閣外協力解消にあたって、記者会見での土井党首の演説

「未来を信じて」

 

1998年5月30日

社会民主党党首土井たか子

 

社会民主党は本日、全国代表者会議を開催し、自民党、さきがけとの連立を解消し、今度の参議院選挙には野党の立場で臨むことを決定いたしました。

この結論を出すまで、わが党は文字通り血のにじむような議論を重ねてまいりました。「与党協議で自分たちの主張を展開した方が有権者にアピールできる」とか「連立の中で与党の良心として権力の暴走を防ぐのが、社民党に課せられた使命ではないか」とか「連立を解消すれば、新保守主義的な連立政権がとってかわる危険がある」など連立解消に慎重な意見が根強くあったことも事実です。

 それでも連立解消を決断したのは、とりあえず「強権政治」の嵐が去りこのままでは日本の議会制民主主義、社会民主主義の灯が消える恐れがあると考えたからです。四年前旧社会党が三党連立を決断したとき、わが国では、強権主義、新保守主義の風が吹き荒れていました。言い換えれば、戦後営々と築き上げてきた民主主義の成果が壊される恐れがあったのです。時計の針を元に戻そうという動きに対抗して造られたのが三党連立でした。

 幸い新保守主義を志向した政治勢力は解体され、むしろ野党の非力、国会の空洞化が目立つようになりました。私たちが与党協議で真剣な議論をし、成果を上げれば上げるほど、与野党間の論戦は活力を欠き、国会は形骸化していったのです。

 一方、与党内でも連立を組んだ直後の緊張感が薄れ、特に自民党が衆議院で過半数を占めた昨秋以降、雰囲気が大きく変わったことも事実です。もちろん連立とは、理念も政策も違う政党が協力して政権運営にあたることですから意見の相違は前提です。しかしながら、「政治腐敗防止法」に全力で取り組むという姿勢において、大きな隔たりが生じてきたこと、日本国憲法によって守りぬくべき平和のための原則が次第にないがしろにされてきていることを重ねて指摘してきました。社会民主党はこの間、譲れるものは譲り、最大限の協力をしてきたと自負しています。

 だが、政党には譲れぬことがあるのです。原理原則で対立点が出れば、連立を解消して出直すというのが民主主義の原則でしょう。私たちの選択がいぱらの道に踏み出すことを意味していることはもとより覚悟の上です。第五野党となればマスコミで注目される機会もぐっと少なくなるでしょう。

 しかし、社会的弱者、勤労者、女性のためにがんばる政党がこの国にはどうしても必要です。社会的弱者、勤労者、女性が生き生きと生活できる社会が今、根源からおびやかされているからです。だからこそ今、皆さんと手を取り合って再出発したいのです。

 私たちは小党です。でも、ヨーロッパを見ても社会民主主義は今や時代の潮流です。党員一同、未来を信じて嵐の中に飛び出してゆく覚悟です。多くの皆さんが、未来のために一緒に立ち上がってくれることを心よりお願い申し上げます。