2005年6月16日

「介護保険法等の一部を改正する法律案」の参議院厚生労働委員会採決にあたって(談話)

社会民主党
幹事長 又市征治

 本日、参議院厚生労働委員会は、「介護保険法等の一部を改正する法律案」を、自民、民主、公明の賛成で可決し、本法案は、近日中に成立の見込みとなった。
 社民党は、以下の意見を述べ、同法案に強く反対した。

一,軽度要介護者160万人のサービスが抑制される
 新予防給付の導入によって、要支援1,2に振り分けられる軽度の要介護者160万人のサービスが抑制される。サービスが予防目的に限定され、利用限度額も低く抑えられば、利用者が在宅の生活を継続することが困難になる。政府は「適切なケアマネジメントに基づいて提供される家事援助は認められる」と答弁をしているが、法案の細部は政省令によって定められるため、利用者の不安は払拭できない。
 また、新たな介護予防メニューの切り札として出された筋力向上トレーニングは、市町村モデル事業中間報告からも、効果の明らかなサービスであるという結果は得られなかった。高価なマシンと専門家を必要とする筋力向上トレーニングの費用対効果が、まったく検証されていないことも非常に問題である。

二,「居住費・食費」の自己負担化は利用者の生活を圧迫する
 介護保険三施設における「居住費・食費」を保険から外して、自己負担化することは利用者の生活を圧迫する。同負担は、在宅の生活を支える要であるショートステイ、ディサービス等にも及び、在宅と施設の不公平感を是正するという改正理由にも矛盾している。
 また、低所得者への配慮も不充分で、年金収入を上回る負担を余儀なくされる利用者が出てくる。17年度税制改正により来年度から住民税課税ラインが変わり、「居住費・食費」の軽減対象からはずれる層が増えることによって、事実上、低所得者は介護保険三施設の利用を制限されることになる。法案は、税、国保・介護保険料等、重複する負担について考慮をしていない。
一方、在宅や他の施設の低所得者について利用料の軽減措置がないなかで、今回、保険外とする「居住費・食費」についてのみ保険料で軽減を行うことは安易である。
 施設と居住の違い、施設が「食事の提供」に責任を持つことの意義、食事のもつ介護予防効果、施設建設における公費補助の大きさ等を考慮し、「居住費・食費」は引き続き保険給付内に留めるべきである。
 また、同負担の施行予定を本年10月としていることについては、あまりに周知期間が短く乱暴である。

三,保険料の使途は厳格に行うべきである
 地域支援事業への介護保険料の投入は保険財政を悪化しかねない。地域支援事業の介護予防対象者は、本来、認定で「自立」とされた非該当者であり給付の対象ではない。また、老人保健事業、介護予防・地域支え合い事業などを地域支援事業に再編することは、公費支出を保険料に肩代わりさせ、国の責任を弱めることにつながる。介護保険制度が、国民の信頼を得ていくためには保険料の使途を厳格にすべきである。

 本法案は、在宅で暮らす重度の高齢者とその家族の困難、地域間格差の是正、そして介護労働者の労働条件等について、何ら改善策を示しておらず、「介護予防」を隠れ蓑に、国庫負担の抑制のみを優先し、利用者・保険料負担者に過重な負担を強いるものにほかならない。

 以上が、社民党の反対理由である。

 法案成立後、次の課題は、政省令、介護報酬改定の検討となる。また、都道府県・市町村は、第三期「介護保険事業(支援)計画」の策定に入ることとなる。

 社民党は、衆参厚労委員会で、政省令等の検討状況を点検するととともに、各自治体議会において、高齢が地域で安心して暮らせるよう、介護保険制度の創設の理念(自立支援、利用者本位、在宅生活の重視、社会連帯)を徹底し、第三期「介護保険事業(支援)計画」の策定に取り組む。

以上