1998年7月2日

金融危機打開への批判と提言

社民党幹事長

伊藤 茂

自民党は本日、橋本総理も出席して公的プリッジバンク制度を軸とする金融破綻対策を決定する。しかし金融への内外の信頼を確立することは極めて困難と言わざるをえない。

ここに社民党としての提案のポイントを提起し、臨時国会で緊急のテーマとして議論する。

1.自民党の重大な欠陥

1.前提としての反省と責任の欠落

 政府及び自民党は、バブルを引き起こした責任から「貸し渋り」の今日までの反省をはじめ、金融危機を深刻化させた政策の失敗と不良債権処理を今日まで先延ばししてきたことを厳しく反省するとともに、その責任の所在を国民の前に明確にすするべきである。

 それは、金融機関としての国民への反省宣言はもちろん、政府の率直な反省と責任が求められており、それなしに内外の信頼は回復できない。

2.金融危機打開の原則の宣言を

 橋本首相が果断な決意を行えないことが協調介入後の円安に示されている。金融危機を打開するためには抽象論ではなく、打開へ向けた基本方向を示し、政策展開の目標と決意を内外に向かって鮮明に宣言しなければならない。

 かつてS&L問題での「アメリカ大統領宣言」などを範とするべきである。このことを前提にして果断な行動を展開することこそが、国民への責任を明確にすることであり、重要な国際的責務でもある。

2.社民党の緊急の提案

1.公的機関の任務内容を鮮明に

 いま求められている対策は、破綻した金融システムを果断に改革、改造することであり、政府・自民党が大蔵省の原案をたたき台にして行っている「受け皿」問題のような機構論ではなく、必要な機能を前提にした任務を明確にするのでなければ内外の信頼は得られない。整理事業の任務は、第1に破綻した金融機関や企業を公的資金で救済することではないこと、第2に果断な対応であり、不良債権を一年で大枠執行し二年以内の期限で買い取り処分を行うことであることを鮮明にすべきである。

 

2.徹底的な情報公開と責任追及

 不良債権の実態公表と発生の責任を内外に鮮明にする姿勢がなければ信頼は得られない。金融機関がこのことを自己責任で明らかにするよう厳しく指導し、金融監督庁がその発足の最初の大仕事として、このことについての鮮明なマニュアルを示して厳しく調査するよう強く求める。そのためには民間専門家の積極的な協力を求めることとする。徹底的な情報公開と発生責任の明確化はまさに緊急の課題であり、政府は問題を先送りにしてきたことを反省し、果断に行動すべきである。経営責任については住専処理と同様の民事刑事責任を問うこととする。

3.公的資金に関する3原則

 徹底した情報公開・徹底した責任の明確化・金融機関の再構築とともに、公的資金投入の目的は、金融機関や企業救済ではなく、預金者保護と健全な借りて保護であることを、政府として宣言することが必要である。「30兆円の用意がある」などと言う政府・自民党の発言は、成立した法律や与党合意を忘れた不用意・無責任なものである。

 

4.財政と金融の分離の明確化

 金融政策について日本のシステムを明確な責任と権威あるものにしなければ内外の信頼は生まれない。社民党は改めて、財政と金融の分離を明確にすることを求める。政府は大蔵省を財政省とすること、早急に金融庁を発足させることを国民に宣言するべきである。