「二一世紀の国民医療〜良質な医療と皆保険制度への指針〜」について

一九九七年九月二日

社会民主党政策審議会長

及川一夫

一、本日、与党医療保険制度改革協議会の「二一世紀の国民医療〜良質な医療と皆保険制度への指針〜」が合意された。今回の合意は、九月施行される健康保険法等の改正案が患者負担・保険料負担の増が先行したことの反省から、その実施までに医療制度の抜本改革の姿を国民に示すこと社会民主党が強く求めたことを受けたものである。

一、わが党は、誰もが安心して受けられる医療制度の確立の観点から、薬漬け・検査漬け医療の解消、医療における情報公開、「患者の権利基本法」の制定や、患者の代理人としての保険者機能の強化、低所得者や高齢者、難病患者への公費増大、薬価差益の完全解消等といった問題に正面から取り組み、「別紙」の通りの成果を上げることができた。制度改革は、二〇〇〇年を目途に、可能なものからできる限り速やかに実施されることになっており、二一世紀の国民医療に向けた大きな一歩を示すものである。

一、七月に与党協議会に提示された厚生省案は、財政配慮を優先し、公費を減らし患者の負担増を行うという、旧来の手法を繰り返すものだった。社会民主党は、制度改革による新たな財源の捻出なしに国民に新たな負担を求めることはできないことを断固として主張した。その結果、与党協議会では、新たな患者負担増の問題は取り上げないこととした。

一、抜本制度の方向性は示されたが、国民本位・患者本位の改革の具体化がこれからのわれわれの責務である。改革に全力を挙げ、国民に負担をこれ以上転嫁することのないよう、あらゆる努力を払う所存である。また、制度改革が行われる二〇〇〇年までの間も、新たな患者負担増を生じさせないようにするため、九八、九九年度の予算編成にも体当たりで臨む決意である。


「別紙」

「二一世紀の国民医療」における社会民主党の成果について

一九九七年九月二日

(1)最終局面における社民党の提案と合意社民党は、最終局面において合意を強化・補完するため、以下の三項目について確認を求めた。すなわち、(1)「患者の権利基本法」について、与党協議会で誠意をもって引き続き検討する、(2)抜本改革の実施までの間、新たな患者負担増を生じさせないよう最大限努力する、(3)具体的項目ごとに数値目標を設定するよう努めること、の三点である。これはほぼ党の主張に沿ったものである。特に、患者の権利擁護に関する法律については、医療現場において弱い立場に置かれている患者の立場を大きく前進させるものであり、今後は次期通常国会で提案・成立を図ることに全力を挙げたい。

(2)保険者機能の強化医療提供体制については、わが党が主唱した、患者の代理人としての保険者機能を強化することが盛り込まれ、レセプト審査などの充実や相談窓口の設置等を行うこととなった。また、良質な医療サービスの確保として、医療における情報公開やインフォームド・コンセントの徹底などもわが党の主張によるものである。

(3)無駄や非効率を排した新しい診療報酬体系の構築薬漬け、検査漬けの温床となっている出来高払い中心の診療報酬体系を見直し、慢性期医療は定額払いとする原則が確立された。また、不正・不当請求に対する歯止め策や薬価差益(一兆三〇〇〇億円)を生んでいる薬価基準制度を廃止すること等については、大きな前進を見た。

(4)情報公開や医薬分業を前提とした薬価制度の改革薬価制度については、現行の薬価基準を廃止し、市場の実勢価格を原則とした日本型参照価格制度が導入されることとなった。わが党は、公開競争入札による透明で公正な価格形成を最後まで主張したが、与党間の合意には至らなかった。そのため、薬剤費の価格の透明化と抑制のために、医薬品流通の近代化、取引や価格の情報公開、明細書の発行、医薬分業推進計画の策定などを盛り込み、国際的に見て高すぎる薬剤費の水準について、欧米並みの水準を目指すことも明記した。

(5)高齢者医療保険制度の創設高齢者の医療制度については、独立した保険制度を創設することとした。わが党は国を保険者とすることを主張している。高齢者は若人よりはるかに病気にかかる率が高いため、わが党は公費負担の増を強く求め、四割を目安に高齢者の負担増を回避する条件を確立した。