2002年6月11日
防衛庁のリスト作成問題・調査報告書について(談話)
社会民主党全国連合
幹事長 福島瑞穂
- 防衛庁は本日、情報公開請求者の個人情報リストを作成していた問題で調査報告書を発表した。リスト作成は海上幕僚監部にとどまらず、内局、陸・空各幕僚監部、さらには防衛施設庁にまで及び、問題発覚後にLAN(庁内情報通信網)からの一部情報削除という隠ぺい工作が行なわれていたことも周知の事実である。にもかかわらず、報告書は組織ぐるみの疑いには明言を避け、LANからの情報削除については「証拠隠しの意図はなし」などとした。反省の姿勢が見られず、ことの重要性についての自覚すら疑わせる不十分な報告である。事実の究明に向け関係者を国会に招致すると共に、外部機関を設置し、さらに徹底的な調査を行なう必要がある。
- 報告書は、資料請求者の思想・信条という身辺調査を行なった海上幕僚監部と新たに作成が発覚した防衛施設庁など、ごく一部のケースについてのみ違法性に言及したが、請求者の所属団体、会社名などをリスト化し、なおかつLANで閲覧可能とすること自体、重大な人権侵害である。「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」とした情報公開法の趣旨・目的に明確に反するばかりか、行政機関が情報管理の悪用を図った可能性を否定できない。隠ぺいを図った事実と合わせ、人権感覚が著しく欠如した防衛庁の体質的問題であり、中谷元・防衛庁長官の責任は免れない。小泉首相は、直ちに同長官を罷免した上、国民の目に見える形で防衛庁改革に着手すべきである。
- 問題発覚後、与党の自民党議員からは情報収集のためのリスト作成は当たり前とするような発言が漏れ聞こえ、昨日の政府・与党連絡会では「機密へのアクセスが気になるのは当然だ」として、スパイ防止法、国家機密保護法の必要性を提言する発言さえあったとされる。行政による情報管理・統制が問題になっている矢先、反省のカケラもなく問題をすり替えるものであり、本末転倒、看過できない危険な発言と言わざるを得ない。
- 官による個人情報悪用という危険性が明確になった以上、欠陥が指摘される個人情報保護法案、罰則規定がない行政機関個人情報保護法案などは共に撤回し、練り直すべきである。個人情報保護の整備を前提とした住民基本台帳ネットワークの八月稼動凍結も当然の措置であり、基本台帳ネットの管理情報項目を拡大する「オンライン化法案」の今国会提出など言語道断である。また、審議中の有事法制三法案の主要な所管官庁の一つが防衛庁であることを勘案したとき、人権軽視の不祥事を起こした防衛庁に、国民の権利を大きく制限するような法案を委ねることはできない。この観点からも有事法制は廃案にすべきことを強く主張する。