有事法制成立にあたっての記者会見(6月6日)要旨
有事法制関連三法案が6日、与党3党と民主、自由両党などの賛成で可決、成立したことを受け、社民党は同日、国会内で土井たか子党首、福島瑞穂幹事長、今川正美・党外交防衛部会長(衆院議員)の3者の出席のもと、緊急に記者会見を開きました。
福島幹事長
本日、有事法制関連三法案が残念ながら、参議院本会議で可決し、成立しました。憲法に対する最大の挑戦である有事立法が成立したことにショックを受け、同時に憤りを感じています。本来ならば幹事長定例会見の日ですが、土井党首、今川外交防衛部会長に出席していただき、党として会見させていただくことにいたしました。
土井党首
〈新しい戦前が始まった〉
本日、6月6日の正午過ぎ、参議院本会議で有事法制関連三法案が可決され、成立いたしました。非常に憤りを感じています。戦後の日本で、憲法に明らかにされた戦争放棄の規定、平和国家の中で積み重ねてきたお互いの努力が根底から覆されていくことを、ひしひしと感じます。歴史に禍根を残すことになるだろうと強く思います。少なくとも、戦後の体制がこれで変わります。少なくとも、新しい戦前が始まったと言わなければなりません。
〈最重要法案に対し、「採決ありき」では済まされない〉
党声明でも触れさせていただきましたが、重要法案中の重要法案である有事関連三法案の審議の在り方が問題でした。最近はどの法案についても、数に頼んで数さえあれば何でもあり、という対応を政府・与党は当たり前のように行なっています。これ自身が問題なのですが、同時に、法案の修正案を用意するならば、委員会の場で審議すべきです。しかし、まったくそれがなく、特別委員会の場外で自民党と民主党とが、談合して修正案の中身を合意した。「場外談合修正」と言わなければなりません。(衆議院では)修正案の審議はなく、最終的に修正案に賛成か、反対かだけを問うようなやり方でした。
衆議院では賛成が約9割、「翼賛政治そこのけ」のような状態が、最重要法案の取り扱いとしてあったわけです。私は、記名投票だと思っていました。一人ひとりの議員が、この法に対してどこまで責任を持つのかということが、やがて問いただされることになると思います。少なくとも、法案は欠陥法案であることは明らかだと与党、自民党内の議員でさえ、そう言われています。国の基本に関わる法案に「問題が多い」では済まされません。
衆議院では場外で談合、参議院に行きましても審議はこれから、と思われる矢先に採決のほうが先にある。まず「採決ありき」というやり方です。昨日、私は長野へ参りました際に、締めくくり質疑の模様をラジオで聞いていました。わが党は、田英夫議員が質問しましたが、万感迫るものがあったに違いないと思います。田議員は、その気持ちを切々と訴えましたが、聞いていて胸がいっぱいになりました。戦争が現実の問題になったら、それからでは遅い。いかにして戦争をしないか、ということに全ての力を尽くすべきではないでしょうか。
審議が行なわれている最中、自民党の幹事長は6日に法案が成立したら、そこから先はイラク新法だと、記者会見で述べていることを聞きますと、見識がない、心得がないと言わざるを得ません。そのイラク新法も、おそらくはアメリカとイギリスの軍事占領行政の中に自衛隊を出すことを先決にした中身であることは必定ですから、このやり方自身が、有事法制の先取りのような形で動いていくことにもなりかねません。
〈日米安保による憲法のハイジャックは許されない〉
1997年に日米新ガイドラインが締結されて以降、周辺事態法、そして今回の有事法制という一連の流れの中で、専守防衛をはるかに越えて自衛隊と米軍が運用の上では一体化するというように日米安保体制が変質させられた。実際に武力攻撃事態を判断するのは、アメリカ側になるでしょう。そういうことを考えますと、最高法規で戦争を放棄するという中身が、ないがしろにされて、むしろ日米安保体制にハイジャックされる体制になっていくわけですから、これからを考えたとき、日本国憲法をないがしろにし、形骸化させる中で解釈改憲が進む、やがては条文改憲だということが、実際の予定に入り、動き始めているとも言えます。改憲は絶対に許してはならない、ということをこれからの運動の大黒柱にしていかなければならない。日本国憲法を政治の土台に据える、地域や暮らしに生かしていくことの呼びかけ、運動を今までになく強化したいと思っています。幅広く呼びかけて、多くの人たちと一緒にやっていく運動を展開しなければならないと思います。
有事法制の本質、中身は(政府の当初案と)少しも変わっていません。修正しても変わっていません。そのことを考えると、本気でこれから先のことを心配し、憂慮されている方は大変に多い。会う方に例外なく、「いまが頑張り時だ」と言われます。しっかりしたいと思います。
今川正美・党外交防衛部会長
〈修正のしようがない欠陥法案がなぜ、採決に〉
今回の法案について、衆議院の与党筆頭理事であった自民党の久間議員が、政府原案、修正案ともに「6割程度の出来ばえ」だと言っていました。民主党は昨年まで、政府案は、とても修正の仕様がない欠陥法案だと言っていました。自由党は、民主党よりもさらに厳しく、「破れ傘法案」だと指摘しました。ところが、自由党の場合には民主党との合流問題という別次元の判断が働いたのではないか。民主党内部でも反対しそうな議員がいたと聞いていましたが、そうはならなかった。国の根幹に関わる法案であるにもかかわらず、別次元の政治判断が働き、採決が急がれてしまったのではないのか。
有事法制はいらないという以上、「いざというときに、どうするのか」ということが、社民党にも問われています。これは「21世紀の平和構想」、通称土井ドクトリンですでに明らかにしていますが、戦後58年間、これだけの平和と豊かさを享受できたのは、憲法に基づいた平和外交とアジア諸国に対する様々な経済援助があってのことです。そういう戦後の外交政策の根幹が転換していく。その意味で、審議に関わって印象深いのは、有事法制を推進する側の人は、過去の戦争、過去の歴史を否定したがる、そして憲法を変えたがっている。
〈信頼と協調に基づく対話の機構づくりこそ〉
私たち社民党は、数は少ないが、過去の侵略戦争の歴史に謙虚であり、憲法に忠実な立場です。この勢力同士の争いになっているということだろうと思います。有事法制にととどまらず、机上の議論ではなく、日米がどんどんと一体化していく、日米が共同作戦を行なっていく布石が打たれている。それを後追いする形で周辺事態法、テロ対策特措法、イラク新法、有事法制が積み上げられていると思います。「日本は戦争をしない国」というアジア諸国に対する約束が、必要であればアメリカと一緒に戦争する、そういう形へと根本的に変わっていく瀬戸際にあるのだと思います。
社民党は、アジア地域に総合的な安全保障機構、お互いの信頼と協調に基づく対話の機構づくりをきちんとしていきたい。そこを盤石なものにしていけば、有事法制はまったく必要とされない、そういうことだと思います。韓国の議員の方々と交流すると、朝鮮半島を第2のイラクには絶対にしたくない、という思いです。日韓の議員が連携して、米国にモノを申していくことも必要だと考えています。
福島幹事長
残念ながら、有事法制は成立しましたが、国民保護法制を一年以内につくるということが付帯決議にありますし、関連法案が「さみだれ式」に出されてくると言われています。それらの法制化を許さないために、頑張りたいと考えています。
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