2005年8月12日

2006年度予算概算要求基準について(談話)

社会民主党幹事長
又市 征治

  1. 政府は昨日、2006年度予算の概算要求基準を閣議了解した。各省の政策判断で増減できる裁量的経費の削減幅を昨年の2%から3%に拡大したほか、これまで例外的に3年連続で削減しなかった科学技術振興費も削減対象に加えた。公共投資関係費も昨年度と同様3%削減し、約8兆円になる。これによって政策的経費にあたる一般歳出総額は05年度シーリング48兆2000億円に比べて6570億円減の47兆5430億円とした。特に焦点となっていた医療、年金などの社会保障費の自然増加分約8000億円は、05年度と同様2200億円圧縮し、5800億円の増加にとどめるとしている。財務省は年末の予算編成に向けて毎年の国民医療費の伸びを経済成長などの範囲内に抑え込む手法を導入し、社会保障費をさらに4000億〜5000億円切り込むことを目指している。

  2. 政府は、06年度予算を、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」に基づき、「改革の総仕上げ予算」と位置づけている。しかし、国民を見ず財政再建ありきの徹底した歳出削減路線が、市場原理主義による弱肉強食の格差社会の拡大、サービス切り捨て・負担増による国民生活へのしわ寄せをもたらすことが懸念される。自然増の圧縮も、保険料引き上げ、窓口負担の引き上げ、介護保険のホテルコストの負担増などのように、これまで利用者・国民への一方的なつけ回しによって圧縮内容が賄われてきた経緯がある。求められていることは社会・経済構造の変化に対応した「公共」の再構築であり、ナショナルミニマムとして保障される公共サービスの水準、量、質、供給主体と形態、行政の役割などについての国民的論議と合意形成こそが急がれるべきである。それなくして一方的に歳出削減を図り国民生活と経済成長の基盤である年金、医療、介護など社会保障を歳出削減の手段・財政再建の犠牲とすることは断じて認められない。

  3. 「基本方針2005」に基づき、定員の純減、総人件費の抑制の方向が打ち出されている。しかし行政活動の人的基盤である公務員の定員のあり方について、まず国・地方の行政の役割や、業務のあり方をどのようにしていくのかという議論が行われるべきである。また、当事者の意見を聞くこともなく、一方的に公務員給与のあり方を方向付け、水準を枠付けることは、人事院勧告制度を自ら否定することにもつながる。定員・人件費削減を自己目的化することは許されない。

  4. 在外公館における不適正な出納事務、国土交通省地方整備局などが発注する橋梁工事の入札における談合、警察における捜査費等の不正流用疑惑、ODAにおける不正事案、社会保険庁における不適切な随意契約等、社会保険オンラインシステム、経済産業省の「裏金」、などのように、会計検査院や決算委員会で指摘されている事項やこの間問題となっている項目をもっと予算編成に反映させるべきである。また、純計額でも205兆余円と一般会計を大きく上回っている特別会計の乱脈ぶりが、明らかになっており、国の特別会計の無駄遣いの改革が急務である。各省庁の既得権益にもなっている特別会計の整理合理化にこそ「数値目標」を示すべきだ。

  5. GDPの6割を占める個人消費に届く予算、老後や雇用など「生活の先行きに対する不安」を解消し、暮らしの質的向上に直結する歳出の重点化こそが、最大の課題であり、厳しい財政状況下にあっても、「生活再建重視・安心保障型予算」に向けて政策を総動員すべきである。しかし、小泉改革の延長戦上の概算要求基準では明るい展望は見られない。本格的な予算の枠組み作りは総選挙後、新政権が概算要求を受けて取り組むことになるが、行方を決めるのは総選挙の結果次第である。社民党は、雇用創出・安定策、社会保障の基盤強化策、消費拡大策など、国民生活の安心・安全を第一とした経済・財政運営への転換を目指して全力を挙げたい。