2005年8月15日

2005年人事院勧告について(談話)

社会民主党幹事長
 又市征治

  1. 人事院は、本日、国会と内閣に対し、公務員の給与改定を勧告した。民間賃金との比較により月例給は0.36%の引き下げとなったが、期末・勤勉手当は0.05月の引き上げで年間4.45月となっている。配偶者に係る扶養手当も引き下げられており、月例給マイナスは公務労働者の生活のみならず、中小・地場・未組織の民間労働者や地域経済にも波及が懸念され、賃金のマイナススパイラルをもたらしかねない。そういう点で、民間賃金との比較の結果とはいうものの不満が残るものといえる。

  2. あわせて人事院は、「給与構造の改革」として、全国共通俸給表の水準の4.8%引き下げと都市部を対象に18%を上限とする地域手当の新設、給与カーブのフラット化、査定昇給への転換、一時金の勤務実績による配分の強化、俸給の特別調整額の定額化、専門スタッフ職俸給表の新設、本府省手当の新設などの勧告も行った。これらは勤務条件の重大な変更であり、「50年振りの大きな改革」というのであればなおさら、具体化の作業自体、関係労働組合との十分な交渉・協議を経て、合意を得ていくべきである。人事院が給与構造の見直しを拙速に行おうとしていることは、きわめて遺憾である。

  3. 今次勧告の最大の焦点となった地域給与制度は、「同一労働同一賃金の原則」に疑問を抱かせるものである。ブロック別俸給表の新設という乱暴な手法はとられなかったものの、北海道・東北や中国・四国、九州などでは実質賃下げとなり、当該地域の理解と納得のえられていないままの勧告はきわめて問題である。地域経済は依然低迷し、地域間格差が広がりつつある中で、地域給与制度は、地方公務員への波及もあいまって、公共サービスにかかわる民間労働者の給与や地場の民間労働者への賃下げの悪循環をもたらし、家計の消費を低迷させ、地域経済の停滞と地域間格差の一層の拡大をもたらす。自治体にとっても、国家公務員の原資は変わらないが地方公務員は原資が純減になる、財政悪化で賃金カットを実施しているとしてもその財源を失うなどの問題がある。

  4. また、能力・実績を本格的に処遇に反映させるには、新たな評価制度の整備が必要であるにもかかわらず、実効性ある人事評価制度の論議が先送りされたまま、査定昇給や勤務実績による配分強化が先行することは、本末転倒の感が否めず、当局の裁量で一方的に格差を拡大するものになりかねない。中央省庁に勤務する者に対して新たに支給する「本府省手当」の導入も、地方と大都市での給与格差を一層拡大するおそれがある。

  5. 今回勧告された給与構造の見直しは、本府省手当・一般職員の査定昇給の実施時期の先送り、地域手当の対象地域の暫定的な拡大、いわゆる現給保障の実施などが行われるとはいえ、以上のような看過できない問題を含んでいる。勧告を受けた政府・与党としても、関係労働組合と十分かつ真摯な交渉・協議を行うことを求める。

  6. 政府・与党は、「小さな政府」を目指し、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」などで明らかなように、公共サービスを切り捨て、より一層の総人件費を削減する方針を打ち出している。しかし「自ら身を削る」姿勢を示すことで、消費税率の引き上げなど近い将来の国民負担の増大に向けて理解を得やすくしようとするなど、公務員給与を財政再建のスケープゴートや、「政治の道具」として取り扱おうとすることは、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度自体を否定するものであり、到底許されない。市場原理万能主義に基づく小泉構造改革は、弱肉強食の「競争社会」化を進め、社会の二極分化・格差拡大をもたらしているが、だからこそ社会的公共サービスの必要性はますます高まっている。今必要な改革は、定員削減・給与削減を自己目的化することではなく、社会的公共サービスの維持と、天下りの禁止、公務員の労働基本権確立の原点に立ち返った民主的で透明な公務員制度への改革である。社民党は、小泉構造改革と真っ向から対峙し、公務労働運動及び民間労働者との共闘の一層の強化を図っていく。