2002年11月22日

オンライン化関連法案の参院本会議採決にあたって(談話)

社会民主党全国連合
幹事長 福島瑞穂

  1. 本日の参議院本会議で「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案」など、いわゆるオンライン化関連3法案が野党の反対を押し切って可決された。社民党は、委員会質疑で参考人質疑を要求したが、今後の国と自治体の関係、21世紀の新しい行政のあり方などについて自治体関係者からの意見陳述、ITやセキュリティの専門家からのヒアリングもないまま、わずかな審議時間で採決へと至った。良識の府にふさわしくない審議の在り方は、極めて遺憾と言わざるを得ない。

  2. 国家戦略である「E−japan戦略」に基づく、今回の電子政府・電子自治体構想は、地方自治を考慮することなく電子自治体の到達目標と実現年次を一方的に決定し、国で決めたシステムを自治体抜きで無理矢理強制するものにほかならない。予算・人材の不足等からまだまだ未着手な自治体も多く存在しており、インターネットを利用できない住民や外国籍市民の切り捨ての可能性も強く、国民的議論も十分と言えるものではない。

  3. 電子文書化と総合行政ネットワーク、霞ヶ関WANとの接続は、政府から自治体への電子メールが増え、また自治体からの統計データの調査項目が今以上に細かくなるなど、国による統制・管理が強まるおそれがある。また、電子化によって、標準仕様やシステムが構築されれば、自治体の判断による独自性の発揮ができなくなる可能性もある。職員が住民と直接接触する機会は減少し、職員としての知識や経験が重視されなくなり、行政の標準化・画一化が進む一方、地域の実情の反映や住民による自治の側面が薄れかねない。しかも住民自治の後退を招く「平成の大合併」のテコにもなり、電子政府・電子自治体が事務の標準化による国の統制・管理強化と地方自治の骨抜きにつながる点は看過できない。

  4. また、企業・財界のための電子自治体に重点が置かれている問題がある。IT不況が深刻化している中、電子政府・電子自治体は、中央省庁向けだけで2兆円、自治体向けなども含めるとその3〜4倍の市場規模と見込まれ、また、「商機は自治体IT化」として、新興企業もネット管理・文書デジタル化に照準をあわせるなど不況にあえぐ産業のための利権創出という面は否定できない。事務の標準化も住民のためというより、経団連の「『一つ』の電子政府実現に向けた提言」に沿って企業負担を軽減する要望にかなうものにほかならない。

  5. 多くの自治体が住基ネットの稼働に対し、延期や凍結を求める意見書を採択し、また日本弁護士連合会のアンケートにおいても、慎重論が相次ぐ中、整備法案では、住基台帳法の再改正として、一七一事務を新たに加える内容が含まれている。このような重要課題は、整備法の中で改正するのではなく、本来独立の法案として問うべきであり、中身も、「システム利用の安易な拡大を図らないこと」という住基法改正時の附帯決議に抵触するものとなっている。公的個人認証サービスも、電子申請だけに使われるのではなく、公的な本人確認証明として、商取引でも使われることが期待されており、住基ネットの民間利用への拡大につながることも懸念される。

  6. 自己情報コントロール権に基づく本来の個人情報保護法も成立しておらず、政府提出の法案すら成立していない。しかも住基ネット稼働への批判が高まっている中、わずか3か月で住基ネットのなし崩し的な利用拡大を認めることに対する国会の見識が問われている。今後、審議の舞台は衆議院へ移るが、社民党は個人情報保護法案や住基凍結法案で培った野党共闘を強化し、法案の成立阻止に向けて全力を挙げる決意である。

以上