2005年10月28日

自民党の新憲法草案について(談話)

社会民主党
党首 福島みずほ

  1. 本日、自民党が新憲法草案を取りまとめた。草案は、戦力の保有を禁じ、交戦権を否認した9条2項を全面的に削除して「自衛軍の保持」を明文化するなど、現憲法の平和主義の理念を根底から覆した。改正どころではなく、現憲法と戦後民主主義への挑戦であり、到底、容認できる内容ではない。

  2. 草案は、「戦争の放棄」という国民の意思を示した第2章の表題を「安全保障」と単純に項目化したほか、自衛軍が「国際社会の平和と安全の確保」の名の下に、海外で武力行使することを可能とし、集団的自衛権の行使を容認する方向に踏み込んだ。他項で軍事裁判所の設置を明記したことも、かつての「軍法会議」同様、自衛軍が戦争を遂行する軍隊であることを証明するものである。戦争を否定した国から「戦争のできる国」へと変質させていくことには、断固として反対する。

  3. 草案の前文でも、戦争による惨禍と多大な犠牲の上に決意した「恒久平和」の意思や「平和的生存権」を削除し、代わりに「帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務」といった文章を盛り込んだ。これは思想・信条の自由を侵し、「愛国心」や「国防の責務」を、国民に一方的に強制するものにほかならない。

  4. 国民の権利および義務について、草案は「公共の福祉」の概念を「公益および公の秩序」に置き換え、自由や権利の行使の上位規定とした。これは権力に厳しい規制を加え、国民の権利を保障した立憲主義の原則を損ね、憲法を権力側からの統治ルールへと変質させることに道を開くものである。草案は、新たに国に環境保全の義務を課し、犯罪被害者の権利を盛り込んだが、すべての権利が「公益」や「公の秩序」で規制されるのであれば、まったくの空文である。

  5. このほか、政教分離の原則に「社会的儀礼又は習俗的行為」をわざわざ例外規定として盛り込んだことは、小泉首相の靖国参拝を合法化しようという意図にほかならず、国会の章に政党規定を新設したことも、結社の自由に反し、逆に政党要件・政党活動の規制を目的にしたものとしか思えない。また、地方自治体を「基礎地方自治体」と「広域地方自治体」に分類し、国との相互協力をことさら強調するに至っては、道州制や市町村合併を憲法の条文上から促し、地方主権に逆行するものである。

  6. 最後に改正手続きとして、草案は衆参各議院の3分の2以上の賛成といった発議要件を各議院の総議員の過半数以上へと変更したことは、国の最高法規である憲法を一般の法律と同等に扱い、ただ憲法改悪の要件を緩和させるために持ち出したものと言わざるを得ない。社民党は、自民党の憲法改正草案に強く反対し、引き続き、憲法を守り、生かし、世界に広げる運動を強化していく。

以上