2007年3月3日
2007年度政府予算案の衆議院通過に当たって(談話)
社会民主党幹事長
又市征治
- 本日未明、与党の強引な国会運営によって、異常な状況のもとで、2007年度予算案が衆議院本会議で可決された。柳澤大臣、麻生大臣、久間大臣、伊吹大臣らの問題発言や、事務所費問題をはじめとする政治とカネの問題、裁判員制度広報費問題などの解明に蓋をしたまま審議をうち切って逃げ切ろうとする政府・与党の姿勢は、断じて許されない。また格差是正の具体策が求められていたにもかかわらず、安倍内閣の初めての予算案の中身は、企業減税など大企業優遇とばらまき、その一方での弱者切り捨て、家計への負担転嫁であり、格差をさらに広げるものであり、社民党は反対した。
- 予算案の前提となる税制も、定率減税の全廃、各種控除の廃止、社会保険料の負担増などに苦しむ国民の暮らしを無視したまま、「減価償却制度見直し」などの企業向け減税や、金融所得課税の軽減措置の一年延長など、国民合意のない不公平税制そのものとなっている。
- 「改革の継承、発展」を掲げる安倍政権は、5年間で1兆円を超える社会保障の自然増の圧縮を行った小泉政権の路線をも引き継いでいる。このため、医療制度、介護保険、障害者自立支援法関係は、財政削減を目的とした制度の見直しによって、必要なサービスが受けられない等のさまざまな影響が出ている。「再チャレンジ支援」といいながら、雇用対策費の半減や生活保護の母子加算の廃止など、セーフティネットの削減は断じて容認できない。その一方で、イノベーションを名目に、「情報大航海プロジェクト」や次世代スーパーコンピューター等、経済界へのバラマキについては大盤振る舞いとなっている。
- また、2007年度予算案は、憲法改悪を先取りするかのような軍拡予算となっている。ミサイル防衛の拡充や陸上自衛隊中央即応集団の新編成など、米軍と一体となって「戦える自衛隊」づくりが本格化している。米軍基地再編関連予算が盛り込まれているが、米軍再編は沖縄の基地負担の軽減にはならず、沖縄の米軍基地機能は強化され、日米軍事同盟がますます加速するものである。金額的にも、今後3兆円にも及ぶ支出が求められる可能性がある重大問題である。国への協力度合いに応じて交付金に色をつける出来高払い方式がとられるが、受け入れに反対する自治体や住民の声をカネの力で封じ込めることになりかねない。
- 特別会計の見直しも、統合された特会が「勘定」の形で存続するなど、看板掛け替えに過ぎない。そのほか、無駄な大規模公共事業や、海外日本食優良店調査・支援事業など、必要性も緊急性もないものも盛り込まれている。品目横断的経営安定対策によって、多くの中小・家族農家が切り捨てられる。年金事業等の事務費負担の特例も問題である。
- いざなぎ景気を超える景気回復、空前の企業利益といわれながら、働く者にとって実感が乏しいままである。香西政府税調会長が、「痛みを伴った」「リストラ景気」と命名するように、今回の「景気回復」による税収増は、国民の犠牲によるものである。「痛みに耐えて頑張っている」国民に対してこそ、負担軽減と公共サービスの充実で還元すべきであると考える。企業にやさしく家計に厳しい、いわゆる「上げ潮」路線は、国民にとっては、「上げ底」であって、国民生活の安定と社会保障の充実、将来不安の解消の立場にはほど遠い。参議院段階においても、引き続きこうした安倍内閣の経済・財政・社会政策と厳しく対決していく決意である。
以上