2002年7月31日

第154回通常国会の閉会にあたって(声明)

社会民主党

  1. 本日、延長を含めて192日間にわたった第154回通常国会が閉会した。今国会は、冒頭の2001年度補正予算案の衆院予算委員会・同本会議での与党単独強行採決、会期末直前の参院厚生労働委員会・同本会議での健康保険法改正案の強行採決に象徴されるように、政府・与党の暴挙に始まり、暴挙で幕を閉じた。与野党で徹底的に審議を尽くすという、賛否以前の大前提をかなぐり捨てるような与党の姿勢は、国会を軽視し、議会制民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しく批判されなければならない。

  2. 重要法案において、政府・与党のいい加減さが、これほど際立った国会も過去に例を見ない。国民保護や自治体の責務という法案の根幹を、すっぽりと置き去りにした有事法制。世論の批判を浴びようものなら、審議入り前に首相自らが修正を指示した個人情報保護法案。自民党内部で密室修正を行ない、決着後には野党を無視して即採決に持ち込んだ郵政公社化関連法案。さらに、中央・地方の公聴会を設定せず、負担増の批判を力づくで抑えこんだ健康保険法改正案。国の進路と国民の安全、人権を大きく左右する重要法案を、無責任極まりない態度で取り扱う小泉内閣には、政権を担当する自覚も能力も備わっていないことが、もはや明白のものになった。

  3. 行政の不祥事や閣僚の不穏当発言も後を絶たなかった。小泉首相自らは、昨年、アジア諸国の反発を招いた靖国神社公式参拝を再び繰り返した。加えて、BSE(牛海綿状脳症)をめぐる武部勤農相の幾多の問題発言。政府中枢の内閣官房長官が、国是である非核三原則の見直しを示唆するが如く「わが国は核兵器保有が可能」と言い放つ無神経さ。さらには、外務省を舞台にした不祥事や防衛庁の情報公開請求者リスト作成問題、同報告書の隠ぺい・改ざん疑惑など、本来なら内閣そのものが吹き飛ぶような問題が相次いだ。にもかかわらず、小泉首相は責任の所在を明確にしないばかりか、一貫して他人事を決め込み開き直り続けた。

  4. 今国会では、アフガニスタン復興国際会議でのNGO排除問題に端を発し、鈴木宗男衆院議員をめぐる数々の疑惑が浮上した。疑惑は、外務省への異常な関与にとどまらず、北方四島支援事業やODA事業への介入にまで広がり、秘書や外務省の「腹心」、さらには鈴木議員本人の逮捕に及んだ。同様に公共事業の口利きをめぐり、自民党の加藤紘一・元幹事長、井上裕・前参院議長が議員辞職した。これら一連の問題は、政官業癒着・金権腐敗という体質が自民党に歴然として温存されていることを示すものに他ならない。しかしながら与党は、鈴木議員の議員辞職勧告決議案の本会議上程を二度にまでわたって拒み、疑惑にはフタという姿勢を最後まで貫き通した。

  5. 「聖域なき構造改革」のために「自民党をぶっ壊す」とまで豪語していた小泉首相も、自ら口にした「公共事業受注企業からの献金禁止」という与党への指示を忘れてしまったのか、結局のところ、自民党の派閥政治と政官業癒着、金権腐敗体質を「聖域」として守り続けている。内閣支持率の急激な低下は、「改革断行」を言いながら政治改革には背を向け、国民の不信をいたずらに助長させている小泉首相の姿勢そのものに起因する。

  6. 国会開幕直前、失業率は過去最悪の5.5%を記録した。国民の雇用、生活、将来不安を和らげ、一向に改善の兆しが見えないデフレ経済から脱却するために真剣に議論することが今国会の重要課題のはずであった。これに対して政府は、隠れ借金の手法で「国債発行枠30兆円」という首相の公約維持に固執しただけの2002年度予算、デフレを促進するだけの「デフレ対策」、改正健康保険法に顕著な負担増の強要で応えた。

  7. 株価一万円割れという現実は、政府の「底入れ宣言」とは裏腹に日本経済が米国依存で不安定な状態にあることを示している。国民に「痛み」だけを押し付け、雇用と経済の危機に何ら有効な手立てを講ずることができない小泉政権の経済無策ぶりは、目に余る。社民党は国民の不安解消・生活の安定に力を注ぎ、競争万能、弱いもの切り捨ての姿勢をますます明確にする「小泉構造改革」と厳しく対決していく。

  8. 野党四党は、節目、節目で党首会談を開くなど小泉内閣打倒で結束した結果、政府が言う「重要四法案」のうち、有事法制と個人情報保護法案・人権擁護法案について、今国会での成立を阻止することができた。否決されたとは言え、国民の意思を代弁して内閣不信任決議案の共同提出も行なった。このことは、野党共闘の大きな成果である。社民党は、引き続き野党四党の結束を発展させ、小泉内閣の一日も早い退陣を実現するために全力を挙げる。

  9. 秘書給与問題で、わが党の辻元清美衆院議員が辞職することとなった。党としては、調査委員会を設置して事実の解明に全力を注いだが、今回の問題で国民の信頼を損ね、不信を招いたことについて、改めてお詫び申し上げたい。政治家と秘書の在り方、政治資金の透明性の確保などについて自ら襟を正すと同時に、金権腐敗政治の一掃、政治倫理の確立に向けて、さらに努力する決意である。

  10. わが党が廃案を目指していた有事法制、個人情報保護法案と人権擁護法案は継続審議となった。憲法の平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という原則に真っ向から対立するほか、武力攻撃事態の定義すらままならず、政府答弁も大きく食い違うような有事関連三法案は、修正で片付くものではない。社民党は、あくまで法案の廃案を目指す。個人情報保護法案はメディア規制を排し、自己情報コントロール権の保障、EUやOECDの基準を満たした法制定を目指し、人権擁護法案では人権委員会の独立性が確保できるよう、他の野党と共に全力を傾注していく。