2003年1月31日

「もんじゅ」高裁判決に対する政府の上告を批判する(談話)

社会民主党全国連合
幹事長 福島瑞穂

  1. 高速増殖炉「もんじゅ」の原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟で、名古屋高裁金沢支部が今月27日に下した判決は、原告である住民側の主張を全面的に認め、原発の設置や運転をめぐって政府の安全審査を初めて違法とした画期的なものであった。判決を受け、社民党は直ちに、福田康夫官房長官、平沼赳夫経済産業相、遠山敦子文部科学相に対し、上告断念を申し入れたところである。しかしながら、政府は本日、判決を不服として最高裁に上告した。大事故に直結しかねない安全審査の違法性を指摘した高裁支部判決を否定することは、政府自らが国民の生命と安全を軽視したことに等しい。社民党は、政府による最高裁上告を厳しく批判する。

  2. 高裁支部判決は、原子炉設置許可処分の無効確認に必要な要件として原発の場合は違法の重大性があればよく、明白性は必要ないとした。上告にあたって平沼経済産業相は、高裁支部判決が「重大性と明白性が必要としたこれまでの最高裁判例に反する」と述べたとされる。この主張は「原子炉の設置許可については重大な違法を犯したかもしれないが、危険性は明らかではないのだから、設置を認めろ」と言うのに等しく、安全性と国民からの信頼を最も必要とする原発の運転に責任を負う立場から大きくかけ離れている。正当な理由を欠いた上告は、原発政策とプルトニウム利用の推進だけを念頭に置いた行政の司法に対する介入と言わなければならない。

  3. 経済産業省の原子力安全・保安院は、昨年12月に許可した「もんじゅ」の原子炉設置変更計画に沿って、詳細な設計の審議を今後も進めていくと表明している。しかし、上告したからといって、これまで政府が取ってきた手続きが有効とされたわけではない。少なくとも、最高裁での判決が下されるまでの間は、設置変更計画の推進や具体的な改造工事に着手することは許されない。社民党は、高裁支部判決にしたがって「もんじゅ」の廃炉か、安全審査の全面的見直しに着手するよう政府に迫り、脱原発によるエネルギー政策の転換に全力を挙げる。

以上