2003.2.24

日銀新総裁の与党内決着についての談話

社会民主党全国連合
幹事長 福島瑞穂

  1. 日本銀行の新総裁として福井俊彦元日銀副総裁の就任が自民党内の調整によって了承された。福井氏の能力・識見等については、社民党が与党時代に仕上げたと自負する日銀法改正の際に、日銀サイドの責任者として辣腕を振るわれたことからも、期待を寄せたいと考える。

  2. 国民生活を脇に置いた“政治的なおもちゃ”の意味しかないインフレ政策を強要する狙いから、日銀総裁人事に露骨に容喙してきた政府・与党の姿勢は看過しえないものだ。改正日銀法の要諦は、「中央銀行の独立性と政策決定責任をより鮮明にする」ことにあった。成就しなかったとはいえ、自らも責任を負うべき改正日銀法の意義を貶める一連の自民党内の策動は、現政権の蔓延する政策的手詰まりを浮き彫りにして余りある。

  3. 「物価の番人」たる日銀には、マイナス成長下の物価低迷は、人間の体になぞらえるならば健康状態に応じた体温のようなものという冷静な態度こそが求められている。健康体を取り戻すこと(経済再生)を優先しないまま、インフレ・ターゲティングのような物価水準の引き上げをことさら重視する姿勢は、木を見て森を見ない選択に等しい。物価だけを上げようとすれば、グローバルな競争のもとで賃金上昇が望めない家計の将来不安を増幅し、かえって個人消費を減退させる。また、金利の上昇が物価上昇より先に起きて、中小企業の打撃となる危険性も高まる。インフレを人為的に起こそうとする政策は、実は、家計や中小企業などの犠牲の下にバブル企業を救済する手法そのものだ。インフレ・ターゲット策は取り得ない選択肢であることを、福井新総裁は政府・与党に毅然と通告(最後通牒)する必要がある。

  4. ただし、忘れてならないのは、金融政策に関して国民の選択と審判を直接仰ぐ立場にない日銀は、政府からの独立性を法的かつ実体的に付与される一方で、インフレなき持続的成長と国民福祉に貢献するマクロ政策に関し、整合性ある政策展開がいっそう求められているということだ。一連の経済政策の不発は、実体経済活性化への道とは対極にある「経済の総縮み」をもたらすだけの小泉流改革が、その責めの多くを負わねばならない。しかし、バブル崩壊後のいわゆるわが国経済の「失われた十年間」に関しては、日銀も責任とは無縁ではない。国民生活の再建と経済再生を同時に追求できる金融政策の明確な提示にこそ、福井新体制の日銀は、その存在価値を問うべきだ。