2005年12月8日

自衛隊のイラク派遣1年延長を弾劾する(談話)

社会民主党幹事長
又市 征治

  1. 本日、政府は臨時閣議を開き、イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊活動を1年間延長することなどを柱とした新たな基本計画を決定した。自衛隊の海外派遣という重要課題が国会の審議もないまま、安易に延長されるのは大きな問題である。社会民主党は、国民の7割近くが延長に「反対」する中での今回の決定に対し強く抗議するとともに、イラク特措法にさえ反する自衛隊のイラクからの即時撤退を改めて求める。

  2. イラクでは4月末に移行政府が発足し、10月には憲法制定の国民投票が行われた。しかしアメリカが主導する民主化のプロセスとは裏腹に、アメリカ占領軍と占領抵抗勢力との戦闘は、激しさを増し、イラクの民間人・米軍の双方に多くの犠牲が生じている。また、これまでもサマワの自衛隊宿営地には、信管つきの砲弾が何度も撃ち込まれいる。特に6月のサマワの自衛隊車列近くでの爆発事件は、政府の説明を根底から覆し、イラク全土がいまだに戦闘状態にあることを示すものである。額賀防衛庁長官のイラク訪問で治安の安定を印象づけようと懸命だが、イラク特措法が自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限定している以上、ただちに自衛隊を撤退させるべきである。

  3. 自衛隊は衝突に巻き込まれることを恐れて宿営地内の塹壕に立て籠もっており、口先の「人道復興支援」すらできない状況にある。すでに給水活動は終了し、公共施設の復旧活動と医療支援活動を細々と続けているにすぎない。自衛隊の活動の現状からは、自衛隊でなければならない理由は見いだせないし、イラクの復興・イラクの人々の生活の安定に寄与しているとは到底言えない。

  4. 地元紙のアンケート調査では、「陸自はサマワの利益になると思わない」が過半数を超えている。12月4日には、「平穏」のはずのサマワ近郊のルメイサで、陸上自衛隊の車列が「日本にノー」「州知事にノー」などと叫ぶデモ隊に囲まれ、投石などで装甲機動車のサイドミラーなどが破損する事件が起きた。自衛隊自体「占領軍」と見なされ、現地住民から歓迎されていない事実を受け止めるべきである。

  5. 武力行使を伴う治安維持活動がテロの根絶やイラクの和平に寄与しているとは言い難い。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の10月の調査では、イラクでの軍事行動を間違いと感じる米国民が過半数の53%に達している。また、中東6か国で行われた、米メリーランド大学と米世論調査会社ゾグビーの共同世論調査がでも、イラク戦争によって中東の平和が「むしろ損なわれた」との回答が81%に達している。アメリカ主導のイラク戦争は、アメリカ国民からも中東の各国民からも支持を得ていない実態が浮き彫りとなっており、日本がアメリカと共同行動する意義は見受けられない。

  6. ピーク時に36か国に上った派遣国は28か国に減り、規模も大幅に縮小している。イラク南部の治安を担当するイギリスやオーストラリア軍も来春にも撤退する意向を表明している現状は、武力行使を伴った米軍主導のイラク復興に対し、国際社会が強い疑問と懸念を抱いていることを示している。派遣延長を強行することは、米国の単独行動主義に追随し、それを補完する以外の何ものでもない。政府は、このまま米国に追随するのではなく、自衛隊をイラクから撤退させ、国連主導で国際社会が一致して協力できるイラク復興支援へ転換させることにこそ、全力をあげるべきである。

以上