2005年12月24日

「行政改革の重要方針」の閣議決定について(談話)

社会民主党
幹事長 又市征治

  1. 政府が本日の閣議で決定した、「行政改革の重要方針」は、「行政改革推進法案」(仮称)の土台となるもので、小泉内閣の進める「小さくて効率的な政府」への道筋を確かにするものとされている。しかし、建築確認業務が民間開放されたもとでの耐震基準審査書類の偽造問題が全国を震撼させている中、「民でできることは民で」という考え方についての反省のかけらも見受けられないものであり、市場原理万能主義に基づく格差拡大と公共サービスの破壊、国民生活の安心・安全の切り捨てをもたらすパッケージにほかならない。

  2. 国家・地方公務員の総人件費改革の実行計画は、日本の公務員数が先進国中最低レベルにあるという実態に目を向けず、コスト削減のみを強調し、「大増税の突破口」とでも位置づけるかのようなものである。定員の削減を自己目的化するのではなく、政府の責任と役割、公共サービスの質と量および提供主体のあり方について十分な議論を行い、国民にとって必要な事務事業は何かを精査した上で、必要な定員は確保すべきである。

  3. 国会、裁判所、会計検査院、人事院にも行政機関に準じた取り組みを求め、自治体にも地方公務員の4・6%以上の純減確保や地方公社等の独法化、公立大学等の民営化を求めている。「要請」とはいえ、内閣による司法、立法への介入であり、三権分立や検査院・人事院の独立性、地方自治の観点から重大な疑義がある。官邸主導の政府資産売却も、国民の財産を民間資本に切り売りするものである。

  4. 能力・実績主義による人事評価制度導入をはじめとする公務員制度改革の検討が盛り込まれたが、まず何よりもILOの国際労働基準に基づく労働基本権を付与し、国民・市民への説明責任を果たす公務労使関係制度確立を含む透明で民主的な公務員制度への改革をこそ進めるべきである。

  5. 規制改革・民間開放の推進では、いわゆる市場化テスト法案を次期通常国会に早期提出することが盛り込まれている。しかし、市場化テストは、サービスの質や水準の担保がなく、事業主体の変更等により重大な雇用問題を引き起こすことは明らかである。そもそも公共サービスを営利追求の対象とすることは許されないし、国民生活や個人情報に深く関わる事業を市場化テストの対象とすることは公共サービスの切り捨て以外の何ものでもない。すでに市場化テストの本家のイギリスでは教育・医療・福祉・交通など基礎的サービスが劣化したことから、「官民強制競争入札制度」は「ベスト・バリュー」というシステムに改革されてきている。特に日本の場合、民間労働者の低賃金が放置されており、実際の「官民比較」は、賃金の切り下げ合戦になり、「公正な競争」自体が虚構である。国民や市民の参画とコントロールが効かない市場化テストの導入・法制化は認められない。

  6. 総選挙後、政府の強権的・一方的姿勢が目立っているが、「重要方針」に基づく「行政改革推進法案」(仮称)は「改革」の実現を錦の御旗に一点突破を図ろうとするものであり、すべての立法権限をナチスに全権委任した授権法に匹敵する悪法である。社会的公共サービスは人権であり、持続可能な経済・社会・くらしの要である。社民党は、格差を拡大し、安心・安全を切り捨て、国民生活に甚大な悪影響をもたらす「重要方針」の決定に反対し、「官か民か」でなく、国民のための良質な社会的公共サービスの確立を目指して、広範な国民・公務労働者との共闘を進めていく決意である。

以上