2005年12月13日

内閣官房長官 安倍晋三殿

社会民主党欠陥住宅問題調査チーム
座  長  渕上 貞雄
事務局長  日森 文尋

耐震構造計算書偽造問題に関する申し入れ

 今回、突然降ってわいたような構造計算偽造問題で、夢を持って生きていくための終の棲家と思って長期ローンを組んで買った善意の住民が地獄に突き落とされ、また近隣の周辺住民もいつ倒壊するかわからないという恐怖と不安にさいなまれるようになりました。地震大国と言われている日本において、震度5強程度の地震はいつ起きても不思議ではなく、当該建物住民のみでなく、その周辺住民の生命をも脅かす極めて悪質な行為が国の監督の下で行われる建物設計・検査の場で起きたことについて、極めて深刻に受け止めなければなりません。

 社民党も党内に「欠陥住宅問題調査チーム」を設置し、全党挙げて取り組みを開始したところです。その後も連日のように新たな欠陥住宅が発見され、当該購入者や近隣周辺住民のみならず、全国の高層マンションに住む人たちにまで不安と不信が広がっています。第一義的には、被害住民を救済するとともに、虚偽の構造計算書の作成に関与した建築士、設計事務所、販売業者、施工業者、同計算書の虚偽性を見逃した民間の指定確認検査機関の責任を追及し、真相を解明することはもちろんです。

 しかしなによりも、単なる個人や個別業者の問題とするのではなく、手抜き工事等の欠陥住宅を生み出す重層的下請構造(ピンハネ構造)や、激しい住宅販売合戦と異常なまでのコスト削減競争をはじめとする建築業界の実態・体質、さらにはこの間進められてきた規制緩和・民間開放の流れといった構造的な問題にもしっかりとメスを入れ、再発防止を期することが必要です。

 社民党は、被害住民を救い、欠陥住宅の再発を許さないという立場から、国民が安心して生活できる住居を確保することができるよう、以下の通り申し入れます。

  1. 虚偽の構造計算書の作成に関与した建築士、設計事務所、販売業者、施工業者、同計算書の虚偽性を見逃した民間の指定確認検査機関など民間主体の責任を徹底追及のうえ、厳正の処分・処罰するとともに、真相を徹底的に解明し、国民の不安を払拭すること。

  2. 国、自治体、指定確認検査機関はもちろん、構造設計の一級建築士を総動員して、瑕疵担保期間内の高層マンションから最低サンプリング調査を行い、国民に安心を与えるとともに、欠陥が発見されれば早急に善後策をとること。

  3. 耐震構造偽装問題による被害を被っている居住者にこれ以上の負担がかからないようにすること。特に被害者の最大の問題は住宅ローン問題である。担保物件たる当該マンションがその売主(施工主)によって当初から毀損されていた事実にかんがみ、ローン購入者に係るローンの返済については、売主対銀行の関係で解決されるよう検討すること。また、地震保険の例外適用(地震発生と見なす、保険会社は売主に請求)を検討すること。住宅再取得時の不動産取得税、登録免許税を減税するとともに、住宅ローン減税期間を繰り延べること。

  4. 今後、売主に重大な過失があるときの債務が住民から売主へ移転されるようにするとともに、審査能力を持つ金融機関も建築物の安全・性能に一定の責任を有するように検討すること。マンションなどに欠陥が見つかった場合、補修費用などを建設業界が負担するよう、住宅保障保険制度の創設を検討すること。財団法人「住宅保証機構」の実効性を向上させること。

  5. 6日に政府がとりまとめた「構造計算書偽造問題への当面の対応」について、関係住民や自治体に十分説明を行うとともに、関係自治体に対する財政上の支援措置を強化すること。国が行った家賃補助、解体費用・建て替え費用等の住民支援策については、関係事業者等の責任分担に応じてその費用を負担させること。

  6. 中間検査を積極的に活用するとともに、検査段階ごとに別主体が検査を実施する制度の導入、建築確認・検査と建物登記制度、住宅資金融資、宅地建物取引業者の行う重要事項説明範囲との連携強化を図ること。

  7. これまでの建築行政について徹底的に検証するとともに、建築確認審査事務のシステムの抜本的な見直しを行うこと。自治体の建築主事の充実強化、適正マンパワーの確保、一級建築士の専門化(意匠、構造、設備)及び地位向上と責任の明確化を図ること。インスペクター(住宅検査官)制度の導入を検討すること。

  8. 日本を代表する大手ゼネコンの鹿島と大林組が施工したビジネスホテル2件でも構造計算書の偽造が見つかったことを真剣に受け止め、すべてのゼネコンに自主的な点検を促すとともに、ゼネコンの施工能力のチェック強化を図ること。

  9. 関係者の良心や倫理を担保する業界環境を醸成するとともに、万が一にも違法行為をした者に厳しい罰を科するようにすること。

  10. マンションなどの建築確認申請書等の書類・図面を保存する期間を5年から10年に引き上げること。

  11. 購入者・発注者である市民の建築技術や法律に関する知識向上・消費者教育の充実に努めること。

  12. 建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正など、住宅を含め耐震基準を満たさない建物について、耐震改修促進のための施策を充実すること。安全な住宅に居住する権利を保障する「住宅基本法」を制定すること。消費者も加わった住宅安全委員会の設置を検討すること。

  13. 被災者生活支援制度の充実を図るとともに、国や自治体が問題業者の代わりに補償を立て替えるような犯罪被害者救済代行制度を検討すること。

以上