である。結局、既に副首都推進局を作り、「副首都ビジョン」を策定している大阪府市が、他地域に先駆けて指定を受けることを狙っているのではないかと疑われる。


第6 副首都指定が道府県単位であるのは筋が通らない

本法案は、「首都中枢機能」を「首都直下地震対策特別措置法に規定する東京圏における国家社会機能のうち中枢的なもの」と定義しているが、東京圏とは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県及び茨城県の一部という、極めて広範な地域を指す。副首都は首都中枢機能の大部分を代替するために設置されるはずだが、首都中枢機能を担う領域と副首都の領域との間に齟齬があることは、本法案の本質的な欠陥である。


第7 大阪都構想のための、都への名称変更の規定が盛り込まれている

法案附則に大都市法の改定に係る規定が盛り込まれ、特別区を持つ道府県で副首都として指定されたものの名称を都に変更することが可能とされた。大都市法第10条は、特別区を包括する道府県は都とみなすと規定しているため、副首都の指定と紐付けて名称変更を行う必然性は全くなく、参議院に参考人として招致された小原隆治・早稲田大学教授は、都区制度と名称とは別問題と明言した。何一つ必要性のない名称変更の規定を、わざわざ附則に盛り込んだのは、大阪都構想にこだわる維新の党利党略に他ならない。「大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票」は過去二回否決されているため、都への名称変更という新しい看板を付けることで、三度目の住民投票を成功させようという維新の魂胆が見え透いている。


第8 住民投票と地方自治体選挙との同時実施が禁止されず

野党が超党派で求めた、大都市法に基づく住民投票と地方自治体選挙との同時実施の禁止規定が、最後まで盛り込まれなかった。制度を選ぶ投票と人を選ぶ選挙という、性質が異なる投票を同時に実施すれば、有権者が混乱し、冷静な判断ができないため、同時実施は絶対に避けるべきである。

運動に対する規制の在り方が全く違う住民投票と地方自治体選挙との期間が重複した場合、公職選挙法によって政治活動が制限されるため、十分な住民運動が行えなくなる。一方、住民投票については頒布物や街頭演説等に制限がない上に、投票日当日の運動も可能であるため、住民投票と公職の選挙とを意図的に混然とすることにより、公職選挙法の規制をすり抜けようとする政治団体・候補者が現れる可能性も十分に考えられる。

一度政令市廃止・特別区設置を決した場合、事後に政令市を復活させる規定がないため、政令市廃止は不可逆である。地方自治の在り方を、将来にわたって根本的に変えるかどうか、極めて重大な選択を問う住民投票について、落ち着いた熟議を行う条件整備を行うことは、都区制度に対する賛否を超えて立法府が負うべき責務である。ほぼ全ての野党が同時実施の禁止を求め、そのための大都市法の改正案を提出したが、維新は最後まで拒否し、「やむを得ず重複する場合」を認めるという答弁に終始した。参議院の特別委員会では、住民投票と地方選の選挙期間が重複しないよう最大限調整するとの附帯決議が行われたが、維新の吉村洋文代表は法案成立後、同日実施を目指すと改めて表明した。来春の統一自治体選挙と大阪都構想の住民投票とを同時に実施したいという思惑で法案を歪める維新の姿勢は、国会への愚弄である。

 

これほどの問題点があり、質疑に全く耐えられない法案であることが明らかになったにもかかわらず、採決を強行した与党に対し、万感の怒りを持って抗議する。参議院本会議での投票結果は、賛成123・反対121とほぼ同数であった。与党が、人々に親しまれる副首都を作ろうと本当に考えているのなら、できるだけコンセンサスを得られるよう努力すべきではなかったか。国のかたちを大きく変える法案について、立法府を真っ二つに割った責任は重大である。

あえて付言すれば、社民党は2012年に大都市法が議員立法で提出された際から、大都市法そのものに反対である。政令市廃止・特別区設置は、既存の政令市の税収や権限を道府県に吸収するものであり、地方分権改革に逆行する。地方交付税の算定にあたっても、都区合算が行われるため、これまで政令市に直接交付されていた地方交付税も道府県に一括交付されてしまう。そもそも1943年の東京市の廃止及び東京府の東京都への名称変更は、戦時統制のため、都に強大な権限を集中させることを主な目的の一つとして行われたものである。地方自治の興隆が求められる現代に、都区制度はなじまない。

社民党は引き続き副首都制度の問題点を追及し続けるとともに、万一三度目の大阪都構想住民投票が行われた場合には、毅然と反対の論陣を張る決意である。