声明・談話

【談話】皇室典範改定に係る政府案要綱の発表について

【談話】皇室典範改定に係る政府案要綱の発表について

2026年6月26日

社会民主党全国連合幹事長 ラサール石井

 

6月25日、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」(以下「全体会議」という。)が開かれ、「全体会議」のとりまとめを受けて政府が作成した「皇室典範等の一部を改正する法律案要綱」(以下「要綱」という。)についての議論が行われた。要綱は、その日のうちに衆参正副議長が立法府の総意に沿うものとして了承し、今後政府による法案作成が行われることとなる。

社民党は、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ、②皇室典範で禁止されている皇族の養子縁組を、旧宮家の男系男子に対象を限って可能にするという2点に絞った全体会議の議論は、女性・女系天皇に関する議論を意図的に排除するものであり、拙速なとりまとめを行うことに反対だとの立場を重ねて表明してきた。そのとりまとめを元にした要綱についても反対であり、法案の作成・審議を急ぐべきではないと考える。

そもそも皇室典範は日本国憲法の下にある法律であり、また憲法第98条第2項により条約は国内法の上位に位置付けられるため、憲法や女性差別撤廃条約の理念を反映せねばならない。憲法第14条第1項が性別による差別を禁止していること、また2024年10月に国連女性差別撤廃委員会が男系男子に皇位継承を限定する皇室典範を改めるよう勧告していることを踏まえた改正こそ、議論されるべきであった。

その上で、今般示された要綱については、以下のような問題点がある。

第一に、極めて抽象的な「とりまとめ」を受けた具体的な制度設計が内閣に委ねられた結果、要綱は「全体会議」で合意された範囲を超えた中身となっている。

女性皇族が婚姻後も皇籍を保持した場合の、その配偶者・子の身分の在り方や、旧宮家の男系男子の養子縁組に係る具体的な手続や要件について、「全体会議」に参加した政党・会派間で共通の見解は作られていなかった。しかしながら、要綱ではそれぞれ、「配偶者・子には皇籍を与えず、女性皇族には(皇統譜に登録されているにもかかわらず)住民基本台帳法を適用する」、「旧11宮家の15歳以上の男系男子であって配偶者・子がいない者に限って養子縁組を可能にし、養子として皇族になった者は本人の意思に基づき皇族の身分を離れることができないものとする」等と規定されている。「全体会議」で結論が得られていない部分の制度化を内閣に丸投げすることは、立法府の総意に基づいて皇室典範を改定するという「全体会議」の存在意義の否定である。

第二に、男系男子による継承に拘泥する結果、極めていびつな制度設計となっている。

婚姻後の女性皇族に住民基本台帳法を適用する理由について、政府は女性皇族が一般国民と結婚し同じ世帯になる場合、円滑な社会環境を送るために配偶者との関係や居住地を証明する必要があることから、特別な制度を作ることにしたと説明した。その結果、皇族の中に住民基本台帳に登録されている者とそうでない者が混在し、まるで性差によって皇族の格に差異を付けようとするかのようである。

そもそも、女性皇族の配偶者・子に皇籍を与えないのは、いわゆる女性宮家の創設、ひいては女系天皇の誕生を阻止するためであると考えられるが、これでは安定的な皇位継承の確保のために女性宮家の創設等について検討を行うこととした、退位特例法の附帯決議と整合性がとれない。男性皇族の配偶者・子が皇族として皇統譜に登録されていることとも平仄が合わない。

第三に、旧11宮家の男系男子の養子縁組については、養子となる者の選定が極めて恣意的になる可能性が大きく、かつて皇族であった者の子孫であるという理由によって一般人に皇籍という特別な身分を与えることは、憲法第14条が禁じる門地による差別に該当すると考えられる。また、6月12日の衆議院内閣委員会において宮内庁の緒方禎己次長が「誕生時に皇族でなかった方が、皇族の養子になって皇族となった事例はない」と答弁した通り、養子縁組に先例はなく、「宗系紊乱の門を塞ぐ」とする現行の皇室典範の趣旨を根底から覆すものである。

第四に、皇族の自己決定権を大きく制約する内容である。

女性皇族については、現在の内親王・女王については、婚姻に伴いその意思に基づいて皇籍を離脱することを可能とする経過措置が設けられる一方、改定後の皇室典範が施行されてから生まれる女性皇族については、皇籍離脱の自由が認められない。また、養子となった旧宮家の男系男子は、仮に養親との関係が良好でなかったとしても、その意思により皇籍を離脱することができない。彼ら・彼女らは、皇族数を確保するためだけに、終生にわたり皇族に縛り付けられることになるが、これは自己決定権の深刻な侵害である。

第五に、改定後の皇室典範の見直しが30年ごとと、著しく長く設定されている。

これは、向こう30年にわたって女性・女系皇族を認めないという政府の意思表示ではないかと疑われるのみならず、制度変更により生じる様々な弊害や懸念についての立法府の機動的な対応を長期間封じるものである。

第六に、立法府の総意のとりまとめから要項の了承に至るまでの過程が、極めて拙速で乱暴である。

25日の全体会議では、これらの具体的な規定について様々な疑問や疑義が呈されたが、森英介衆院議長らは要項を修正させる可能性を全否定した。各政党・会派による意見表明が終わった後、衆参正副議長が短時間協議した後、国会の附帯決議で内容を不足することを前提に原案を丸呑みした。これは、政府案が立法府の総意に基づくものであるか確認するという「全体会議」の責任を放棄するものである。衆参正副議長が附帯決議案を作り、各政党・会派に見せるとのことだが、附帯決議は国会の審議を経て作られるものであり、議長から予め内容を指示・制限されるべきものではない。

自民党は、今国会中の典範改定を主張しているが、旧宮家の男系男子の養子縁組については、参議院野党第一党の立憲民主党も後ろ向きの意思表示をしており、今般の要綱が立法府の総意に合致するものとは到底言えない。仮に改定案が閣議決定され、国会に上程したとしても、どのような委員会で、どのような審議を行うのかも全く不透明である。既存の常任委員会に付託された場合は、その委員会に委員が所属していない政党・会派の意見が法案審議に全く反映されないこととなる。

憲法第1条は、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」と規定している。一方、これまでの全体会議の議論は、女性天皇を許容する日本国民の総意と大きく乖離したものである。一部の政党の意見のみを取り入れた要綱に基づいて法改定が強行されることに、社民党は断固反対である。