2005年4月15日

衆議院憲法調査会での最終報告書議決にあたって(談話)

社会民主党
幹事長 又市征治

  1. 本日、衆議院憲法調査会は、5年間にわたる活動を集約した最終報告書について自民、民主、公明の各党の賛成をもって議決し、衆議院議長に提出することとなった。最終報告書は、例えば、平和主義の根幹をなす9条について「自衛権及び自衛隊」について憲法上に何らかの措置を取ることを「否定しない意見が多く述べられた」という表記で改憲の方向性を示した。このことは「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行なう」ことに活動を限定した調査会の設置目的を逸脱するものにほかならず、社民党は強い憤りをもって議決に反対した。

  2. そもそも調査会の設置目的に従えば、憲法の理念が完全に実現されているのかどうかこそ調査の対象とされるべきであり、実現されていないとすれば、その原因と責任、積極的に具体化していくための道筋を客観的に考察することが最大の課題だったはずである。ところが、調査会での議論は改憲を主張する政党の委員の数に応じ、現憲法への批判の上に、どの条項をどのように変えるべきかという意見が主流とされ、改憲の方向性をつくりだしてきた。したがって調査会本来の目的が達成されたなどと断じて認めることはできない。

  3. 調査会の運営についても不適切な点が多々見られた。例えば、調査会では自民、民主、公明3党の改憲に向けた党内の「論点整理」などが報告され、議論されたが、このようなことは調査会の趣旨に照らしてふさわしくないばかりか、3党だけの意見を取り上げることの不公正さも明白である。最終報告書の編集方針についても、調査会を開いて議論すべきだという当然の要求さえ、実現しなかった。さらに参考人や公述人の多くが「憲法を生かす」ことの重要性を訴えていた点が重視されず、特に地方公聴会での意見などをわずか数行に圧縮したことを考えれば、最終報告書が、広範で多様な意見を正確に伝えたとはとても言えない。

  4. また最終報告書の中に「今後の憲法論議等」と称して「憲法問題を取り扱う国会の常設機関」と「憲法改正手続法」に関する意見まで盛り込んだことは、明らかに調査活動の域を超えるものであり、報告書に掲載すべき内容ではない。これは、憲法調査会に議案審議権・議案提案権などを付与し、国民投票法の制定を急ぎ、改憲の動きを促進させようとする意図を露骨に示したものである。

  5. 社民党は、国家が大戦の惨禍を引き起こした反省から生まれた現憲法について、特に前文や9条を変えることには、戦後社会の出発点を根底から覆し、「戦争を否定する国」から「戦争を肯定する国」へと変質させるものとして、断固として反対する。また最終報告書の取りまとめによって5年間の活動に幕を閉じるべき憲法調査会を、存続・衣替えさせ、名実ともに改憲のために機関に変えることにも強く反対するものである。

以上