2005年5月3日

58回目の憲法記念日にあたって(声明)

社会民主党

  1. 衆参両院の憲法調査会は先月、5年間の活動を取りまとめた最終報告書を自民、民主、公明各党の賛成で議決しましたが、「日本国憲法の広範かつ総合的な調査」という設置目的に反し、両院の報告書共に「多数意見」あるいは「すう勢」などの表記をもって改憲の方向性を示しました。また自民党は年内に新憲法の草案を示す予定であり、民主党も憲法提言を取りまとめるとしています。本日、58回目の憲法記念日を迎えましたが、この長い歴史の中で今、憲法は最大の危機に瀕していると言わなければなりません。

  2. 衆院憲法調査会の報告書が、「自衛権及び自衛隊」について憲法上、何らかの措置を取ることを「否定しない意見が多数」としたように、現在の改憲論の焦点は平和主義の根幹をなす9条の変更にあります。しかし、戦地であるイラクにまで派遣され、多国籍軍に参加するまでに至った自衛隊の現状を追認して、自衛隊を軍隊と位置づけ、海外での武力行使を容認することは、自衛隊がいつでも、どこでも戦争に参加できることを意味します。9条改憲は、国によって引き起こされた戦争による多大な犠牲の上に出発した戦後の歴史と国民の決意を覆し、戦争を否定した日本を「戦争のできる国」へと転換させることにほかならず、断じて容認できません。

  3. また、自民党の新憲法起草委員会による改憲要綱は前文に「国を愛し」という文言を盛り込み、「国防の責務」「社会的費用負担の責務」さらには「親を敬う精神」など「家庭等を保護する責務」を新たに憲法に付加するとしました。立憲主義の原則は、権力に対して厳しい規制や制限を加え、主権者としての国民の権利を保障したことにあります。しかしながら、自民党を筆頭とした今日の改憲論は、「公共の福祉」や「公共の利益」の名の下に、新たに国民に義務を課し、基本的人権を制限する姿勢を色濃く打ち出しています。このことは、権力が国民統治を行なうルールへと憲法の性格を一変させるものにほかなりません。

  4. 5年間の調査活動を終えた憲法調査会を衣替えして議案提案権・議案審議権を付与し、改憲手続きとしての国民投票法を制定させようという動きも顕著になっています。しかし、社民党は、憲法を変えることに腐心するのではなく、憲法の理念を職場、政治そして社会の隅々に生かし、9条に示された平和主義の理念を国際社会の規範として広げることこそ必要だと考えます。憲法を改悪させてはなりません。ともに手を携えて、改憲の流れを押しとどめることを、皆さんに強く呼びかけます。

以上