2005年3月25日
国民の保護に関する基本指針の閣議決定について(談話)
社会民主党幹事長
又市 征治
- 本日、政府は国民保護法第32条の規定に基づく「国民の保護に関する基本指針」を閣議決定した。「国民保護」を口実に平時から有事を想定した準備を進め、各省庁、自治体、指定公共機関がとるべき措置を具体的に提示し、戦争協力への動員を定めている「基本指針」は「有事」の概念を災害対策の形式にとけ込ませていくものであり、断じて容認できない。
- 「基本指針」は、あいまいに定義していた武力攻撃事態について、着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃、NBC(核・生物・化学兵器)攻撃など具体的に列挙し、攻撃の類型に応じた住民の避難など留意事項をまことしやかに記述している。しかし、これらは国会においてほとんど議論されてこなかったものであり、一方では国民保護の観点から必要な都市部における通勤・通学者の避難、原発攻撃に対する県外避難などは考えられていない。
- 国の武力攻撃事態等対策本部、都道府県国民保護対策本部、市町村国民保護対策本部は相互に連携を図るとされているが、最終的に総合調整するのは国の対策本部長であり、自治体は住民の「避難・誘導」から「救援」に至るまで大きな責務が課せられながら、国の判断に従属させられることになる。また内閣総理大臣が自ら措置することも可能とされている。対等のはずの国と自治体の関係をトップダウンの構造に置き換えることは、地方自治の理念に反するものと言わざるを得ない。
- 自治体や指定公共機関、指定地方公共機関は、自衛隊との「相互の情報連絡体制の充実」「共同の訓練の実施」など日常的な連携強化が求められており、国民保護計画策定段階から自衛隊が重要な位置を占めることになる。しかしながら、国民保護措置が自衛隊の主任務になるわけではなく、自衛隊は防衛出動や武力攻撃の排除などの軍事行動に支障のない範囲で「国民保護」にあたるに過ぎない。
- 「基本指針」は、平素からの備えとして備蓄と訓練を強調しているが、従来の防災体制を大きく逸脱している。さらに「住民に対して、訓練への参加を要請するなどにより、国民の自発的な協力が得られるようにする」としているが、これは戦争への国民動員を図ることにほかならない。「国民の協力」をつくりだすとして「国民保護措置の重要性について平素から教育や学習の場も含め様々な機会を通じて広く啓発に努める」など、学校教育の利用をも打ち出しているのは大きな問題である。
- 「基本指針」自身が「我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」と指摘しているように、いま必要なことは、極めて可能性の低い「有事」に備えることではなく、憲法や国連憲章に基づく平和政策を推進し、アジア地域の軍事的緊張を緩和するための外交努力を徹底することである。「有事」を理由に国民の基本的人権や私権を制限していくことは時代に逆行する。今後も社民党は「有事体制づくり」を許さない、地域からの取り組みに全力を挙げる。
以上