2006年12月24日
2007年度政府予算案の閣議決定について(談話)
社会民主党幹事長
又市 征治
- 本日、安倍内閣にとって初めての予算である2007年度予算案が閣議決定された。「安倍カラー」で目立つのは、企業減税など大企業優遇とばらまきとその一方での弱者切り捨て、家計への負担転嫁である。企業にやさしく、家計に厳しい今回の予算で、富裕層と低所得者層、中央と地方などの格差がさらに広がることも懸念される。情報大航海プロジェクトや次世代スーパーコンピューターにしても経済界へのバラマキに他ならないし、少子化対策や教育再生も競争力向上が目的となっている。「目玉」の再チャレンジ関連予算も、既存施策を拡充した内容も多く、きわめて小粒の印象は否めず、格差是正策にほど遠い。再チャレンジ支援といいながら、生活保護の母子加算を廃止し、パートなど低賃金・不安定労働に追いやられて働くシングルマザーをさらに苦しめることに憤りを禁じ得ない。
- 今回の予算について、「将来の発展、改革をにらんで必要な予算」(尾身財務相)といえるのか疑問が残る。例えば、原案で認められなかった「海外日本食レストラン認証事業」が、「海外日本食優良店調査・支援事業」として2億7600万円の全額が復活した。しかし、海外メディアからも疑問が投げ掛けられており、事業そのものの必要性も緊急性もないのではないか。児童手当の拡充として、0〜3歳未満の乳幼児に対する児童手当を一律1万円に引き上げることになったが、政策的効果も乏しくバラマキ的な発想から脱却していない。教育予算も競争を強化し、格差をひろげ、特定の者だけに集中的に投資する安倍流「教育改革」にシフトしている。無駄な大規模公共事業もまだまだ多い。「戦後農政の大転換」として07年産から導入される品目横断的経営安定対策によって、多くの中小・家族農家が切り捨てられ、地域農業・集落営農の衰退が危惧される。国内農業の体質強化につながるものではない「攻めの農政の推進」や、農地制度の緩和、農業への株式会社参入促進、遺伝子組換作物の生産に向けた研究費、食品放射等に関する予算も削減するべきである。
- 防衛関係予算の額は微減であっても、その内容は極めて問題が多い。イージス艦の改修費や地対空誘導弾の取得費などミサイル防衛(MD)関連予算は、約3割増の1826億円が計上されている。海上自衛隊が使用する高速・大容量の衛星通信回線の整備費も認められた。陸上自衛隊中央即応集団を新編成するなど、米軍と共に「戦える自衛隊」に向けた組織再編も本格化している。そのほか、治安対策やテロ・ゲリラ対策費も増やされている。また、全体の姿は見えないまま、在日米軍再編関連経費として72.4億円が、SACO関連経費と同様の扱いの別枠扱いで計上されたが、米軍再編は今後3兆円にも及ぶ支出が求められる可能性がある重大な問題である。
- 83兆円弱の一般会計予算の背後で純計175兆円もの巨額の特別会計について、統合に伴う経費節減は計27億円にすぎず、予算上の成果はわずかなものにとどまった。また、外為特会から1兆6000億円、産業投資から794億円、貿易再保険から492億円など計1兆8000億円を一般会計に繰り入れているが、剰余金や各特別会計の積立金・資金について、さらに厳しく精査すべきである。各特会歳出のうち政策的調整の可能な分を目標設定して削減するなど、規模・内容ともに抜本的な見直しを進めるべきである。道路特定財源についても、一般財源化は約1800億円程度にすぎない。07年度に発生することが見込まれていた約5000億円の余剰金に匹敵する自動車重量税分だけでも一般財源化すべきだったのではないか。
- 07年度に実施される減税の98%は減価償却制度見直しなどの企業向けである。一方で07年度中に予定されている家計の負担増は、定率減税の廃止により所得税(国税)と個人住民税(地方税)の負担増や年金保険料の引き上げなど、総額で1兆7000億円超といわれる。企業減税をしても家計には波及する保障はない。この間の社会保障の自然増の圧縮などの歳出削減や行政サービスの給付カット、個人中心の増税や負担増で家計の購買力は疲弊している。経済活性化をめざすなら、GDPの6割を占める個人消費を高めて経済循環を好転させる道をとるべきである。
- 約7兆5900億円の大幅な税収増の陰で、リストラ推進や定率減税の廃止等の負担増に耐えている国民に対し、安心や安定につながる公共サービスを充実することで還元するべきである。社民党は、今回の税制「改正」及び予算の延長線上に、法人税の実効税率の引き下げや消費税率の引き上げがあることに警鐘を鳴らすとともに、企業にやさしく家計に厳しい「アベノミクス」路線の問題点を暴露しつつ、国民生活の安定と社会保障の充実、将来不安の解消の立場から党独自の組み替え要求を取りまとめ、税制及び予算の審議に臨んでいく。
以上