2002年10月17日

北朝鮮・拉致事件について

社会民主党全国連合常任幹事会

さる10月10日、社会民主党常任幹事会は、朝鮮労働党中央委員会に宛てて、拉致事件について、厳重に抗議するものであることを記した書簡を送付した。9月17日の日朝首脳会談の翌日に党は声明を発表しているが、この間の経過と論点を記すことにする。

  1. 日朝首脳会談の席上で金正日総書記が認めた拉致事件が、多くの日本人を力づくで連れ去り、かくも長い時間にわたって行動の自由を奪って今日に至ったことは、許すことのできない犯罪行為であり、厳しく抗議するものである。とりわけ死亡と発表された8人が亡くなった状況についての朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)側の説明は、不十分かつ不審な点も多く、納得できるものではない。よってわが党は、朝鮮労働党に抗議と真相解明を求める書簡を送付したものである。

  2. 党は、北朝鮮による拉致問題の真相解明のために、また真実の追及のために何をしてきたのかとの批判を受けてきた。しかし、1997年以後、社民党が参加した与党三党および全政党の国会議員による訪朝の場で強く質しても、「拉致の事実はない」と北朝鮮側は強く否定してきた。否定されてもなお、党が追及し続けたかという点は、率直に言って十分ではなかった。被害者ならびに被害者家族の皆さんには、たいへん申し訳なく、力不足を心より謝罪する。

  3. 日本社会党(当時)と朝鮮労働党との間の交流は、1963年に始まった。わが党の先達は党間交流を積み重ね、日朝関係の改善と正常化をめざしてきた。そして、日中国交回復に向けた努力とともに、東アジアの平和と安定をつくるために積極的な役割をはたしてきた。
    東西冷戦が終結すると、日朝外交の場は党間交流から、超党派の交流に引き継がれ、日朝国交正常化を念頭にさまざまな努力が続けられてきた。しかし、残念なことに、こうした日朝間の場で「拉致事件」について明らかにされることはなかった。

  4. 拉致事件の徹底解明を強く求めるものである。日朝国交正常化交渉の場で、いまだ不明で不審である点が明らかになるように、日本政府は粘り強く交渉にあたるべきである。拉致事件の加害者である北朝鮮の側から、最大限の誠意ある努力が尽くされるかどうかが、日朝正常化交渉の今後にも大きく関わってくるのは当然のことだ。

  5. わが国は、かつて朝鮮半島を植民地として、1910年より36年間にわたる支配を強要した歴史を持っている。創氏改名をもって朝鮮名を奪い、皇民化教育によって五族協和のかけ声のもとに戦争に協力させていった歴史と、本人の意志に反して正確な統計がないほどに大量の朝鮮人を強制連行・強制労働させてきた傷痕も、いまだ癒えていない。小泉総理が平壌を訪問して、「お詫びと償い」に言及したことは正しかった。
    また、今回の拉致事件の展開とあわせて、在日朝鮮人に対しての差別・迫害が強まっており、心ない嫌がらせ事件が続いている。かつての植民地支配があり、歴史的な経緯をへて日本に定住する在日朝鮮人の基本的人権は、こうした時だからこそ強く守られなければならない。

  6. 社会民主党はこの間、「北東アジア総合安保保障機構の創設」および「北東アジアの非核地帯の設置」の構想(土井ドクトリン)を実現するために、各国首脳と意見交換してきた。土井党首は、金大中大統領(2000年8月)、モンゴルのエンクバヤル首相(2000年9月)、中国の江沢民国家主席(2001年1月)、さらにロシアのイワノフ外相(2002年2月)と会談を続けている。今回の日朝首脳会談で両国首脳により発表された『平壌宣言』の趣旨をふまえて、日朝間の国交正常化はもとより、多国間の対話と協調による平和の枠組み作りが北東アジアの平和と安定をもたらすことをめざして、党としてもたえまない努力を重ねていくことを明らかにする。