【談話】9月15日閣議決定の税制改正大綱について
【談話】9月15日閣議決定の税制改正大綱について
2026年9月24日
社会民主党幹事長 ラサール石井
9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定された。
この税制改正大綱は、社会保障国民会議の「中間とりまとめ」(7月29日)及び「「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針」(8月5日閣議決定)に基づき、「所得に応じたきめ細かな給付」を行う新たな制度として「就業者負担軽減支援金」を導入すること、同支援金を2029年に本格導入するまでの「つなぎ」として、2年間に限った飲食料品に係る消費税率の1%への引下げ(国0.78%+地方0.22%)と飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲で実施する支援金制度を組み合わせて実施することが軸となっている。
第1 消費減税の問題について
そもそも、飲食料品に係る消費税の時限的な減税に関しては、社会保障国民会議において、①免税事業者であるため仕入れ税額控除が受けられない農業従事者や外食産業に悪影響が生じること、②高所得者ほど減税の恩恵が大きいこと、③減税ほど税込み価格は下がらない可能性があること、④2年後の税率引き上げに係る懸念、⑤事業所の事務負担、⑥地方を含めた財源の確保への懸念、⑦消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムにする必要性があること、といった課題が指摘されていた。
これら数々の課題に対応するため、農林漁業者については資金繰りへの支援を行い、簡易課税事業者・免税事業者である農林漁業者については個別の売上高を踏まえた金額を給付する仕組みを導入すること、食品事業者・外食事業者については資金繰り支援・生産性向上に向けた省力化等の取組の支援等を行うことが盛り込まれた。ただ、こうした支援策は、概算要求段階では事項要求とされているため、具体的にどのような支援が、どれほどの規模で行われるかについては判然としない。
第2 新たな給付制度の問題について
「本丸」である新たな給付制度については、日本の中低所得者の純負担率(税・社会保険料負担から生活保護・児童手当等の給付を控除したものを世帯年収で除した値)が諸外国に比べて高い現状(いわゆる「翁カーブ」の問題)を改善するために導入される。
具体的には、①前年の勤労所得が所得下限額を超え、②前年の合計所得金額が所得上限額以下であり、③純負担額が純負担基準額を超え、かつ④配偶者の前年の合計所得金額が配偶者所得上限額以下である者を対象に、「純負担率の国際比較及び就業の促進等の効果を考慮して、前年の所得の額並びに扶養児童の有無及び数に応じて定める」額を給付するという、社会保障国民会議で出された「台形」のイメージ図とほぼ同じ給付制度を2029年度に本格導入することとしている。ただし、「台形」の具体的な形を決める「所得下限額」「所得上限額」「純負担基準額」「配偶者所得上限額」等について、算出の考え方は示されている一方、具体的な額は明らかにされていない。そのため、給付金の支給に係る費用の規模もわからない。
この制度の最大の問題は、制度の本格導入に伴って飲食料品に係る消費税率が8%に復元されるにもかかわらず、給付の対象が勤労者に限定されるため、年金生活者や病気や障害等何らかの事情で働くことが出来ない人たちは、ただ税率復元による物価高に苦しめられるだけになってしまうことだ。新たな給付制度の対象とされない人について、税制改正大綱は、「既存の社会保障制度との関係を整理しつつ…その実施に要する財源の確保と併せて検討を行い、令和10年度中に結論を得て、必要があると認めるときは、令和11年度以降所要の措置を講ずる」と、何一つ具体性がない。「必要があると認めるとき」という条件が付けられているため、何一つ措置が講じられない可能性もあるのではないかと疑われる。
第3 財源の問題について
消費減税も新たな給付制度も、相応の規模の安定財源が必要であることは論を待たない。しかし、税制改正大綱は、財源について検討事項の一項目で述べるに留まり、その書きぶりも、「市場の信認を得られるよう、 特例公債に頼らず、補助金等及び租税特別措置の適正化その他の歳出及び歳入全般の見直しにより恒久財源を確保することとし、予算編成改革の具体化の状況も踏まえつつ、早期に結論を得る」等と、予算編成プロセスに丸投げするようなものになっている。
ただでさえ、政権が財政健全化の旗を降ろし、概算要求におけるシーリングを撤廃したことで、要求総額は過去最大の143兆円超まで膨らんだ。その上、具体的な金額を示さず、事業の項目名だけを記して予算を要望する「事項要求」が多用されているため、予算案編成の段階でさらに規模が増すのではないかと思われる。特に防衛省の要求額は過去最大の8兆8908億円となり、政府が年内に行う「安保三文書」の改定に係る部分は事項要求とされるため、予算編成時点ではさらに膨れ上がると見られる。
「もはや財政規律などない」と言うべき惨状の中で、財源の目処がない減税や給付金を導入しても、市場の信任を得られるとは考えられない。その結果、円安や長期金利の上昇が起きれば、輸入物価の高騰や住宅ローン・奨学金の返済金利の上昇を通して人々の暮らしを圧迫し、消費減税の効果を打ち消してしまう。
第4 社民党が目指す財政の在り方について
日本の税・社会保障の問題は、決して中低所得者の純負担率の低さだけではない。
所得税制について言えば、様々な所得控除の仕組みによって課税ベースが小さくされるため、高所得者の方が恩恵を受け、再分配機能が低くなっているという問題がある。新たな給付制度は「翁カーブ」の問題解決のために導入されるというが、高所得者の純負担率が諸外国に比べて低い点の是正のための施策は検討されなかった。減税や給付を行うのであれば、所得税・法人税の見直しにより応能負担を徹底し、安定的な財源を確保することで、税による再分配機能の強化と財政規律の回復を図るべきである。
赤字国債の原則禁止や日銀による国債直接引受けの禁止を定め、財政規律を重視する財政法の規定は、軍事国債を乱発したことの反省に基づき作られた。平和憲法を財政面で裏書きする財政法の規定をないがしろにする高市財政に厳しい目を向けねばならない。
10月から始まる臨時国会には、この税制改正大綱を基に作成された法案が提出される予定である。社民党は、法案の中身を詳しく精査しつつ、公平な税制の実現のため、厳しく審議に臨む決意である。